小惑星探査機「はやぶさ」の帰還は、感動のフィナーレを迎えましたが、その7年間、計60億キロに及ぶ前人未到の旅に挑んだ最後の成果は、なんと!人類初。そして人類が月より遠い天体から、地表物質の回収に成功したのは初めてとなる成果を残しました。太陽系の起源解明につながる貴重な試料で、はやぶさ計画は最大の目的を達成した。
人類の宝ともいえる大きな「土産」を持ち帰っていたことが16日明らかになった。 「信じられない気持ちだ」――宇宙航空研究開発機構(JAXA)で「はやぶさ」プロジェクトを率いた川口淳一郎教授は、はやぶさが持ち帰ったカプセルに入っていた微粒子約1500個が、イトカワの物質だと判明したことを受け、会見で感慨を語った。プロジェクトを率いた川口淳一郎・宇宙航空研究開発機構(JAXA)教授は「胸がいっぱい」と声を震わせ、関係者は称賛した。「500点満点」の成果を元に、今後は世界中の科学者が太陽系の誕生の秘密に迫る。 地球外の天体からのサンプルリターンとしては、米航空宇宙局(NASA)の探査機「スターダスト」が、エアロゲルを使ったすい星からのサンプル回収に成功しているが、「小惑星からのサンプルリターンは世界初。エアロゲルなどを使わない、コンタミ(汚染)のない状態の回収もはやぶさが初めて」と川口教授は話す。 はやぶさプロジェクトがスタートしてから15年。「夢のようなゴールを目指してきたが、夢のもう1つ上をいくような、信じられない気持ち」で、「わたしにとってはたいへん、感激的な日だった」という。
はやぶさカプセルの中身を収集・分析する「キュレーションチーム」が、特殊なへらを使ってサンプルキャッチャー(サンプル容器)の側面をこすり取り調査。1500個程度の微粒子を地球外の岩石質と同定し、イトカワ由来と判断した。 今年6月に帰還した小惑星探査機「はやぶさ」が小惑星「イトカワ」から持ち帰ったカプセル内部で確認された微粒子について、イトカワのものかを判断するには当初、大型放射光施設「SPring-8」(兵庫県佐用町)を使った同位体分析など「初期分析」の結果を待つ必要があるとみられていたが、電子顕微鏡による分析の結果からのみから断定。「微粒子が1粒や2粒では結論を出すのが難しかったが、1500もあり、統計的な処理をした結果、イトカワ由来と確信を得た」(JAXAの藤村彰夫教授)という。 地球から約3億キロ離れた小惑星「イトカワ」で地表物質を捕らえたことになり、人類が月より遠い天体から、地表物質の回収に成功したのは初めて。太陽系の起源解明につながる貴重な試料で、はやぶさ計画は最大の目的を達成した。
はやぶさ“不発”原因はプログラムミス 安全装置が誤作動 探査機「はやぶさ」が2005年、小惑星「イトカワ」に着陸した際に岩石採取のための金属球を発射できなかったのは、地上から送ったプログラムにミスがあったのが原因だったことが、29日までの宇宙航空研究開発機構の検証で分かった。 はやぶさは着陸と同時に金属球を発射して、砕いた岩石をカプセルに取り込む計画だった。送信したプログラムには、「着陸のために地表に水平な姿勢を取ったら、金属球の発射を止める安全装置を作動させる」という誤った内容が含まれ、このミスにより安全装置が作動して、球は発射されなかったもようだ。
はやぶさは着陸と同時に金属球を発射して、砕いた岩石をカプセルに取り込む計画だった。送信したプログラムには、「着陸のために地表に水平な姿勢を取ったら、金属球の発射を止める安全装置を作動させる」という誤った内容が含まれ、このミスにより安全装置が作動して、球は発射されなかったもようだ。
