2004年から活動を続け、もうすぐ6年も火星に滞在している火星探査車オポチュニティが、システムのアップデートに成功して、自律的に撮影する機能を手に入れた。そのオポチュニティが選んで撮影した画像をNASAが公開した。新しい能力を備えた6年目ベテラン探査車にNASAは大きな期待を寄せている。
2010年3月29日、オポチュニティミッションの専門家チームが、今冬に行われたソフトウェア・アップデートの結果を公表した。 この更新でオポチュニティは自律的に調査対象を選択できるようになった。 ナビゲーションカメラの撮影画像をプリセットされた選択基準と照らし合わせて、物体を選択し撮影するという。例えば上の写真では、コンセプシオン(Concepcion)クレーター付近にあったフットボールほどの大きさの奇妙な形の岩石が選ばれた。 新しいソフトウェアの導入で、地球からの指示を受信する際に発生していた20分間の通信遅延が解消され、貴重な時間を大幅に節約できるようになる。 火星探査車オポチュニティ 火星上の走行距離20kmを超えた 火星探査車オポチュニティは、2004年1月に火星に着陸して以来、火星日で2000日以上(地球上の6年以上)という、前例のない長期間にわたって探査を続けている。 先週、(火星日の)2191日目を迎えたオポチュニティは、次の目的地であるエンデバー・クレーターに向かって67m前進し、この日までの全走行距離が20.0433kmとなった。 オポチュニティの探査期間は、当初3か月(走行距離にして600m)と予定されていた。幸いなことに、その予定を大幅に超えた現在でも、探査車の状態は良好なようだ。しかし、次の目的地であるエンデバー・クレーターまでは、まだ12kmという長い道のりが待っている。
NASA公式発表 スピリットは走行不能と判断。 2004年から火星の調査に奔走してきた探査車スピリットの足が完全に止まろうとしている。昨年5月に南半球にある小さなクレーター「トロイ(Troy)」の砂地に車輪を取られて以来、継続的に脱出が試みられてきたが、スピリットは依然として移動できない状態だ。 この状況を受けてミッション責任者は26日、脱出の断念を発表した。現在の走行可能距離は10センチ程度でほとんど身動き取れない状況だが、今後も現在の停車位置から可能な限りの観測が行われるという。 NASAの火星探査プログラムを指揮するダグ・マッキション氏は26日、ワシントンD.C.で記者会見を開き次のようにコメントしている。「あのクレーターはゴルフで言うなら“恐怖のバンカー”だ。バンカーショットを何度繰り返しても抜け出すことができない」。 脱出を断念したいま、スピリットの運転担当者は可能な範囲で車体を動かし、迫り来る冬を無事越せるような傾きにしようと模索しているところだ。 カリフォルニア州パサデナにあるNASAのジェット推進研究所(JPL)で活動する火星探査車プロジェクトの責任者ジョン・カラス氏は次のように話す。「過去にも車体を駆動して太陽電池パネルを北に傾け、太陽光を最大限取り込むことに成功したことがある。現在は南に約9度傾いており、太陽発電に適切な状況とは言えない。傾きを改善できなければ、電力不足で日常的な活動が困難になるだろう」。 その場合、スピリットは自発的に休止状態に入り、約6カ月間に渡って通信が途絶えるものと見込まれる。 カラス氏によると、現在のスピリットにとって最大の課題は越冬だという。「通常は電源をオンに維持して車体を保温するんだ。冬場に車をアイドリングするようにね」と同氏は説明する。 これまで日射量の減少する冬場はスピリットを停車させ、車体をできる限り北に傾けて太陽光を取り込んでいた。そうして春に再び動けるようになるまで最低限必要な電力を確保し、通信を継続していたのである。 しかしスピリットが休止状態に入ると、太陽電池パネルで発電した電力はバッテリーの充電に回され、電子機器の保温は行われなくなる。今年の冬、火星の気温はマイナス45度ぐらいまで下がると予想されているが、スピリットは休止状態でマイナス55度まで耐えられるように設計されているという。 この件についてカラス氏は次のようにコメントしている。「設計限度の範囲内ではあるが、新品の車体でしかテストされていない。90日という短期間のミッションを想定して設計されたスピリットも、火星の探査を始めて既に6年を経過した。したがって無事に冬を越せる保証はなく、春が来て再び通信を開始してくれるのか本当に心配だ」。 スピリットの運転を担当しているJPLのアシュリー・ストラウプ氏は、「スピリットが春に活動を再開したら、可動システムを最大限活用して万全の調査活動を実施できるようにしたい」と話す。 ニューヨーク州にあるコーネル大学の教授で、火星探査車プロジェクトの主任研究員でもあるスティーブ・スクワイヤーズ氏は、「スピリットの立ち往生にもプラスの面があるかもしれない。例えば火星の核や大気の状態、過去の水の動向に関して、新たな発見がもたらされる可能性もある。移動する必要がなくなった分、これからはまったく新しい分野の科学調査に没頭できる」。 例えばスピリットが一定の場所から発信する電波信号を追跡調査すれば、火星の自転軸の揺らぎを正確に計算できるのではないだろうか。 ロボット・アームを使ってクレーター周辺の複数の場所から土壌サンプルを採取し調査すれば、火星の大気と地表の間で長年に渡って行われてきた相互作用を解明することもできる。また、今度の立ち往生が功を奏し、クレーター「トロイ」が硫酸塩の層で不自然に覆われていることが判明している。周辺地域が比較的最近、水の作用を受けている可能性が示唆されたかたちだ。 スピリットの活動継続を諦めていないスクワイヤーズ氏は、「まだまだ多くの科学的発見を期待できる。誰もが驚くような新事実も見つかるかもしれない.」と話している。
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