トヨタ車が「予期せず急発進する」懸念が広がっている問題について、「電子スロットル制御システムは、多くのセンサーによる幾重ものフェールセーフシステムが組み込まれている」「システム異常の場合は、アイドリングまたはエンジンストップに戻るよう制御されている」「決して加速の方向に動くものではない」とした。
佐々木副社長によれば、トヨタの電子スロットルシステムは「2系統のコンピューターがお互いを監視しあい、片方が加速の指令を出し、もう片方がそのような指令を出していないときは、減速するようになっている。要するにグーとパーだけのじゃんけん。チョキがないので、パーが必ず勝つ仕組み。パーのときは減速で、グーが加速」「アクセルペダルが踏まれたかどうかを検出するセンサーも2つある。ペダルが踏まれた信号と、踏まれていない信号があったら、これも踏まれていないほうが勝つようになっている」ので誤作動の確率は極めて低いとした。 さらにこれらは「2つの系統が同時に非常に強い電磁波や衝撃でフェールする懸念に対しては、我々が考えうる条件のもとでテストをして確認している。例えば電波障害は欧州基準の約2倍強の環境でテストして、フェールしていない」と言う。 また米国では、カローラのステアリングに多数の苦情が寄せられ、NHTSA(米道路交通安全局)が予備調査に乗り出したとの報道が出たが、これについては「NHTSAから具体的にどういう点について疑念があるのかを受け取っていない。パワーステアリングを油圧式から電動式に変えたことで、地面から入ってくる反力の伝わり方がシャープになったという苦情をたくさんいただいていることは、我々の調査でつかんでいるが、ステアリングの問題なのか、タイヤの問題なのか、要因となるファクターが多いため、調査を継続している。しかし、お客様が違和感を感じたものは不具合と認識して改善するし、安全に関わる問題ならリコールする。この問題についても速やかに行動を起こしている」とした。 ■ブレーキ・オーバーライド・システムを採用 これまでのところ、同社が発表した品質問題への対応策は「グローバル品質特別委員会」の設置。豊田社長をヘッドとする委員会で、開発から販売までのプロセスで品質管理向上を目指す組織だが、その具体的な内容が示された。 この委員会に参画するのは、各地域で任命された「チーフ・クオリティ・オフィサー」と、「各地域での市場処理を的確に判断できる人材」。改善策を話し合い、その結果を外部の専門家にチェックしてもらうことで、独善的な策になることを防ぎ、よりよいアイデアを求める。第1回は3月30日に開催される。 さらに具体的な改善策として「今後発売する全車に、順次BOS(ブレーキ・オーバーライド・システム)を装着」すること、また「EDR(イベント・データ・レコーダー)をより積極的に活用」することが発表された。 BOSは、アクセルとブレーキが同時に踏まれた際に、ブレーキの動作を優先するシステム。フロアマットによる暴走事故では、ブレーキを踏むなどの動作をしても速度が落ちなかったとされており、BOSがあれば防げたのではないかと言う議論があった。フォルクスワーゲン・グループなど、多くのメーカーがすでに採用している。 ただし、すでに販売した車両への装備は「検討中」(豊田社長)。これまで採用してこなかったBOSの搭載を決めたのは「BOSは必ずしも全知全能ではない。BOSはそもそも電子スロットルをコントロールする仕組み。電子スロットルシステムが開く側にフェールすると、BOSも意味がなくなる。しかし電子スロットルは閉める側にフェールするようになっているので、電子スロットルに関してはBOSがなくても大丈夫と考えた。 しかし、フロアマットなどでアクセルペダルが戻らないような状態なら、BOSが電子スロットルを強制的に閉じるのでBOSが有効。ペダル自身をちゃんとするとか、マットをちゃんと敷いてもらうというのが真の対策と考えてやってきたが、我々の調査能力では、すべての予期せぬ加速現象の原因などを、まだ説明できていない。それには大変な労力や時間がかかるので、お客様のご懸念を軽減するため、BOSを搭載する」(佐々木副社長)とした。 EDRはこれまでの車両にも搭載されており、警察や監督官庁から指示があれば、顧客の了解を得て、内容を読み出して原因究明に活用していた。個人情報保護の観点などから、自主的にEDRを読み出すことはしていなかったが、今後は指示なくとも読み出し「技術解析力を上げ、意思決定を早くする」と言う。