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January 18, 2010 space
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シェールガスとは?「シェールガス革命」米国が世界一のガス生産国

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シェールガスとは?全米で柔らかい岩石層「シェール層」を採掘して天然ガスを生産する新しい開発手法が「シェールガス」開発され、新型の天然ガスが大増産されはじめた。その余波が世界中に及んで、日本の総合商社もこの地殻変動に商機を見出し参戦を始めた。米国発のガス革命が世界の資源やエネルギー市場として勢力地図を塗り替えようとしている。
 

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 シェールガスの台頭は「21世紀に入って最大のエネルギー技術革新」となる可能性が出てきた。今後この勢いは、石油や天然ガスを巡る世界の資源地図を塗り替えて、エネルギー市場全体に大きな変化をもたらす力を秘めている。
 
天然ガスの中でも商業生産が難しかった「シェールガス」の開発投資が米国を中心に加速している。地下に堆積するシェール層に天然ガスが豊富に存在し、水圧破砕法(フラッキング)によって採掘が進められている。この掘削技術でガスが安価に生産できるようになったためだ。今のところ商業生産しているのは米国だけだが、それ以外にも豊富に存在するとされ、開発が進めば世界の天然ガス市場を一変させる可能性もある。
 
シェールガスとは、泥土が堆積して固まった岩の層に閉じ込められているガス。米国では膨大な量が埋蔵されていたが採掘が難しく、放置されていたが「硬い地層からガスを取り出す技術が確立されたことで、数年前から開発が一気に進んだ」。
 
「シェールガス革命」と称されるこの大増産は、米国のガス戦略を根底から覆した。米国エネルギー省の2004年版長期エネルギー見通しで、25年の輸入依存度は28%と試算されていたが、最新の09年版では30年の依存度でもわずか3%と、前代未聞の大幅見直しがなされたのだ。実際、米国で確認された天然ガスの埋蔵量はわずか3年で2割以上も増えた。
 

shalegas_02.jpg

 
 米国が世界一のガス生産国
 
 泥が水中で水平に堆積して出来た岩石である頁岩(けつがん:シェール)の隙間に貯留されるメタンガスであり、非在来型天然ガスに分類される「シェールガス」の生産量が急増したこともあり、2009年には米国がロシアを抜いて世界最大の天然ガス生産国になった。
 
米国の天然ガス相場は08年7月の100万BTU当たり13.69ドルをピークに、09年9月には2.4ドルまで急落した。この結果、米国向けLNG(液化天然ガス)の大半が必要なくなり、激安のスポットLNGとして欧州市場に流入。世界的不況によるガス需要の減少も追い打ちをかけ、世界のガス市場は大混乱に陥った。
 
長期契約で欧州にガスを輸出していたロシアの独占天然ガス企業ガスプロムは昨年、西欧向け輸出が3割減少する羽目になった。昨年に巨大なLNG基地を完成させ、今年中には世界最大のLNG輸出国となるカタールでは、当て込んでいた米国需要が吹き飛んだ。
 
ロシアからのパイプラインに依存してきた英独仏をはじめ欧州各国は、ガスプロムの呪縛から逃れようとわれ先にとシェールガス探査に着手している。
 
 注目のシェールガス、普通の天然ガスとどこが違うのか?
 
 成分は普通の天然ガスと同じだが、埋蔵場所が違う。従来の天然ガスは比較的柔らかい地層にまとまってあり掘り出しやすいが、シェールガスは深くて硬い岩盤にあり採掘が難しかった。ところがアメリカで採掘技術が進歩し、安いコストで採掘できるようになった。その結果、将来輸入が避けられないと思われていたアメリカが、今では天然ガスの生産量がロシアを抜いて世界一、輸出するほどの勢い。『シェールガス革命』と注目されている。
 
 
 シェールガス革命、世界にとってどんな影響をおよぼすのか?
 
