K3003は、AKGにとってカナル型イヤフォンの高級モデルだけに、独自の技術や厳選されたマテリアルが使用されているが、最大の特長といえば、やはり“3ウェイ・ハイブリッド・テクノロジー”だろう。こちらは、中域用と高域用にバランスドアーマチュア型ドライバーを1つずつ、低域用にダイナミック型ドライバーを採用、それぞれの良さを生かしてサウンドを作り上げる。
14万円といえば、AKGの高級ヘッドフォン「Q701」が2台買えてしまう価格。カナル型イヤフォンの世界では、カスタムイヤータイプやファイナルオーディオデザインなど、マニアックな製品しか存在しないような、孤高の領域である。このような世界にいきなり新製品を投入した 肝心のサウンドはまるで会場の最前列にいるかのようだ。
価格同様、一聴して驚いた。ストレスなく広がる空間表現。そして、キメが細かく、ニュアンス表現が繊細で、それでいて抑揚感の高い、ダイナミックなサウンド。いい意味でカナル型イヤフォンの常識を覆している、すばらしい音楽表現だ。しかもサウンドの趣向は、まさに同社Kシリーズや、Q701そのもの。これはうれしい。さすがにステージの広がり感は一歩劣るものの、そもそもヘッドフォンとは思えない自然なサウンドフィールドを持つKシリーズと比較することがナンセンスかもしれない。逆に音の密度感に関しては、K3003の方が幾分優位な印象を持った。
ちなみにこのケーブル、細かな部分まで見ていくと、ステレオミニプラグにピンクゴールド(と思われる)メッキが施されていたり、芯線に高純度のOFC素材を採用していたりと、クオリティーにはかなりこだわっている様子。高級モデルとしては当たり前の配慮かもしれないが、なかなかうれしい部分でもある。
なお、K3003にはiPhone用リモコン付きのK3003iと、リモコンなしのK3003の2つがラインアップされている。今回はK3003を試用したが、この価格帯では、音質にとことんこだわる人も多いはず。リモコンの有無が音質を左右することもあるため、リモコンなしが用意されている ハウジングやコネクター類にステンレスをチョイスしたり、ケーブルに布+ラバー皮膜を採用するなど、素材についてはかなりのこだわりが見られる。また3タイプのメカニカルチューニングフィルターを用意、好みによってサウンドバランスを変化できる点なども、高級モデルならではの配慮だろう。