10年前、48歳で亡くなったミュージシャン河島英五さんのCMソング「元気ですか」が東日本大震災の被災地を勇気づけている。24年前、東北電力のイメージソングとして放送が始まった東北地方では、お馴染みの曲。河島さん死去後も流れ続け、震災後は多くの被災者らの心の支えになっているという。「全国の人にこの曲を聞いてほしい」と英五さんの長男、翔馬さん(29)が音源を探し出してCD化し、“幻の名曲”を甦らせた。
微笑みながら食いしばるんだよ 流れに向かう魚のように…。英五さんが力強く歌うこの曲の存在を、翔馬さんら家族が知ったのは震災後だった。
「気分が落ち込んだ時、ビデオで録った東北電力のCMを見て元気をもらっています」。昨年3月下旬、こう書かれた電子メールが翔馬さんの事務所に届いた。送信者は仙台市在住の23歳の男性で、「河島英五 元気ですか」がCD化されていないか問い合わせてきたのだ。
「音源を探したが、家にもレコード会社にも残っていなかった」と翔馬さんは言う。東北電力広報によると、「元気ですか」を使ったCMは昭和63年ごろ放送を開始。本数は減ったものの現在も流れ、東北ではかなり有名な曲だという。
翔馬さんが根気強く音源を探したところ、東北電力で保管していることが分かった。翔馬さんは音源を取り寄せて歌を覚え、昨年4月、宮城県石巻市の避難所などを訪れ、披露したところ、曲に合わせて口ずさむなど、「幼稚園児からお年寄りまで、みんなが手を叩いて喜んでくれました」。
5月には、あみるさん(34)、アナムさん(32)の2人の姉と、父の没後10年の節目にアルバム「旧友再会〜ベスト・オブ・河島英五」を発表、「元気ですか」を急遽収録した。
父の曲が被災者らの励みになっていることに感銘を受けた翔馬さんは全国ツアーを計画。収益金の一部は、津波で漁船を失った漁師らの漁船購入支援のために寄付する予定という。 ■Amazon:旧友再会 〜ベスト・オブ・河島英五〜