「僕は元気だ」チリ落盤、妻へ手紙
南米チリ北部コピアポ近郊の鉱山で岩盤が崩れ、坑内に閉じこめられた作業員33人の生存が22日、17日ぶりに確認されたが、無事を知らせた2通のメモのうち1通は、最年長とみられる作業員マリオ・ゴメスさん(63)が妻にあてた手紙だった。
チリ紙「テルセラ」などによると、手紙は「愛するリリアナ。私は元気だ。まもなく外に出られると信じている。忍耐と信念を持って待ってほしい」と、無事であると強調。さらに、「君のことを思わない時はない。娘や孫たちにたくさんのキスを。みんなを愛している。ずっと一緒に幸せに暮らそう」などと、家族への思いを切々とつづっていた。
手紙を読んだリリアナさんは「大変うれしい。戻ってきたら最初に『愛している』と言ってあげたい」と話した。
地元紙によると、落盤事故は今月5日、地下約400メートル付近で発生し、作業員らは地下約700メートルの避難所に退避。救助隊が22日、避難所付近まで掘り下げた掘削ドリルに、作業員らがメモ2通を取り付けたことで生存が判明した。メモのうち1通は「33人全員が元気」と記したもので、もう1通がゴメスさんの手紙だった。
生存が確認された後、遠隔操作の小型カメラが映し出した映像によると、作業員らはやせていたが元気そうで、数人はカメラに向かって手を振った。避難所内は気温や湿度が高いとみられ、上半身が裸の作業員もいたという。
ただ、鉱山の地盤が不安定なため、救出作業は難航する可能性もある。人が通れる太さの穴を避難所まで掘り進むには3〜4か月かかる見通しだ。
専門家は、作業員らの体重がそれぞれ8〜9キロ・グラム減っているはずだと推計している。当面は細いパイプを使って水や食料などを届けるが、長期の地下生活を強いられる作業員らの心身の健康をどう維持するかも課題だ。
「元気だが空腹」…チリ落盤事故、通話に成功
南米チリ北部コピアポ近郊の鉱山の地下約700メートルの避難所に作業員33人が閉じこめられた落盤事故で、チリのゴルボルネ鉱業相は23日、救助隊が作業員らと電話ケーブルを通じて会話に成功したことを明らかにした。
作業員らは「みんな元気で、空腹だ」と話し、食料の供給や換気対策などを求めたという。チリ紙メルクリオなどが伝えた。
通話の際、作業員らはチリ国歌を合唱し、士気が高いことを示した。今月5日の事故発生時に地上に逃れた同僚の安否を尋ね、無事と聞いて喜んだという。ただ、粉じんによる目の痛みや胃痛を訴えた人もおり、救助隊は早急に目薬などを手配する。
ロイター通信などによると、避難所の広さは約50平方メートルで、木のベンチが2台ある。坑内にあるトラックやヘルメットの明かりが使えるという。通気孔があるが換気は不十分で、気温は30度以上とみられる。
救助隊は23日、この避難所に通じる直径約15センチのパイプを使い、水や流動食、薬などを送る作業を始めた。一人一人に健康状態を尋ねる質問票も届けた。作業員らを励ます家族の手紙も近く送る予定だ。
作業員らを救出する直径約60センチの穴を掘る大型掘削機の設置準備も同日始まった。それでも避難所まで掘り進むのに3〜4か月かかる見通しだ。作業員がそれまで持ちこたえられるか憂慮する声は強く、地上には、健康管理のアドバイスをする医師団も駆けつけた。
チリ鉱山事故:掘削1日20m 10センチの穴から食料
チリ北部アタカマ州にあるサンホセ鉱山の落盤事故で約700メートルの地下に閉じ込められた作業員33人は、17日ぶりの無事確認から一夜明けた23日、元気に国歌を歌うなど意気軒高な様子を見せた。ただ、地上から新たに救出用の穴を掘るには約4カ月かかるとみられ、作業員の精神・肉体面の健康を懸念する声も出ている。
33人は今月5日の落盤事故で閉じ込められた。地下の避難所には水と食料が保存されていたが、食料は乏しく、48時間ごとにツナ缶をスプーンに二口と牛乳を一口飲み、そしてビスケットを食べて生き延びてきた。体重はそれぞれ8〜9キロ減ったという。
避難所の広さは約50平方メートルだが、長さ約1.8キロのトンネルに通じており、自由に歩き回ることができる。33人は坑道内のトラックのバッテリーを使ってヘッドライトを充電し、光源にしていた。地下の温度は32〜35度とみられる。
救助隊は地上から避難所につながる直径10センチの穴を食料供給に使用、23日には高栄養剤が届けられた。さらに新しく二つの穴を掘って換気用、通信用として使う予定だ。
33人を救出するため、ダイヤモンドの刃がついた特殊な掘削ドリルで人が通れる大きさの穴を掘る計画だが、1日20メートルしか掘り進めないという。現場は地盤が弱く、2次災害のおそれもある。
一方、作業員の精神的安定を保つための取り組みも。22日に「全員元気だ」との手紙を地上に届けた作業員マリオ・ゴメスさん(63)に対し、妻のリリアナさん(51)は「再会できるまで待ち続けるわ」との手紙を書くという。ロイター通信によると、リリアナさんは「結婚30年にしてラブレターをやりとりするなんて」と話した。
チリ 鉱山落盤事故 政府の要請受けNASAが援助へ
チリ北部アタカマ州のサンホセ鉱山事故で鉱員33人が閉じこめられた問題で、チリ政府は25日、米航空宇宙局(NASA)と結んでビデオ会議を開き、鉱員の健康管理について支援を要請した。マニャリク保健相は33人に救出には数カ月間かかるかもしれないと伝えた。
