『ブラック・スワン』は、ナタリー・ポートマンというリスクを恐れぬ冒険的な主演女優なくしては成立しない企画だった。純真と官能がせめぎ合う衝撃的な映像世界。それは誰も観たことのない「白鳥の湖」と、禁断の変身願望に魅入られたバレリーナの物語。「眠れる森の美女」「くるみ割り人形」とともに、偉大なる作曲家チャイコフスキーの三大バレエのひとつに数えられる「白鳥の湖」。
ご存じの通りこれは、悪魔の呪いによって白鳥に姿を変えられた乙女が、王子の真実の愛に救われるか否かという物語だ。
ミッキー・ロークの復活作としても話題となった『レスラー』に続く鬼才ダーレン・アロノフスキーの待望の最新作は、まさしくこの不朽のバレエ作品「白鳥の湖」をモチーフにしながら、想像を絶する大胆なアイデアとの融合を試み、全く新しい前人未到の領域にまで高めた傑作、それが『ブラック・スワン』である。 映画「ブラック・スワン」あらすじ
念願叶ったニナは過酷なレッスンに没頭するが、純真な白鳥と邪悪な黒鳥をひとり2役で演じねばならないこの難役は、優等生タイプのニナにはあまりにもハードルの高い挑戦だった。究極の役作りを要求する芸術監督ルロイ、過剰なまでの愛を押しつけてくる元ダンサーの母親エリカ、さらに妖艶なライバル・ダンサー、リリー(ミラ・クニス)からのプレッシャーにさらされ、心身共に疲弊しきっていくニナ。 やがて白鳥から黒鳥への完璧な変身を望むあまり、極度の混乱状態に陥ったニナは、現実と悪夢の狭間をさまよい、自らの心の闇に囚われていくのだった……。 アカデミー主演女優賞ナタリー・ポートマン 女優としての限界に挑んだ過酷な役作りで孤独なアーティストの極限心理を体現した