日本通信が、ドコモ回線で iPhone4 や iPad が使えるようになるmicro SIMを発売すると発表し、話題になっている。8月中には、SIMロックフリーの iPhone 4 や iPad を個人で海外から輸入すれば利用できるが、現状では製品の入手方法が紹介されている訳でもなく、情報があまりにも少なく、必ずしも万人が恩恵にあずかれるモノではないことは理解しておきたい。
日本通信が8月中にも「SIMロックフリー版」のiPhone 4などで利用可能なmicro SIMを発売するというニュースが、ネットを中心に大きな話題を呼んでいる。8月6日付の日本経済新聞朝刊を皮切りに、新聞各社が記事を配信し、同日日本通信がアナリスト向けに開催した2011年3月期第1四半期決算会見の席上でも、micro SIMの販売に言及があった。 日本通信が販売を予定しているのは、ドコモのMVNOとして展開している日本通信のサービスが利用できるmicro SIMで、予定では、「b-mobileSIM U300」のような、データ通信のみが可能なものを月額2980円くらい、「talkingSIM」のような音声通話もできるものを月額3785円くらいで販売するという。 これを利用すれば、確かに「ドコモのネットワークが利用できる」ことに違いはない。しかしiPhone 4に限らず、他のmicro SIM採用スマートフォンなど(今のところiPadくらいしかないが)でも、2GHz帯と800MHz帯の周波数をサポートしていれば、ドコモのネットワークに接続して通信サービスが利用できる可能性は高い。とても画期的なことであり、メディアが騒ぎ立てるのは理解できる。 しかし、この日本通信のmicro SIMを買えば、ドコモのネットワーク+サービスでiPhone 4が利用できるかのように考えてしまうと問題がある。 まず、そもそも国内でソフトバンクモバイルが販売しているiPhone 4には「SIMロック」がかかっている。つまり、今多くの人が普通にソフトバンクモバイルと契約して使っているiPhone 4は、日本通信のmicro SIMを装着しても利用できない。 これを活用するためには、香港などSIMロックフリーでiPhone 4を販売している国から輸入したiPhone 4を手に入れる(あるいは自分で買ってくる)必要がある。恐らくこうした端末は、国内で普通に販売されているiPhone 4よりも価格が高くなるはずだ。そもそもこうしたSIMロックフリーのiPhone 4が、世界的に品薄な状態の中で、すぐに潤沢に手に入るようになるというのも考えにくい。 ドコモのネットワークが利用できるとはいえ、日本通信のmicro SIMではキャリアメールは利用できない。ソフトバンクモバイルのiPhone 4で利用できる「@softbank.ne.jp」のメールアドレスが利用できないのはもちろんだが、「@docomo.ne.jp」も利用できない。 また、日本通信が提供するデータ通信の速度だ。現在b-mobile SIM U300向けに提供されているデータ通信速度は、上り/下りともベストエフォートの300kbps超。一部報道では通信速度を上げる可能性にも言及しているが、それでもいきなりHSDPAの下り7.2Mbpsなどに対応することはないだろう。b-mobileSIM U300とほとんど変わらない料金プランを想定していることから、大幅なスピードアップが行われるわけではないと思われる。 そうなると、電波が悪いといわれるソフトバンクモバイルと比べても、通信速度における満足度は下がってしまう可能性もある。「つながるけど遅い」のと「一部つながりにくいけどつながれば速い」のと、どちらを選ぶか。自分の利用環境などと照らし合わせてよく考える必要があるだろう。
■香港でiPhoneを買ってみよう - プリペイドSIMを購入して安価に通信を楽しむ SIMロックフリー版iPhoneを買ってしまえば、渡航先でプリペイドSIMカードを購入し、データ通信設定を行うだけで、現地の割安なデータ通信料金を利用できる。iPhoneをもう一台買うのは、割高に感じると思うが、安い現地の定額プリペイドSIMカードが利用できることを考えると結果としては割安になるだろう。 港で1週間iPhoneを使い倒したとしても、データ利用金はわずか2,500円。本体が7万円前後であっても日本のiPhoneをローミング利用するより割安だ。