 エネルギーをめぐって地政学的な変化をもたらす可能性。アメリカの天然ガスの生産が高まったことで、世界の需要と供給の関係や価格が変わる、あるいは石油や天然ガスの輸出で有利に立っている中東やロシアの立場が弱まる事も考えられる。というのは、シェールガスはアメリカだけでなく、中国をはじめアジアやヨーロッパにも豊富に存在すると見られているからだ。2つ目は、地球温暖化防止に役立つこと。CO2の排出は、石炭より4割も少ない。再生可能エネルギーに転換していくまでの有力な「つなぎ役」として期待される。
 
昨年末には住友商事が米国でシェールガス開発に日本企業として初めて参画することを明らかにした。他の総合商社も参入の機会をうかがっており、三菱商事は韓国ガス公社と組んで、シェールガスの開発を狙う。
 
市原主任研究員は「LNGの価格メカニズムが変革期にきている」と指摘する。今後もLNGは買い手市場が続くと見られ、最大のLNG輸入国の日本も、恩恵に浴する可能性が高まってきた。
 
 欧州の開発は2020年以降
 
 EU(欧州連合)やIEA(国際エネルギー機関)によると、欧州における非在来型天然ガスの埋蔵量は1250Tcfと見込まれており、これは、英石油メジャーBPが毎年発表している「世界エネルギー統計」で示されている、欧州の在来型天然ガスの埋蔵量102Tcfの10数倍に上る。ちなみにこれは、欧州の天然ガス消費量の60年分に相当する量だ。そして、非在来型天然ガスの内訳は、シェールガスが43%、タイトガスが34%、コールベッドメタンが23%となっている。これらは、ロシアに近いポーランドやバルト諸国に多く、また、欧州全体にも賦存(ふぞん)している。
 
泥岩に含まれる天然ガス。
 
 非在来型天然ガスの一種。在来型との違いは、貯留層が砂岩でなく、泥岩(頁岩)である点にある。泥岩の中で、特に、固く、薄片状に剥がれやすい性質をもつシェール(頁岩)に含まれることから、シェールガスと呼ばれる。
 
商業的生産は、米国でのみ行われており、1970年代末、東部のアパラチア山脈などに主として分布する古生代デボン紀の頁岩、デボニアンシェールから始まった。
 
通常の泥岩は、石油、天然ガスの根源物質であるケロジェンを含む根源岩となるが、隙間(孔隙率)も浸透率も低いため、貯留岩とはならない。しかし、デボニアンシェールは、非常に厚い泥岩層であり、長い地質時代を通じて地下深くで圧密作用を受け、微細な割れ目、フラクチャーを生じた。その結果、ある程度貯留岩としての性状を持つようになった。ただし、その孔隙率は 4%以下、浸透率も0.001〜0.002md(ミリダルシー)と低く、シェールガスの生産性は低い。
 
しかし、米国においては、タイトサンドガス他の非在来型ガスと同様、シェールガスも1980年代から税制優遇(1ドル/mcf)を受けることなり、生産量が増大した。優遇策が撤廃された1992年以降も生産は継続し、1985年の0.13から、1995年の0.28、2005年の0.83tcf(兆立方フィート)へと増大している。主生産地域も、米国東部地域から、中部イリノイ、南部テキサス、西部ニューメキシコ地域へと拡大移行している。
 
シェールガスは、米国における非在来型天然ガスの生産において、タイトサンドガス、コール・ベッド・メタンに次ぎ、第3位である。
 
シェールガスの原始埋蔵量はきわめて大きく、米国で数百から1,000、世界では数千(tcf)
との推定がある。

 
 「非在来型」の開発進む 石油・天然ガス
 
 新興国の台頭で世界のエネルギー需要が膨張する中、注目されているのが「非在来型」と呼ばれる石油・天然ガスだ。
 
砂や岩の層に閉じ込められており採掘にはコストがかかるが、北米などこれまでの産油国と比べて地政学的リスクが低いというメリットがあり、すでに日本の商社なども開発に参加している。
 
石油を含む砂の層「オイルサンド」や、岩のすき間にある「シェールガス」、石炭層にある「コールベッドメタン(CBM)」などが代表例だ。油田を掘り当てれば噴出してくる在来型と違い、圧力をかけて石油やガスを搾り出す必要がある。
 
エネルギー価格の高騰で、こうした手間とコストのかかる資源でも採算が合うようになり、開発が進んでいる。米国ではエネルギーの海外依存度引き下げに貢献するため「シェールガス革命」と呼ばれるほどだ。
 
米国はシェールガス開発で中国と技術協力することで合意した。また、中国にはCBMも豊富に埋蔵するとされ、非在来型資源が世界の権益競争を緩和したり、資源国の発言力を弱めたりする可能性も出ている。
 
 一方、日本は近海の深海底にあり、「燃える氷」と呼ばれるガス「メタンハイドレート」の採取技術確立を急いでいる。政府は商業生産のための技術的課題を探るなどしており、2015年度以降に技術を開発し官民で試験的な産出を進めたい方針だ。
 