AFP通信によると、同保健相は実際の救出時期について「クリスマス前までに助け出すことができるよう期待している」との見通しを示した。すぐに救出できないと聞いた33人は、平静だったという。
また、同保健相はNASAへの協力要請について、「(33人の置かれた状況は)宇宙ステーションの中の宇宙飛行士の状況とよく似ている」と述べた。NASAは近く専門家を派遣し、病気や感染症の予防や栄養補給の方法を指導するとみられる。
鉱員の25日のメニューは、チョコレートとラズベリー味の高たんぱく質の濃縮スープ。1人1袋配布されたが、長期間十分な食事をしていなかった胃を慣らすため、33人には「6時間ごとにスプーン4杯、飲むよう」と指示があった。
同日、地上からは新しい服とミネラルウオーターが届けられた。また近く、体温計と血圧計、体内時計を調整するための昼用の強い電灯と夜用の暗い赤電灯なども届く予定だ。33人のうち2人が救急救命士の資格を持っている。
救出用に掘削する穴は直径約66センチしかなく、ウエスト回り約90センチ以下の体と筋力を保つため、毎日の運動は欠かせない。
現地にはダイヤモンドの刃がついた掘削機が到着したが、組み立て作業に数日必要で、掘削開始は週末になる。
今後は精神的に落ち込むことも予想されるため、政府は抗うつ剤の配布を決めた。
地上には心理学者も待機。33人が退屈しないよう、トランプ遊び、地上の家族に送るビデオ作りなど、今後さまざまな作業プログラムを作成する。
チリ落盤、パイプでジェル状流動食届ける
南米チリ北部コピアポ近郊の鉱山の地下避難所に作業員33人が閉じこめられた落盤事故では、電話ケーブルを通して外部から作業員と会話できるようになり、避難所の厳しい生活が浮かび上がってきた。
避難所に残された備蓄食料は乏しく、救助隊の医師がAP通信に語ったところによると、作業員らは48時間ごとに「スプーン2杯分のツナ、ミルク1口、ビスケット1枚」をとって飢えをしのいでいた。水も足りず、ショベルカーで地面を掘り、地下水をくみ出して飲んでいたという。
避難所には23日、ジェル状の流動食がパイプを通して届けられた。作業員の胃が衰弱しているとみられることから、政府は今後、薬も届ける方針。作業員のうち1人は胃痛を訴えているが、全員、大きな健康問題はないという。
一方、チリ紙メルクリオによると、保健省は米航空宇宙局(NASA)に対する協力要請の検討に入った。作業員らの状況は「長期間を宇宙ステーションで過ごす宇宙飛行士に似ている」(同省担当者)ため、体調管理や心理面のサポートについて専門家の助言を受けたいとしている。精神科医によるカウンセリングも行う予定。作業員らが何らかの役割や作業に集中する状態を作り、心理的な安定を図る計画だという。
作業員の家族らは、坑道入り口近くにテントを張り、寝泊まりしている。ロイター通信によると、掘削ドリルに生存を伝えるメモを取り付けた作業員の妻リリアナ・ラミレスさん(51)は「夫に愛していると伝えたい。戻ってきたら新しい人生が始まるわ」と話した。
チリ鉱山事故 極限環境下、生存への闘い=運動、作業など多岐に
南米チリ北部のサンホセ鉱山落盤事故で地下700メートルに閉じ込められた作業員33人は、暗闇で高温多湿、わずかな食料という極限状況下で、約4カ月後とされる救出に向けて生き残りを懸けた壮絶な闘いに挑んでいる。
33人は5日の事故以来、避難所にあった備蓄食料を少しずつ分けて食べつないできたが、10キロ近くやせた人もいるといわれる。このため、栄養補給で体重を戻すのが喫緊の課題。届けられたチョコ味やラズベリー味の流動食を6時間おきに100ミリリットルずつ口にし、数日後に腸の活動が正常化すれば、1日 1500キロカロリーを目安に固形食摂取が始まる。体調差も考慮し、個別の差し入れも検討されている。
復調後は適度に体を動かすことも重要だ。作業員は約50平方メートルの避難所のほか、そこに通じる2キロ近い坑道も有効に使って生活している。ただ、空気は薄く、気温35度前後、湿度85%という息苦しい環境で、激しい動きは禁物だ。救助隊は血圧測定や採尿に必要な器具を送付。作業員のうち2人は医療技術に通じており、地上の医師団と共に健康管理には万全を期している。
現場班長ルイス・ウルスアさん(54)の統率下、結束して生き延びてきた33人は、交代で寝泊まりして不測の事態に備えている。地元報道によると、電気管理、清掃、測量を分担し、地上からの救助活動を「側面支援」。脱出するための大型穴の掘削が始まれば、新たな落盤を防ぐ補強作業などを手伝うことになりそうだ。
「サンロレンソ作戦」順調なら33人を11月にも救出へ
チリ北部コピアポ郊外で起きた鉱山落盤事故で、同国政府は28日、地下約700メートルに閉じ込められた作業員33人の救出用トンネルの掘削工事と同時に、通気や食料輸送などに運用している小さなトンネルを拡張して2本目の救出用トンネルとする計画をまとめ、数日内に着工することを決めた。救出作業当局の技術担当幹部が明らかにした。
拡張工事に要する期間は約2カ月と、1本目のトンネルの半分程度で済むといい、順調に進めば11月にも33人全員が救出される見通しとなった。
28日会見したゴルボルネ鉱業相によると、ピニェラ大統領は2本のトンネル工事を承認。またマニャリク保健相は一連の救出作業を鉱山作業員の守り神にちなんで「サンロレンソ作戦」と命名したと語った。
