現在、民生品レベルで実現可能な3D表示技術には、「アナグリフ方式」などいくつかの方式がある(→デジモノ家電を読み解くキーワード:「3D映像」――お茶の間で楽しめる未来の映像)。しかし、3D表示を家庭用薄型テレビで実現するとなると、 2D表示兼用が求められるため、専用のレンズを必要とするレンチキュラー方式や、ディスプレイ表面にフィルタを貼り付ける必要があるXpol円偏向方式は馴染まない。
子供用学習雑誌の付録でお馴染みのアナグリフ方式も、低コストで実現可能だが色再現性に問題がある。逆にいえば、通常の2D映像が表示でき、製造コストが低く、かつ色再現性も確かでなければ、家庭で3D映像を普及させることは難しい。
それをうまく両立させた技術が「フレームシーケンシャル方式」。今回のCEATECでは、ソニーやパナソニック、シャープ、東芝など薄型テレビメーカー各社がこぞって3D対応テレビを展示しているが、いずれも同方式を採用している。
サイドバイサイド(Side By Side)方式
“side by side”の元の意味は「お互いが並んでいる」と云うこと、3Dテレビでは、右目用映像信号の1フレームと左目用映像信号の1フレームの2つのフレームをそれぞれ水平方向に1/2に圧縮し、それらを横に並べて1枚のフレームとして送信する方式です。
普通の2Dテレビでみると、そのまま縦長の映像が2個(右眼用、左眼用の各一個)横並びになってみえるだけですが、対応した3Dテレビで見ると1枚の3D映像として見えます。
ただし、この方式では水平方向の解像度が1/2となってしまうのが欠点ですが、これもメーカーの努力により改善していくものと思われます。
BS11 の3D放送もこの方式を採用していますし、ケーブルテレビのJ:COMもこの方式です。
現在利用されている3D関連用語のうち、良く耳にするのは「フレームシーケンシャル」や「サイド・バイ・サイド」でしょう。
サイドバイサイド方式は、左右両眼用の画像を1/2に圧縮したものを横に並べて1枚のフレームを形成し、再生時に伸長することにより3D映像となるもので、「BS11」などのテレビ放送で採用実績がある。水平方向の解像度が半減するデメリットはあるものの、既存のテレビ放送で利用できるのがメリットだ。
フレームシーケンシャル方式は、左右両眼用の画像を交互に表示し、再生時に専用メガネで振り分ける表示方式であり、現在の3Dテレビはほとんどこのフレームシーケンシャル方式を採用している。
フレームシーケンシャル方式の特徴
フレームシーケンシャル方式の特徴の1つは、120枚/秒(fps)というフレームレートにある。ディスプレイには左右両眼向けにそれぞれ60枚/秒・2系統の映像が交互に映し出されており、その各映像にはズレ(視差)が設けられているため、片側の視野を映さない専用メガネを通して視ると立体的に感じられるしくみだ。
解像度を落とさずにすむこともポイントだ。走査線ごとに左右両眼へ振り分ける方式(ライン・バイ・ライン)は垂直方向の解像度が半分となり、隣り合う画素ごとに両眼へ振り分ける方式(チェッカーサンプリング方式)は全体の画素数が半分となるが、フレームシーケンシャル方式は解像度を犠牲にしない。
製造コストの低さにも注目したい。フィルタを貼ったりレンズを設置したりといった装置が必要なく、平時は通常(2D)の映像を変わらず表示できる。専用メガネは必要となるが、メーカーにとっては既存の製造ラインを生かせるほうがメリットは大きい。
テレビ側が対応していれば、後述の「Blu-ray 3D」や上記のサイド・バイ・サイド放送も表示可能だ。つまり、サイド・バイ・サイドは3D映像の伝送する手法であり、一方のフレームシーケンシャルは表示するための仕組みなのです。
家庭で3Dが当たり前になる条件
民生向け3D技術に適した特性を持つフレームシーケンシャル方式だが、問題点もある。1つは、応答速度に優れた表示装置でないと左右の映像が混ざって見える現象が起こる。
もう1つは、専用のシャッターメガネが欠かせない。3Dが家庭で本格的に普及するためには、眼鏡利用者の装着感を向上させるなどの改良も必要となるでしょう。
そして最も重要な点は、コンテンツの供給。Blu-rayタイトルの充実には映画産業の協力が不可欠で、薄型テレビだけが先行しても意味がない。東芝の「Cell REGZA」では、搭載したCellプロセッサのパワーで2D映像をリアルタイムに3D化する機能を搭載していたが、これが普及価格帯で実現するにはしばらく時間がかかる。
「Blu-ray 3D」の規格では、MPEG-4 H.264/AVCを拡張した「H.264/AVC Annex H」(多視点映像符号化方式、Multiview Video Coding)をビデオコーデックに採用。人間の左右両眼にそれぞれ1080pのフルHD映像が用意されるが、2つのビデオストリームは視差によるズレが若干あるに過ぎない点に着目、右目用のストリームをキーストリームとなる左目用との差分のみにすることで、必要なデータ量を25%程度抑えることに成功している。
対応BDレコーダーが続々登場
2009年12月のBlu-ray 3D規格化完了を受け、AV機器メーカーも次々と対応を発表。まずはソニーが、「プレイステーション3」をシステムソフトウェアのアップデートで対応させることを明らかにした。BDレコーダーでは、パナソニックが「DMR-BWT3000/BWT2000/BWT1000」の3機種、シャープが「BD-HDW700/HDW70」の2機種でサポートを実現した。またBDプレーヤーとして、パナソニックから「DMP-BDT900」が登場する。
3Dが映像分野のホットキーワードとなった現在、フレームシーケンシャル方式に対応した薄型テレビとともに、各メーカーから対応製品が続々登場する。
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