ただ、これら非在来型資源の開発は、石油価格が乱高下すると企業の投資計画に影響を与えかねない。石油が安すぎては非在来型を開発する動機が失われ、高すぎては景気悪化を招く。
 
非在来型資源の開発は始まったばかりだが、生産が本格化すると原油相場にマイナスの影響を与え、収益が圧迫されるというジレンマも抱える。

 
 米国発「シェールガス」開発投資が加速 市場一変
 
米国の石油会社は、相次いで同国内で低コストのシェールガス生産に成功。国内需要の2割程度を賄うようになったことで天然ガスの需給が緩んだ。この結果、米国内のガス指標価格は現在、4ドル程度(100万BTU=英国熱量単位=当たり)と高騰した2008年の3分の1の水準にまで下がっている。
 
欧州や日本を含むアジアの市場では、米国の2倍程度の価格で取引されているが、「シェールガス革命」の影響はすでに表れ始めている。米国は天然ガスを輸入する必要がなくなり、「だぶついた中東産の天然ガスが欧州に向かっている」(業界関係者)。このため、ロシア国営企業ガスプロムは今年初め、ドイツ企業などとの売買契約で値下げを余儀なくされた。
 
シェールガスは米国だけでなく、ポーランドでも試掘が始まっており、中国・四川省でも商業生産が可能な規模のガス井が2本試掘されているという。
 
“革命”に乗り遅れまいと、日本の大手商社も動き始めた。三井物産が今年2月、米企業と組んでペンシルベニア州で14億ドル(約1177億円)規模のプロジェクトに乗り出すと発表。住友商事も9月に米企業と共同で、同州にあるガス田の権益約30%取得を発表した。

 
 燃料価格安定化も

 ここまで開発が進んでくると「天然ガス供給の物理的な制約は当面、考えなくてもよくなった」(東京ガスの岡本毅社長)というほどで、今後は世界のガス価格にも影響を与えそうだ。

 天然ガス取引はこれまで長期契約が主で、価格も石油に連動してきた。しかし、シェールガスの台頭により「石油連動から独自の価格体系に変わるのではないか」(大阪ガスの尾崎裕社長)との声があがり始めた。必要に応じて随時取引されるスポット価格は「長期契約価格の半分程度になることもある」という。


 
 天然ガス採掘でメタン汚染の可能性
 
 柔らかい岩石層「シェール層」を採掘して天然ガスを生産する手法が近ごろ注目されているが、それに伴う環境汚染も明らかになってきた。最新の研究では、シェールガス採掘地域の飲み水へのメタン流出を示すデータが初めて体系的に収集され、従来の想定よりはるか遠方でも着火濃度のメタンが検出されている。
 
地下に堆積するシェール層に天然ガスが豊富に存在し、水圧破砕法(フラッキング)によって採掘が進められている。水圧破砕法は、地下深くの岩石層に水を押し入れ、岩石がひび割れるまで圧力を高め、天然ガスを解放する手法である。環境面の問題が指摘されており、今回の研究もそれを裏付けている。
 
アメリカやカナダでは、過去6年間にわたるこの新技術の成功実績により、広大な天然ガスの新貯蔵庫の扉が開け放たれた。シェールガス開発が順調に進めば、2035年にはアメリカの天然ガス生産の45%を占めると見込まれている。アメリカ政府は、世界32カ国でも同様のシェール層が利用可能だとする報告を発表した。
 
メタン汚染の原因が、ガス採掘以外に存在する可能性も残されている。今回の研究では、採掘地からの距離に関わらず、サンプルを採取した井戸の大半でメタンが検出された。ただし、距離とメタン濃度には確実な相関関係が認められている。
 
流出の可能性を認める採掘業者もあり、不適切なガス井建設が原因だと主張している。ジャクソン氏は、「ガス井の掘削中、セメントのケーシングに穴が開く可能性はある。その場合は手順を改善すれば解消するだろう。また、手順は適切でも現場が無視しているケースもありうる」と話す。
 
ただし、天然ガスの漏洩にはもう一つの経路が考えられる。それは、水圧破砕法そのものがガス貯留層に亀裂を生み出し拡大している場合だ。メタンはこの亀裂から岩石層を通り抜けて上方に逃げ出すことができる。研究チームは、「可能性は少ないがゼロではない」としている。
 
採掘業者はこの可能性を否定するが、ここで問題なのは、ガス鉱床と地下水の間に存在する岩石の性質が十分に分析されていない点である。どの州政府も、ガス会社に対して地質分析の実施を義務付けていない。
 