気晴らしにPSP差し入れ
チリ北部コピアポ郊外の鉱山落盤事故で、ゴルボルネ鉱業相は28日、記者会見し、地下700メートルに閉じ込められた作業員33人の気晴らしの一つとして、ソニー・コンピュータエンタテインメントの携帯ゲーム機「プレイステーション・ポータブル(PSP)」を差し入れることを明らかにした。
同相は各個人用のコップや衣類などの日用品も随時、地下の退避先とを結ぶ小さなトンネルを通じて送ると述べた。
「ビタミン補給を」NASA専門家が助言 チリ落盤事故
コピアポ郊外のサンホセ鉱山で起きた落盤事故で、現地を訪れていた米航空宇宙局(NASA)の専門家チームが3日、記者会見した。「地下深くに閉じ込められた33人の作業員の置かれた現状は、宇宙飛行士に似ている」として、救助にあたるチリ政府に助言をした。
専門家は、地下の作業員らが長期間、太陽を浴びないためにビタミンDが欠乏し、健康状態の悪化も懸念されるため、ビタミンを補給する必要性などを語った。
また、地下を(1)常に強い光を当てて「昼」の状態にし、運動したり人と話をしたりする場所(2)常に暗く「夜」の状態にして寝る場所(3)働く場所、の3区画に分けることで、体内のリズムを整え、可能な限り「日常」を作り出す必要性を強調した。
さらに、長期間の救助活動をマラソンに例え、救助隊、家族、作業員たちが協力することの重要性を指摘。「これだけ地下深くに、これほど長期間閉じ込められている人々を救出した例は過去にない」と語った。
この日はまた、既存の通気口の内壁を削って、救助用に広げる「プランB」のための掘削機が現地に到着。家族たちは、国旗を振り、地下の家族の写真を掲げながら、「これで早く、夫が外に出られる」「作業員万歳」などと叫び歓迎した。
チリ落盤事故作業員に川上産業が「プチプチ」寄贈。つぶして心の健康保って。。。
「プチプチ」(エアパッキン)製造大手の川上産業は、プチプチをつぶして遊ぶ「プッチンスカット」を、チリ鉱山の落盤事故で閉じこめられている作業員33人に、在日チリ大使館を通じて贈ったと発表した。「プチプチをつぶすことでストレスを少しでも癒し、メンタルヘルスを保っていただければ」としている。
チリ鉱山の落盤事故で閉じ込められている作業員33名の方に在日本国チリ大使館を通じて、弊社製品「プッチンスカット」を贈らせていただきました。プチプチをつぶすことによって、ストレスを少しでも癒しメンタルヘルスを保って頂ければと思っております。
一刻も早い救出をお祈り申し上げます。
川上産業のサイトによると、プチプチは世界中でつぶされまくっており、つぶしたくなるのは人間の本能。「心理学的にプチプチはついプチプチしたくなる形で、優れた娯楽」だそうだ。
■川上産業 プッチンスカット
チリ落盤の作業員に宇宙日本食
南米チリの鉱山で発生した落盤事故で閉じ込められた作業員33人に向け、日本人宇宙飛行士が宇宙に持参したのと同じ衣服や宇宙日本食が送られた。外務省から宇宙航空研究開発機構を通じて要請された企業が無償で提供し、チリ政府を経由して届けられる。
提供されたのはTシャツやブリーフなどの衣服33人分5セットと、黒飴やミントキャンディー20袋ずつ。同じものを若田光一さんが国際宇宙ステーション(ISS)での長期滞在に持参したほか、衣服の女性用は山崎直子さんが今年4月の初飛行で着用した。
提供された衣服は吸湿や抗菌、消臭性などに優れ、高温多湿の環境に適している。また、黒飴などは心身の疲れを癒やし、リフレッシュ効果もある。物資を提供したのは衣服大手「グンゼ」、スポーツ用品メーカー「ゴールドウイン」、アウトドア総合メーカー「モンベル」、食品大手「ヤマザキナビスコ」の4社。
希望の穴つながった チリ落盤事故、第一段階の掘削終了
チリ北部コピアポ近郊の鉱山落盤事故で地下に閉じこめられている33人の作業員たちを救出するための縦穴の掘削の第1工程が17日、終わった。地上から避難所にいる作業員が移動できる場所まで、深さ約630メートル、直径30センチほどの縦穴でつながった。このスピードで進めば、当初の見通しより2カ月近く早い11月初旬までに救出できる可能性もあるという。
チリ政府が進める複数の救出用縦穴の掘削のうち、プランBと呼ばれるもの。直径15センチの通気孔を今回、30センチに拡張した。今後、さらに約70センチまで広げる。穴の内壁が崩れないように保護したうえで、カプセルで作業員を1人ずつ引き上げられるようにする。食料などを届けている細い穴は別にある。
地元メディアによると、作業員たちは前日、掘削機が近づく音に興奮して眠れず、穴が開いた時には「チリ、万歳!」などと叫んで喜んだ。その瞬間を、作業員の一人がビデオ撮影して地上に送ったという。避難所と穴は約50メートルしか離れておらず、既存の坑道を使って近づき、待ち構えていたようだ。
18日からは、作業員たちが拡張のために落ちてくる岩石の破片を取り除く作業を始めるという。16日に作業員たちと話したある心理学者は、「本人たちはやる気満々だ。心理学者の観点から言えば、救出活動に自らも参加している、と感じることは大変良いことだ」と話す。
チリ落盤、10月前半にも救出か 大統領が訪欧を延期
