福島第1原発の事故後、政府は福島第1原発から20〜30キロ圏内にいる人たちに「洗濯物は屋内に干してほしい」と呼びかけた。こうした注意喚起を受け、30キロ圏外の人たちの間でも“部屋干し”が広がり始めたが、専門家は「30キロ圏外はまったく問題ない。過剰反応だ」と指摘する。
名古屋大学院量子工学専攻の井口哲夫教授は「事故現場から30キロ圏内だと屋内で干す必要がある。すでに外で干したものは個人の判断で洗濯や廃棄をせず、袋に密封して、国や自治体の指示に従って処理してほしい」という。 しかし、30キロ圏外については「現時点では人体に影響のない放射線量で、外干しで問題ない」。井口教授は「遠方から飛んでくる放射性ヨウ素の半減期(放射線の強度が半分になるまでの時間)は8日程度」とし、「どうしても外干しした衣類に不安が残る場合は袋に詰めてしばらく置き、中性洗剤で水洗いすればいい。捨てる必要はない」とアドバイスする。ヨウ素は水に溶けやすく、「洗濯機内に残ることは考えられない。物干しざおやハンガーも、気になるようなら水洗いすればいい」という。 全国クリーニング生活衛生同業組合連合会は、避難指示が出ている地域のクリーニング店に対し、「被曝が確認された人の衣類は受け付けないこと」とした上で、「それ以外は問題ない」と指示した。 都道府県別の日々の放射線量を調査し、ホームページ上で公表している文部科学省原子力災害対策支援本部も「制限区域外への影響は現時点ではない」としている。