 今回の研究で、天然ガス産業にとって良いニュースが一つだけあった。どのガス井においても、水圧破砕用の化学処理された水や、採掘後に生成される塩分を含んだ液体からメタン汚染の証拠が発見されなかったのである。
 
メタンは、飲み水に関して規制対象となる汚染物質ではない。密閉空間で窒息や爆発の原因となることは知られているが、水の色や味、臭いを変化させるわけではなく、飲料適性に影響を与えるのかどうかもわかっていない。

 
 シェールガスが日本経済に思わぬ恩恵、余剰LNGで停電回避
 
 米国で進む新型天然ガス、シェールガスの増産が思わぬ形で日本に恩恵をもたらしつつある。

東日本震災後の日本経済は原子力発電所の操業停止による電力不足が懸念要因だが、米国で天然ガスの自給率が高まった結果、カタール産の液化天然ガス(LNG)が余剰となり、日本国内の電力各社は火力発電所の稼働率引き上げで停電を回避できた側面があるようだ。

財務省の通関統計によると、2011年のLNG輸入量は前年比12%増の7853万トンと過去最高を記録した。原発稼働停止を受け、電力各社が通常なら稼働率が半分程度と低いLNG火力発電所をフル稼働させた結果だ。このため懸念されていた夏の電力不足を乗り切り、今冬も停電を回避できつつある。

<原発事故でLNG輸入1000万トン増>

電気事業連合会が17日公表した電力10社の2011年12月の発受電電力量速報によると、電源別の発受電電力量は、原発が前年比75.5%減の55億5109万キロワット時と大幅に減少した一方、火力は41.7%増の604億2423万キロワット時と大幅に増えた。LNG消費量は498万1194トンと単月で過去最高となった。

資源大手の試算によると、3月の東京電力(9501.T: 株価, ニュース, レポート)福島第一原発での事故以降のLNG輸入量は年間ベースで約1000万トン増加した。このうち半分がカタールからの調達分とみられる。

<米ガス増産であてが外れたカタール大増産>

カタールのLNG生産能力は2008年末に3000万トンだったが、2010年12月にLNGの増産工事が完了し、年産能力7700万トンと世界最大のLNG供給力を確保した。生産主体は米石油メジャーのエクソン・モービル(XOM.N: 株価, 企業情報, レポート)、ロイヤル・ダッチ・シェル(RDSa.L: 株価, 企業情報, レポート)、米コノコフィリップス(COP.N: 株価, 企業情報, レポート)などで、生産量の6─8割が日本や韓国、欧州向けの長期契約分。残りは主に米国向けにスポット(当用買い)契約需要を想定していた。
 
 しかし、米国で地中の岩盤層に含まれる新型天然ガス、シェールガスの生産が本格化し、カタール産LNGの米国向け需要が事実上なくなった。2000万トン程度の売り先がなくなった格好で、日本の原発事故によるLNG需要急増は渡りに舟だった。

長期契約が主体の日本向けLNG価格は100万BTU(英国熱量単位)当たり16ドル前後と、欧米の同8─9ドルと比べそもそも割高だが、国内電力各社は需要期の冬に向けスポット買いを加速、11月には18ドルと高値で買い集めた。

石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の石井彰特別顧問は「米国向けが余っていたから確保できた。今日本で停電が起きていないのはまさにシェールガスのおかげ」と指摘する。


 
 シェールガス採掘で地震誘発?米中部、M3以上6倍
 
 米中部で起きるマグニチュード(M)3以上の地震が、10年前に比べ6倍以上に急増していることが米地質調査所(USGS)の調べでわかった。もともと地震があまり起きない地域で、研究チームは、日本でも輸入に向けた動きがあるシェールガスなどの採掘活動などに伴う「人為的な地震」が関係しているとみている。
 
米地震学会での発表によると、米大陸中部でM3以上の地震は、1970年から00年までは平均年21回。それが01〜08年には平均29回、09年は50回、10年は87回、昨年は134回と6倍以上になっていた。昨年はコロラド州とオクラホマ州でM5を超える観測史上最大級を記録した。
 
研究チームは「自然原因とは考えにくい」とし、この地域で増えているシェールガスや石油の採掘との関連を指摘。採掘で出てくる大量の廃水を深井戸から高圧で地下に戻しているため、これが地震を誘発している可能性を挙げた。
 
メンフィス大地震研究情報センターのホールトン研究員によると、地下に戻された水が、断層の隙間に入り込んで滑りやすくなり、地震が起きやすくなったと考えられるという。

 

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