チリ北部コピアポ近郊の鉱山落盤事故で、同国のピニェラ大統領は4日、「救出は間近だ。私が欧州に出発する前に救出したい」などと地元メディアに語り、地下に閉じ込められた33人の救出が今月前半になる可能性を示唆した。
ピニェラ氏は当初15日に欧州歴訪に出発する予定だったが、17日に延期した。AP通信や地元メディアによると、同氏は「救出の時を作業員や家族、国民と共有することは私にとって大変重要」と述べ、救出を見届けてから出発したい考えを明らかにした。
チリ当局は救出時期について、当初は12月としていたが、救出用の縦穴の掘削作業が進むにつれ、11月初旬、10月中旬、と早まる見通しを示している。現在、三つの縦穴の掘削が同時に行われているが、すでに直径30センチの縦穴が貫通して直径70センチに内壁を広げている「プランB」の掘削は、深さ620メートルの約75%に当たる464メートルに達した。
チリ、地下の33人「全員救出まで現場に残りたい…」
チリ北部コピアポ近郊の鉱山落盤事故で、地下にいる33人の作業員たちが、最後の一人が救出されるまではコピアポの病院に運ばないで救出現場にとどめてほしいと当局に伝えていたことが分かった。最後の一人が地上に出るまでは喜べないためで、仲間全員の生還を現場で分かち合いたいからだという。
当局が地下の33人の作業員らに対し、地上に救出された後は現場で簡単な医療チェックを受けた後、順次ヘリコプターで約50キロ離れたコピアポの病院に運ぶ段取りを伝えたところ、作業員たちは「全員が地上にそろうまでは現場を離れたくない」と希望したという。
だが、当局によると、33人全員を一度にヘリでコピアポに運ぶのは無理なため、実際には当初の予定通り数人ずつを順次運ぶ予定だ。
マニャリク保健相によると、33人の作業員は、救出に備えて毎日数時間、有酸素運動をしている。地下700メートルから地上に急にあがるため、身体的に負担があるためだ。「おなかが出ていた人も、すっきりした。我々よりもはるかに鍛えられた体つきになった」と同保健相。
33人の引き上げの順番を検討した結果、三つのグループに分けることになった。
まず、鉱山の経験が長く、知識のある人たちを引き上げる。「フェニックス(不死鳥)」と名付けられたカプセルで引き上げるが、万が一カプセルが途中で動かなくなった時にパニックにならずに、自力で脱出する力がある人たちだという。
次に、糖尿病や肝臓の病気などの持病がある人たちで、最後に健康な人たちが引き上げられる。最後まで仲間の救出を地下で支えられ、精神的にも強い人が残ることになる。地上では、救急救命士や医師、看護師ら医療関係者20人が1チームを作り、12時間で交代して、2チーム体制で救助に当たる。
チリ落盤、救出用縦穴が貫通
33人の作業員が地下700メートルに閉じ込められているチリ北部コピアポ近郊の鉱山落盤事故で、9日午前8時(日本時間午後9時)過ぎ、救出用に掘られていた縦穴が貫通した。8月5日の落盤発生以来約2カ月が経過した段階で、救出作業はついに最終局面に入った。
貫通したのは、元々通っていた細い穴を人が通れるように拡大した「プランB」の穴。サイレンが鳴り響き、地上で待っている家族たちは喜びのときの声を上げた。早ければ現地時間の11日夜から12日朝にも最初の作業員を救出できる見込みだという。
チリ落盤事故は13日に救出開始へ、2日で全員引き上げ
チリ北部コピアポの鉱山落盤事故で、地下に閉じ込められた作業員33人の救出作業が13日にも始まることになり、現地では貫通した救出用縦穴に金属製の管を挿入する補強作業が行われている。
全長625メートルの縦穴は9日に貫通。作業員らは「フェニックス」と名付けられた特殊カプセルで、1人ずつ地上に引き上げられる計画。全員を救出するまで、最大で2日間かかるという。
ゴルボルネ鉱業相は、すべてが順調に進めば、12日にも救出作業が始まる可能性があると述べる一方で、14日にずれ込む恐れもあると指摘。総合的に判断して、13日に開始されるとの見方を示した。
救出された作業員らには、その場で健康チェックが行われ、家族との面会時間も取られるという。その後、コピアポ近郊の病院にヘリコプターで搬送されることになっている。
作業員らは、一部が皮膚の感染症を訴えているものの、健康状態は非常に良好だという。
33人結束固く「自分が最後に」鉱山作業員救出
33人の作業員の救出作業が間近に迫ったチリ北部サンホセ鉱山で10日、マニャリク保健相が会見し、「作業員はみんな自分が最後に地上に出ると言い張っている」と話した。事故が起きれば救出作業が止まる可能性もあるが、2カ月以上を地下で共に過ごした作業員らは驚くべき友情を見せている。
1人を地上に引き上げるためには、救出カプセルに乗っている約10〜15分を含め約1時間かかる。政府は作業員を3グループに分け、最初と最後のグループは健康状態と精神状態が良い作業員にすると決めた。
保健相は「政府が決めた救出の順番に対し、地下から抗議してきた。33人は結束が強く、意気盛んだ」とうれしそうに話した。救出の順番は11日にも発表される予定。
33人いざ地上へ、命のカプセル大作戦
チリ北部のサンホセ鉱山落盤事故で地下に残る作業員らの救出作業が、13日に始まる。33人の作業員を東京タワーの高さの倍近い624メートルの深さから救い出す過去に例のない作戦を成功させるため、心身両面から万全の医療態勢が取られる。
