動脈硬化の抑制などに効果があるとされるポリフェノール。赤ワインやココアなどに含まれていることは広く知られている。しかし、コーヒーにも赤ワインに匹敵する量のポリフェノールが含まれ、一日の食生活の中で仕事の合間や食後に飲むコーヒーから最も多くのポリフェノールが摂取されていることが、ポリフェノール研究の第一人者として知られるお茶の水女子大大学院の近藤和雄教授の調査・研究で分かった。
お茶の水女子大学の近藤和夫教授とネスレの調査「日本におけるポリフェノール摂取量とコーヒー摂取に関する検討」によると、夫と高校生以下の子どもを持つ主婦のポリフェノールの摂食源を調べたところ、トップは「コーヒー」で47%を占めていることが分かった。以下、「緑茶」(16%)、「チョコレート」(4%)、「赤ワイン」(2%)、「ココア」(0.2%)が続いた。 「100ミリリットル中のポリフェノール量は赤ワインが230ミリグラム、緑茶が115ミリグラムに対して、コーヒーは200ミリグラム」(ネスレ)と、コーヒーのポリフェノール含有率が比較的高く、かつ手軽に飲めることが影響しているようだ。平均総ポリフェノール摂取量を見ると、コーヒー摂取量の多い主婦(1日3杯以上)だと1日当たり1200ミリグラム。標準の主婦だと1日当たり840ミリグラムという結果になった。 ◆お茶よりも多く 飲み物100ミリリットル当たりに含まれるポリフェノールの量は、赤ワインが濃さによって150〜300ミリグラムで平均すると230ミリグラムほど。これに対してコーヒーには200ミリグラムのポリフェノールが含まれ、緑茶は115ミリグラム前後という。 近藤教授が9000人を対象にした飲み物の摂取量調査や109人を抽出した詳細な調査からポリフェノール摂取量を調べたところ、1日に取るポリフェノールのうち8割が飲み物からで、食べ物からは2割。さらに、飲み物から摂取しているポリフェノールの半分がコーヒーからによるものだった。 「日本は(動脈硬化が引き起こす)心筋梗塞(こうそく)が先進国の中でも少なく、最長寿国。それを支えているのが食生活で、ポリフェノールがその主因となっているとしたら、その一つはお茶だろうと思っていた。ところがコーヒーが1番だった」と近藤教授。「日本人がコーヒーをこんなに飲んでいたのか、ということにまず驚いた」と話す。 ◆体で感じて飲む ポリフェノールの必要摂取量はまだ分かっていないが、「これまでの調査で使った基準(1日当たり1000〜1500ミリグラム)で考えれば、コーヒーなら5杯、お茶なら10杯でだいたい必要量が摂取できるデータが得られた」と近藤教授。気持ちを落ち着かせたり気分転換したりしたいときに飲むコーヒーが心のゆとりだけでなく、体の健康にも大きな効果をもたらしていることが解明された形だ。 体内に摂取されたポリフェノールの働きは2時間程度で、4時間後には効果がなくなってしまうとされる。近藤教授は、朝食時▽午前10時▽昼食時▽午後3時▽夕食時−と習慣的に飲むお茶の時間について、「そう考えると昔の日本人はなかなか偉かった。実は知らないうちにポリフェノールを取っている。体で感じてお茶を飲むようになったのかな」と感嘆する。 これまでの研究では赤ワインやココア、お茶などに含まれるポリフェノールの坑酸化作用などを調べてきたが、赤ワインの場合はアルコール、ココアの場合はカロリーが問題となる。コーヒーの場合も飲むときに入れるミルクと砂糖の影響が心配されることから、近藤教授は「ブラックで飲んでみては」と提案している。 ■飲用量は漸増傾向 全日本コーヒー協会によると、缶コーヒーやインスタントコーヒーを含めたコーヒー飲料全体の飲用量は1週間で1人平均10・6杯(平成20年)で、漸増傾向にあるという。 協会では、コーヒーに含まれるクロロゲン酸というポリフェノールの抗酸化作用などに注目して動脈硬化抑制などへの効果をアピールするほか、がんや糖尿病の予防への効果を示す研究結果についてもPR。「もともとコーヒーは薬として広がっていった。コーヒーは健康に良い飲み物だということを多くの人に知ってほしい」(西野豊秀専務理事)としている。 ポリフェノールって? ポリフェノールとは、植物が自身を酸化から守るために光合成の過程で作り出す物質です。分子内にフェノール性水酸基(-OH)を複数(ポリ)もつ植物成分の総称なので、「ポリフェノール」と呼ばれています。ポリフェノールは、4000種〜7000種あると言われていますが、種類によって、それぞれ作用が異なっています。 赤ワインやココアなどでよく知られていますが、他にもお茶のカテキン、チョコレートのカカオポリフェノール、フラボノイドなどがあります。そして、実は「コーヒー」にも含まれており、豆を焙煎したときの褐色や苦味のもととなっているクロロゲン酸もポリフェノールの一種。コーヒーといえばカフェインが思い浮かびますが、実はポリフェノールの方が含まれる量は多いのです。 植物が作り出すポリフェノールのような酸化から自身を守る働きがある物質は、抗酸化作用を持つということから、一般的に「抗酸化物質」と呼ばれています。 カラダも実は、“錆びている”? ポリフェノールのような「抗酸化物質」が防いでくれる「酸化」とは、金属などが“錆びる”のと同じ現象。実はふだん人間の身体の中でも酸素を吸うことによって起こっています。人間が生きていく上で、なくてはならない酸素ですが、体内に入った一部の酸素は、スーパーオキシドや過酸化水素などの、体に害を及ぼす「活性酸素」に変化。これら「活性酸素」が細胞を傷つけ、またヒトの細胞に含まれる脂質を酸化して「過酸化脂質」を作るなど、身体に様々なダメージを与えると考えられており、老化やガンの原因の一つとされています。 ポリフェノールの約半分をコーヒーから摂っているってホント? 野菜や果物より飲料、特に「コーヒー」にポリフェノールが多いことが分かりましたが、そのコーヒーがポリフェノール摂取量に大きく関わっていることもわかってきました。1日のポリフェノール摂取量を食事調査から調べた結果が右の図です。これによると、1日に摂っているポリフェノールのうち、47%はコーヒーから摂取していることが分かります。つまり、ふだんコーヒーを飲む人と飲まない人で、摂取量に大きな差が出ると考えられます。 緑茶もたくさん飲まれていますが、緑茶は100mlあたりのポリフェノール量がコーヒーの約半分しかないため、1日の総摂取量に対する割合はコーヒーよりずっと少なくなっています。また赤ワインは、ポリフェノールは多いのですが、飲まれている量が少ないため、割合は低くなっています。 ポリフェノールには、上手な摂り方がある? ポリフェノールの働きが期待できるのは、摂取後2〜3時間程度であるといわれています。ですから、野菜や果物、飲み物で、こまめに摂ることが大切です。おいしく、手軽に、たくさんポリフェノールを摂るには、コーヒーがぴったりですね。 コーヒーからポリフェノール 心だけでなく体も癒やす ボイセンベリー ポリフェノールが中皮腫抑制 エコノミークラス症候群、カボスに予防効果!? カシスやブルーベリーの果汁はインフルエンザを防ぐ!?
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