厚生労働相は23日夜の記者会見で、東京都などで水道水の放射性物質検出が乳児の暫定基準値を上回ったことに関連し、「乳児用の使用については、長期にわたって摂取した場合にも健康への影響は生じないようにと設定されたもの」と国の暫定基準値(1キロあたり100ベクレル)について説明した。
東京都は23日、金町浄水場(葛飾区)の水道水から1キロあたり210ベクレルの放射性ヨウ素を検出したと発表した。乳児の飲み水についての国の基準値の2倍を超えるため、同浄水場から給水している東京23区と多摩地域の5市を対象に、乳児に水道水を与えるのを控えるよう呼びかけている。 水道水は乳児向けの厳しい基準 「1年間毎日飲んでもリスク低い」 都内のスーパーなどでペットボトル入りのミネラルウオーターが売り切れ状態になっていることを受け、「大人が飲む指標値は下回っているので問題ない。乳児に優先的にミネラルウオーターが行き渡るようにご協力いただきたい」と買い占めなどをしないよう呼びかけた。 都が乳児のいる家庭に水配布へ 都の対象は23区の全域と武蔵野、三鷹、町田、多摩、稲城の5市で計約489万世帯。都は「基準は長期にわたって飲み続けた場合の健康への影響を考慮して設定されており、代わりの飲み水が確保できない時に一時的に飲むのならば差し支えない」と冷静な対応を求めている。緊急的な対応として、1歳未満の乳児1人につき、水550ミリリットル入りのペットボトルを3本、計24万本配布する。24日にも各区・市役所などで配り始める。 東京23区全域と都内5市に出された「乳児は水道水の飲用を控えるように」との要請。どのようにとらえるべきなのか。 「水道水に含まれた放射性物質の摂取制限は、カドミウムなどの環境汚染物質や食品添加物などと一緒のレベルで考えないほうがいい」と、長崎大大学院医歯薬学総合研究科の山下俊一教授は指摘する。 一定レベル以上を摂取すれば、中毒や障害を起こすカドミウムなどに対し、放射性物質は、安全性のグレーゾーンが非常に大きく、より安全な数値を基準としているからだ。 国立保健医療科学院の欅田(くぬぎた)尚樹生活環境部長は「成人が放射性ヨウ素1キロ当たり100ベクレルの水を1年間毎日1リットル飲んでも、甲状腺がん発症の生涯リスクが高くなる可能性は1万分の2上がるだけ。乳児の場合でも影響は少ない」という。 厚生労働省が示している食品の摂取制限に関する暫定基準値では、放射性ヨウ素は飲料水と牛乳・乳製品1キロ当たり300ベクレル。しかし、1歳未満の乳児については、食品の安全基準などを定める政府間機関「コーデックス委員会」が定めた国際規格に基づき、成人より甲状腺がんなどのリスクが高く影響を受けやすいとして、基準を通常の300ベクレルよりも厳格化し、100ベクレルとしている。