作業はまず、救援専門家と看護師各2人が、救出用カプセル「フェニックス(不死鳥)」に乗り、地下の坑道に届く縦穴を降りていくところから始まる。地下で作業員の状態をチェックし、最終的にカプセルに乗る順を決める。マニャリク保健相によると、最初に乗るのは比較的若く、かつ鉱山での経験が豊富な人。カプセルを引き上げる作業の過程を逐一観察し、地上の作業チームに情報を提供する重要な役目があるためだ。
途中で吐き気を催さないよう、作業員は救出開始6時間前から固形食を絶ち、高カロリー、高たんぱくでミネラルを添加した流動食に切り替える。作業員は全員が、防水性と通気性に優れた特殊素材で作られた特製の作業服を着用する。地底の暗所に慣れた目には地上のちょっとした明かりも害になるため、視界全面を覆うサングラスもつける。
直径70センチ弱の縦穴を通して作業員を引き上げる作業にはリスクもつきまとう。カプセルの動きは事前にテストが可能で、実際に11日の試験では問題が起きなかったが、地底で2カ月超を過ごした人間を地上に引き上げる作業は前例がなく、体にどんな負担がかかるか予想ができない。そのため、準備はあらゆる事態を想定して進められてきた。
円筒形のカプセルは、直径五十数センチ。「長く33人で暮らしてきた作業員が、初めて1人になる。大きなリスクがある」とマニャリク氏。地元メディアによると、何人かは地上で待つ親族に不安な心の内を明かしたという。このため、カプセル内には救出中に起きうるあらゆる変調を想定した装備が用意されている。呼吸困難や急性の血栓症が起きた場合に備えて酸素ボンベが積まれており、地上の作業チームとは通信回線で結ばれ、引き上げ中の作業員の表情をカメラで確認できる。イヤホンを通じて作業員に指示を送ることもできる。
15〜20分かかって地表にたどりつくと、作業員は現場近くにつくられた医療施設に運ばれる。引き続き目を保護するため、内部は「映画館なみの暗さ」(マニャリク氏)に保たれる。応急処置をした後、ベッドで1〜2時間の休憩を取り、医師の許可が出れば、やっと家族との念願の対面だ。その後ヘリコプターで約50キロ離れたコピアポの病院に運ばれ、2日ほどの検査を受ければ、帰宅が許される。
だが、それですべてが終わり、というわけではない。医療チームの医師リリアナ・デビア氏は「精神的な問題は長く残る可能性がある」と言う。2006年にオーストラリアで起きた鉱山事故で、2人の作業員が地下に14日間閉じこめられたことがあった。うち1人は1年後に地元テレビのインタビューで「いまでも悪い夢を見ることがある」と語る。デビア氏は「カウンセラーによる心理療法の必要もあるだろう」と話した。
地下の作業員を精神面から支える心理チームの責任者、アルベルト・イトゥラ氏は「多くの人が彼らにあいさつに来たり、お祝いをしたりしようとするだろう。でも彼らはそういう状態にはない。ゆっくり休み、新しい環境に適応するための時間を与えなければならない」と話す。
チリ落盤救出、6時間前倒しも 大統領立ち会い
チリのゴルボルネ鉱業相は12日、ピニェラ大統領が救出に立ち会うため、早ければ12日午後6時(日本時間13日午前6時)にも現場に入ると語った。当初13日午前0時に開始予定だった救出作業は、大統領が到着し次第、始まる可能性がある。
チリ落盤:69日ぶり1人目生還…妻と抱擁「調子いい」
チリ北部コピアポ郊外のサンホセ鉱山落盤事故で、地下約700メートルに閉じ込められた作業員33人の救出作業が12日深夜(日本時間13日午前)に始まり、1人目の作業員、フロレンシオ・アバロスさん(31)が13日午前0時(同13日正午)過ぎ、救出された。8月5日の事故以来、69日ぶりの「奇跡の生還」となった。作業は、特殊カプセルで1人ずつ引き上げる方法で、2人目以降の救出も続いている。
アバロスさんが地上でカプセルから出ると、拍手と歓声がわき起こった。アバロスさんはサングラスをかけたまま、妻と7歳の息子と抱き合った。救助隊員に調子はどうかと聞かれ、「いい」と答えたという。
ピニェラ大統領は演説し、「(作業員が)我々の元に戻ってきた。すべてのチリ人が感動した」と述べた。
響き渡る拍手 生還の作業員「神の手握った」
「チ、チ、チ、レ、レ、レ! ロス・ミネロス・デ・チレ!(チリの鉱山作業員万歳)」救出が始まった12日深夜、サンホセ鉱山に「応援節」が響き渡った。最愛の人の生還を待ちわびる家族たちは、現場に設置された大型スクリーンに映る中継映像を食い入るように見つめた。現場にいると、時間が長く感じられた。
最初に救出された作業員、フロレンシオ・アバロスさん(31)がカプセルから姿を現すと、周囲から拍手と歓声がわき起こった。アバロスさんは目を守るための特殊サングラスをかけたまま、妻と7歳の息子と抱き合った。診療所に運ばれる際、笑顔で親指を立て、救助隊員に「コモエスタ(元気か)?」と聞かれ、「ビエン(大丈夫だ)」と答えたという。
「地下には神と悪魔がいた。私は神の手を握った」。2人目に救出されたマリオ・セプルベダさん(40)はそう言って、再び地上に立った喜びをかみしめた。閉塞(へいそく)した地下は地獄のようだったが、必ず救援が来ると信じていたという。カプセルを出ると突然、持っていた袋から石を取り出し、「地中からのみやげです」と周囲に手渡して笑いも誘った。セプルベダさんは家族と一緒にチリ国営テレビに出演し、「これまでいろいろ経験してきたが、今回ほどきつかったことはない」と過酷な地下生活を振り返った。