微粒子まだあった!はやぶさカプセルたたいたら 小惑星「イトカワ」の微粒子回収に成功した探査機「はやぶさ」のカプセル開封を進めている宇宙航空研究開発機構は29日、回収容器をひっくり返して側面をたたいたら、新たに数百個の微粒子が出てきたと発表した。これまで顕微鏡ごしの細かい作業で苦労が続いていたが、「きわめて原始的」(宇宙機構)なやり方が意外にもうまくいった。会見で、宇宙機構の向井利典技術参与は「最初からやっていれば、すぐにたくさん見つかったかも」と苦笑した。 微粒子の大きさは100分の1〜10分の1ミリ程度で、イトカワから回収したとみられる岩石質のものも含まれている。回収容器に二つある小部屋の片方について作業が終わり、もう一方の小部屋に移ろうと、担当者が最後に念のため容器をひっくり返し、工具でたたいてみた。すると、予想を超える数の微粒子が出てきたという。 開封前にも、開けた直後にこうした「自由落下法」を試す計画を立てていたが、目視では空っぽだったため、やらなかったという。容器内部は複雑な構造をしているため、その後の採取作業は難航。極細の針で微粒子を一粒ずつつまみ出したり、採取専用のヘラを特注したり、骨の折れる作業が続いてきた。
はやぶさカプセル「別室」を開封 微粒子存在に期待 宇宙航空研究開発機構は13日、今年6月に帰還した小惑星探査機「はやぶさ」のカプセル内にある試料保管容器の小部屋のうち、未開封だった「B室」を開けたと発表した。 肉眼では何も確認できなかったが、小惑星「イトカワ」の物質が見つかった「A室」と同様、無数の微粒子が存在する可能性がある。B室は平成17年、1回目のイトカワ着陸で使用した。 宇宙航空研究開発機構は13日、小惑星探査機「はやぶさ」カプセル内の2区画のうちA室から、小惑星「イトカワ」の砂粒の可能性が高い岩石質の微粒子が新たに約10個見つかったと発表した。 A室は、はやぶさが2005年11月26日、イトカワに再着陸した際に舞い上がった砂粒を収納した部分。約10個は、逆さにしてたたいて出てきた数百個の大きめ微粒子(直径数十マイクロメートル)の一部。A室では既に約1500個の微粒子がイトカワの砂粒と確認されている。
サイエンス誌 「はやぶさ」成果特集 隕石の起源、裏付け 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の探査機「はやぶさ」が小惑星「イトカワ」で採取した微粒子の初期分析結果が、26日発行の米科学誌「サイエンス」で特集された。微粒子の組成や立体構造を詳しく分析し、イトカワの形成過程や地球に飛来する隕石(いんせき)との関係を示す6編の論文を発表した。 初期分析の中心となったのは、東北大、北海道大、首都大学東京、大阪大、茨城大、東京大を中心とする研究グループ。化学組成や酸素同位体組成の分析などから、地球に飛来する隕石の中で最も多いタイプはイトカワのような小惑星に由来するという予想が裏づけられた。隕石の起源を直接証拠に基づいて初めて実証できた。 イトカワの形成過程については、直径約20キロの母天体が大規模な衝突現象で粉砕され、そのかけらの一部が集まって現在の落花生のような形状に進化したとするモデルを提唱した。 一方、微粒子に含まれるヘリウム、ネオンなどの希ガスの分析結果からは、小惑星イトカワの表層物質は小隕石の衝突などで100万年に数十センチ以上の割合で宇宙空間に飛散していることが分かった。このため、長いところでも約500メートルの現在のイトカワは、1億年後には完全になくなると、推測されるという。 中村智樹・東北大准教授は「多くの施設が震災で被害を受けたが、国内外の協力で立ち直った。この成果を復興への力にしたい」と話した。
イトカワの形成過程については、直径約20キロの母天体が大規模な衝突現象で粉砕され、そのかけらの一部が集まって現在の落花生のような形状に進化したとするモデルを提唱した。
一方、微粒子に含まれるヘリウム、ネオンなどの希ガスの分析結果からは、小惑星イトカワの表層物質は小隕石の衝突などで100万年に数十センチ以上の割合で宇宙空間に飛散していることが分かった。このため、長いところでも約500メートルの現在のイトカワは、1億年後には完全になくなると、推測されるという。
中村智樹・東北大准教授は「多くの施設が震災で被害を受けたが、国内外の協力で立ち直った。この成果を復興への力にしたい」と話した。