日本の電子書籍は一向に話も行動も見えない闇のなかで話が進んでいる?のでしょう。と考えていましたが、実は何も進んでいなかったのかも。今回、作家の村上龍氏が「変化は外からやってくるものだと思われがちだが、自分たちで作り出せると考えている」と電子書籍制作・販売会社「G2010」を立ち上げた際のコメントが印象的でした。今の電子書籍は、活字出版を発明したグーテンベルク以来の文字文化の革命だと。村上さんの思いが今回の行動につながったのでしょう。
今回の村上氏の会見で、「電子書籍に関する言説は出版業界に限定して話されている」と考えていたようですが、世間でも出版業界がワサワサ騒いでいる割に、何も形になって出てこない現状に、イライラしていたのが正直な気持ちです。その気持を村上氏が代弁したのかもしれません。 「電子書籍に関する言説は出版業界に限定して話されているように感じる。総じてネガティブな話題だが、電子書籍を巡る状況と、さまざまな利害関係者の思惑をポジティブなものに変えたい」――小説「限りなく透明に近いブルー」で群像新人賞・芥川賞を受賞した村上龍さんが電子書籍制作・販売会社を立ち上げることが11月に入って明らかとなり、その設立記者会見が11月4日、都内で開催された。 11月5日付けで設立されるこの会社は、「G2010」。村上氏のメールマガジンを運営・配信しているグリオと村上龍事務所が50%ずつ出資し、グリオの船山浩平氏が代表取締役社長を、村上さんとグリオの中村三郎氏が取締役を務め、今後1年で20作品を刊行し、初年度の売り上げは1億円を目指すという。 現時点でG2010に賛同している作家は村上さんのほか、よしもとばななさんと瀬戸内寂聴さん。村上さんは今後、自らの作品の電子書籍版はすべてG2010から配信する予定。 「歌うクジラ」の電子書籍版は、現在までに1万ダウンロードを超えた 上述の配分に照らして考えると、約600万円が村上さんの取り分だと考えられる。歌うクジラは紙書籍(上下巻で各1680円)としても刊行されており、村上さんによると8万部を超えているという(上下巻それぞれで8万部なのか、両方で8万部なのかは不明)。著者印税は不明だが、仮に1割とすると、「80000*1680*0.1」で約1300万円となる。つまり、電子書籍で著者の取り分が4割となったとしても、部数と価格が足を引っ張り、現状では紙の半分以下しか村上さんに入っていないということになる。 売り上げ配分はG2010が最大3割程度、残りは基本的に著者へ
会見で、村上氏は今回の発表は作家と出版社が利害的に対立した結果のものではないことを強調した。村上さん自身、そうした図式には違和感があるとしながらも、出版社と組まなかった理由について説明した。 G2010の設立と電子書籍化に関する話し合いを、講談社、幻冬舎、小学館、集英社、新潮社などと行ってきたという。いずれの出版社も電子書籍ビジネスに対する意欲は感じたというが、それでも、G2010の設立に当たって、出版社と組まなかった理由について、村上氏は「彼らは紙のプロではあるが、電子書籍のプロではない」点と、「ある出版社と組んでしまうと、他社で刊行した既刊本の扱いが難しくなる」点を理由として挙げた。 今後の電子書籍に取り組む出版業界の方々の考えかたが、今回の村上氏の行動で変化し変わることで、読者がより多くの書籍に親しむ時代に変わることを期待しています。