閉じ込められた33人の中で唯一のボリビア人、カルロス・ママニさん(24)は4人目に救出された。チリとボリビアは隣国ながら、領土問題を抱えて正式な外交関係がない。現場に駆けつけた妻ベルキさんは小さなボリビア国旗を握りしめた。
ママニさんは笑顔で救出カプセルを降り、ベロニカさんを力いっぱい抱き締めた。ピニェラ大統領もボリビア国旗を手に迎え、ママニさんと抱擁を交わした。「ありがとう」。ママニさんは繰り返していた。
チリ政府は当初、救出作業に着手する時期を「クリスマスか新年になるかもしれない」と説明。直前になっても具体的なスケジュールを発表せず、慎重姿勢を貫いた。さらなる落盤が起きる危険性や、予定通り救出できなかった場合に作業員や家族が受ける心理的なショックを考慮したためとみられる。
救出作業のノウハウに乏しいチリ政府は、NASA(米航空宇宙局)や米疾病対策センター(CDC)、ハーバード大学など外国の政府、研究機関に次々と支援や助言を仰いだ。これが奏功して世界中から機械や人材が集まり、早期の救出劇につながった。
事故責任や対応の遅れを指摘されたピニェラ大統領にとって、救出作業は「賭け」でもあった。ピノチェト政権以来初の右派政権を率いる大統領の人気は就任当初から低迷し、事故直前(7月)の世論調査では不支持率が40%に達していた。それが救出活動が本格化した9月時点には32%に改善。大統領の危機対応能力を74%が評価した。
オバマ米大統領 英知を尽くした救出劇に感銘…
ギブズ米大統領報道官は13日、チリの鉱山落盤事故に関し、オバマ大統領が作業員の救出作業をテレビで見守り、
ギブス米大統領報道官は13日、記者団に対し、チリのサンホセ鉱山落盤事故の作業員救出に関し、オバマ大統領が「テレビで救出の様子を見ていた」と明らかにした上で、「大統領は救出劇に感銘を受けていた。極めて感動的なストーリーだ」との感想を述べたと明らかにした。
同報道官によると、大統領は作業員の家族や子供たちが再会を待ちわびる中、現場の関係者が一丸となって救出作業に当たる様子に感銘を受け、「ハッピーエンドの極めて感動的なストーリー」と語った。大統領は同日中にもピニェラ大統領に電話をかけ、祝意を伝える見通しという。
チリ落盤事故のスピード救出劇、立役者は米掘削技師
2カ月以上にわたり地下に閉じ込められた鉱山作業員33人の引き上げが始まるチリの落盤事故。当初予定より大幅に早まった救出作業の陰には、ある米国人技師がいた。
チリに拠点を置くGeotec Boyles Brosで24年にわたって掘削技師を務めるジェフ・ハート氏(40)は、作業員らを救出する縦穴の掘削のため、数週間にわたって作業を指揮。当初は4カ月かかる可能性もあるとされた作業は6日に完了し、その仕事ぶりはチリ政府から高い評価を受けた。
チリ政府は救助用縦穴の掘削に当たり、3社に作業を依頼。ハート氏のGeotec社が最も速く地下に到達した。
縦穴貫通後に現地で取材に応じたハート氏は、「ついに貫通できた。われわれはずっと闘ってきた」とコメント。ようやく作業員を救出できることを喜び、「これ以上に重要な仕事は今後ないだろう」とも語った。
縦穴が貫通したとの知らせを受け、作業員らの家族や友人はハート氏と一緒に記念撮影する姿も見られた。
チリでの掘削について要請を受けた際、アフガニスタンで米軍とともに井戸を掘る作業をしていたというハート氏。「呼ばれた理由は分からないが、とにかくここで仕事を終えた。ほかにも素晴らしい掘削会社がいる中で、われわれは最もラッキーだった」と話した。
縦穴が貫通する直前には、地下との連絡用に使用していた電話から作業員らの歓声も聞こえたといい、作業完了直後には救助チームのメンバーとシャンパンを開けて祝福。「33日間掘り続けた。本当にラッキーな日になった」と、ハート氏は喜びをかみしめた。
「希望」束ねた指導力 33人目ウルスアさん
その瞬間、クラクションが鳴り響き、カプセルから33人目の作業員、現場監督のルイス・ウルスアさん(54)が姿を現した。救出作業を見守ったピニェラ大統領が目にうっすら涙をため、固く抱きしめた。息子が駆け寄る。チリ国歌が斉唱された。夜の肌寒い鉱山が、熱気で包まれた。「皆さんに感謝します」。胸を張り、ウルスアさんはにこやかに語った。
彼なしでは、奇跡が起きたか分からない。前例のない過酷な地底生活を続けた33人をまとめ上げ、生還へ導いた立役者だ。
「48時間おきにスプーン2杯のツナ、そしてミルク1杯。これを守ろう」。8月5日の事故発生のその日から、彼の挑戦は始まった。他の作業員と手分けして周囲のトンネルを調査し、自分たちが閉じ込められた事実を冷静に認識。生命線ともなる食料配給の規則を決め、発見と救出を待った。工事の現場監督経験が豊富なため、自然に周囲から頼られた。
「地下に33人が生存」。全員の無事が初めて確認されたのは事故発生から17日後。それまでウルスアさんは、泣き出しそうになる仲間に言い続けた。「助けが必ず来る。絶対に希望を失うな」。ウルスアさんが言うと、不思議と心が落ち着いた。
いつしか、ウルスアさんのもとに全員が団結。時にはパニック気味になり、けんかもした仲間たちがまとまっていった。そして「奇跡」は起きた。
