希少金属（レアメタル）の一種「アンチモン」の鉱床を、岡山大や東京大などのグループが鹿児島湾の海底で発見した。９割以上を中国からの輸入に頼っているが、埋蔵量は国内の年間販売量の１８０年分と推定される。ただし、強い毒性によって採掘の際に海洋汚染が生じる恐れがあるため、実際に採掘するには新たな技術の開発が必要という。
アンチモンは、繊維を燃えにくくする難燃剤や半導体などに広く使われ、日本は９５％以上を中国から輸入している。アンチモンにはヒ素と同じ毒性があるため、海砂利と同じような方法で採掘すると海中に拡散する恐れがある。体内に蓄積した魚介類を通し人体にも害を及ぼしかねない。 鉱床が見つかったのは、２００３年に気象庁が「活火山」に指定した若尊（わかみこ）カルデラの一部。桜島の北東約５キロの鹿児島湾内にあり、約２万５千年前に大噴火した姶良（あいら）カルデラの主要火口という。 鉱床は、水深約２００メートルの海底に、厚さ５メートルで直径１．５キロの円状に広がっていた。エックス線の調査で平均約６％含まれていることがわかり、全量は約９０万トンになると推定した。昨年の国内販売量は約５千トンで、１８０年分がまかなえる計算になる。中国では含有量約０．５％の岩石から抽出しているといい、鹿児島湾の鉱床の方が効率よく取り出せるという。 ０７年に約２００度の熱水噴出孔を発見した山中寿朗・岡山大准教授（地球化学）らが、付近の鉱物を調べていた。研究の成果は、２２日から千葉市で開かれる日本地球惑星科学連合大会で発表される。