ウルスアさんはピニェラ大統領に語った。「我々は、世界が待ち望んだことを成し遂げた。70日間の闘いは無駄ではなかった。強さと精神力を失わなかった。家族のために闘い抜きたかった」
◇次女に命名「エスペランサ(希望)」
ウルスアさんと共に最終段階まで地下に残り、最後から2人目の32人目に地上に出たのがアリエル・ティコナさん(29)だ。
妻エリサベスさんは、9月14日に帝王切開で次女を出産した。その名は「エスペランサ(希望)」。退院したエリサベスさんはエスペランサちゃんを抱き、現場の鉱山を訪れた。ティコナさんはテレビ電話でエスペランサちゃんと対面し、はにかむように手を振った。
救出後、高々と手を上げたティコナさん。パパは確かに「希望」をもらっていた。
救助隊員6人も全員帰還、すべての作業終了
作業員の救助用カプセル乗り込みを地下で補助した救助隊員6人の引き上げ作業も順次行われた。14日午前0時32分(日本時間同日午後0時32分)、最後の1人が地上に引き上げられ、救出作業はすべて完了した。
オレンジ色のつなぎの作業服を着た隊員は仲間と抱き合い、任務成功を喜んだ。
「英雄」に拍手、病院も黒山の人…全員生還
33人全員が「奇跡の生還」を果たしたチリ北部サンホセ鉱山の落盤事故。救出された作業員は順次、コピアポ市内の病院に搬送され「英雄」のような扱いで拍手で迎えられた。車椅子に乗せられた作業員らは、手を振って笑顔で声援に応えた。
「希望」を表す緑色の作業服と帽子に身を包んだ作業員らはバスなどに分乗し、病院に乗り付けた。玄関前には看護師らが黒山の人だかりを作る。割れるような拍手と歓声が車椅子に乗って診察室に運ばれる作業員らを包んだ。最後に救出されたリーダー役のルイス・ウルスアさん(54)も拳をふりあげた。病院では厳重な報道管制が敷かれ、生の声を拾おうと、徹夜で待機する記者らの姿が見られた。救出作業を巡って、作業員らがさまざまな思いで脱出を待ち望んでいたことが徐々に明らかになっている。
14番目に救出されたビクトル・サモラさん(33)は仲間から「詩人」と呼ばれ、地下に閉じ込められていた69日間の苦しみや希望を詩につづった。「多くの日々が過ぎた、何も分かることがないまま……。ここ地中の底、涙が流れ始める」。事故後の17日間、地上と連絡が取れない状況下の不安をこう表現した。一方、イエス・キリストが33歳で亡くなったとされていることから「私たちは33人。神は33歳。奇跡のような偶然。だからそれは、前に進むための力を私に与えてくれる」(米紙)とも書き、言葉で自らを鼓舞したという。
救出の陰には国境を超えた「和解」もあった。4番目に救出されたカルロス・ママニさん(24)は唯一のボリビア人。職を求めて4年前にチリに移住し、他の鉱山で労働。サンホセ鉱山で働き始めたのは事故の5日前だったという。貧しいボリビアから職を得るため他国に向かう人は多い。ある政治アナリストは救出前、米紙に「ママニ氏の例は、チャンスを求めて国を離れる何百万人のボリビア人の象徴」と指摘する。
ボリビアはチリと戦って領土を奪われた歴史的経緯があり、現在も国交がなく、ボリビア国民にはチリへの敵対心が強いとされる。しかし今回、モラレス・ボリビア大統領は救出現場に向かい、チリ政府に感謝を述べた。救出が国同士の「雪解け」をもたらした。
カプセル投入に消極的だった
チリの鉱山落盤事故で地下約700メートルから救出され、北部コピアポで入院中の作業員33人のうち、3人が14日夜に退院した。残る作業員も17日までに退院する見通し。大成功に終わった救出作業に鉱山事故対策の専門家として参加し、救出用カプセル「フェニックス(不死鳥)」を考案・設計するなど大きな役割を果たしたコピアポ海洋大鉱山学部長、ミゲル・フォルト氏が14日、鉱山近郊カルデラの自宅で産経新聞のインタビューに応じ、救出作業は「世界の鉱山事故史上、最も困難な事例の一つだった」と語った。
フォルト氏は、海外を含む14件の鉱山事故で救出作業にかかわった専門家だ。当初は救出チームのメンバーではなかったが、メディアの取材に応じるうち、作業員の家族らからの強い要望で無給のボランティアとして作業に加わった。
「事故後、100%生存を信じていたのは私だけだった」。フォルト氏は、あきらめムードに傾きがちだった救出チームに発破をかけ続けた。生存が判明し、作業の目的が探査から救出に変わっても、チーム内の混乱は続いた、という。
チーム内に波風が立つほど作業が困難を極めた理由はなんといっても、地下700メートルという深さだった。
まっすぐにドリルを掘り進めるのは実は極めて難しく、距離が伸びるにつれてらせん状を描いてしまう。議論を重ねた結果、ジェット水流を使ってドリルを導く方法を採用。引き上げでは驚くほどスムーズなカプセルの昇降が実現した。
「フェニックス」を考案したのもフォルト氏だった。「同様の装置の使用はこれまでも例はあるが、もっと簡単な作りだった。今回は大深度からの引き上げのため、酸素供給や通信の確保のために比べものにならないほど複雑な構造となり、コストもかかった」
チリ政府は当初、フェニックスの投入に消極的だったという。「政府は、人が乗り込めるほどの大きさのバスケットで十分だろうと考えていた。それではだめだと強く主張し、メディアを巻き込んでようやく認めさせた」。結果的に、フェニックスは救出成功の最大のシンボルとなり、チリの国威発揚にもつながった。
成功の原因は、「チリの豊富な鉱山活動の経験に加え、国際社会からのアドバイスや支援に素直に耳を傾けたこと」だと分析する。さらに、寝食を忘れて取り組んだチームの結束。フォルト氏自身、連日朝から夕方まで現場に入った後、大学の夜間クラスで教える日々が2カ月余り続いた。
ただしフォルト氏は「チリでは今年、すでに34人が鉱山事故で命を落としている」と祝賀ムード一色の政府にくぎを刺している。
生存確認時、ツナ缶残り3食分…チリ落盤事故
チリ北部コピアポ近郊のサンホセ鉱山落盤事故で、8月22日、地上から掘られた探査用の細い穴が通じて作業員33人の生存が確認されたとき、わずかな食料がついに底をつくなど限界を迎えていたことがわかった。
チリの有力紙メルクリオが15日、約70日ぶりに救出された作業員の証言として伝えた。探査の穴はまさに間一髪の局面で到達した。
探査用の穴が通じたのは8月22日明け方。同5日の事故発生から17日たっていた。リチャルド・ビジャロエルさん(26)によると、穴が通じたとき、作業員33人の絶食は72時間に達していた。「死ぬんだと思っていた」という。
最初の17日間、リーダー格のルイス・ウルスアさん(54)の提案で、作業員たちは48時間おきに「スプーン2杯のツナ、ミルク1口、ビスケット1枚」で飢えをしのいだことがわかっているが、缶詰のツナが残り3食分となり、ルールを一層厳しくしていた。ミルクはすぐ腐って飲めなくなった。
チリ鉱山生還作業員が語った真実
チリの落盤事故で2番目に救出された“スーパー・マリオ”こと、マリオ・セプルベダさん(40)がこのほど英紙サンデー・メールのインタビューに応じ、生存が確認されるまでの「暗黒の14日間」を語った。奇跡の生還を果たした作業員33人は「沈黙の契約」を結び、地下で起きたことをしばらくは話さないと決めていたが、ホモ疑惑やカニバリズム(人食い)などの噂が流れていることから、「真実を語ることが必要」と判断したという。(夕刊フジ)
8月5日 ランチを取るため全員が地上に戻る昇降機のそばに集まっている時、大きな落盤が起きた。「もし地下の坑道に散らばっていたら助からなかっただろう」とマリオさんは病院のベッドで語った。だが、そこから「真っ暗な地下の墓場で絶望と戦う日々が始まった」という。
シェルターに避難した33人は脱出ルートを探す一方、役割分担を決めた。33番目に救出されたルイス・ウルスアさん(54)がリーダーになり、ツナの缶とラジエーター用の油で汚れた水を分け合った。
「シェルターの中を常に清潔にすることが大切だった。穴を深く掘って排便し、たまるとドラム缶に詰めて砂をかけてフタをした。何かを決めるときは多数決で決めた」
「パニックになる者もいた。毎日誰かがおかしくなり、それが治ると別の人間がヒステリーになった。全員が何か役割を果たし、常に忙しくしていること、救出されると信じ続けることが大切だった」
子供のころからジョーク好きだったマリオさんは道化役を買って出た。常に人を笑わせ、険悪なムードになることを防いだ。「自分が泣きたい時はシェルターを出てトンネルの中で1人で泣いた。道化師が人前で泣くのはおかしいからね」
10日目、地下の雰囲気が最悪になった。全員を餓死の恐怖が襲った。
「起きたら、険悪なムードになっていた、そこで私は弱々しい声で皆を呼び、“おれはもう死ぬだろう。家族に、おれがどれほど愛していたかを伝えてくれ”と言って息を止めた。そして、もうこれ以上息が続かないとなった瞬間、大声で笑ったんだ。皆、怒ったよ。でもあとで聞くと、あの瞬間から皆は“死ぬならグループで、尊厳をもって死のう”と決意したらしい」。その後、それぞれが遺言を書き始めた。
「おたがいの妻の話をしたことはあるが、真剣にセックスの話をすることはなかった。それを話すこと自体、あの状況下では痛すぎることだった」とマリオさん。噂されているホモ疑惑は、もちろん否定。カニバリズムについては「もっと長い時が経てば、そういうことがあったかもしれないが、そんな事態にはならなかった」という。
チリ救出作業員、会社設立 出版などの利益、公平に分配
チリ北部コピアポ近郊の鉱山落盤事故で、地下に閉じこめられていた33人の作業員のうち31人が、地下での体験を元にした本の出版や映画化などから得られる利益を公平に分配するため、会社を設立することで合意した。チリ有力紙メルクリオが伝えた。
作業員やその家族が20日、会議を開き、公証人の立ち会いの下に決めた。近くマネジャーも決め、宣伝や知的所有権の管理なども行うという。作業員の一人オマル・レイガダスさんは「地下での経験を元に金を得るために設立した。自分たちで作る賠償金のようなものだ」と話した。別の作業員のビクトル・セゴビアさんの娘は「マネジャーがいれば家族としては落ち着けるから安心」と話している。この日契約に参加していなかった2人が誰かは明らかになっていないが、この2人も近く参加する予定という。
地元記者によると、救出劇を巡っては、これまでに映画化の話が三つ浮上しているほか、地下でつけていた日記の出版やテレビ番組出演のオファーも多い。すでに数人がクイズ番組に出演し、地下での体験をテレビ番組で語るためにスペインまで旅行している。