国際宇宙ステーション(ISS)に5カ月半滞在した飛行士の野口聡一さん(45)らを乗せたソユーズ宇宙船が2日午前9時25分(日本時間同日午後0時25分)、カザフスタンの草原地帯に着陸した。野口さんの宇宙連続滞在は163日となり、昨年3〜7月に137日滞在した若田光一さん(46)を抜き、日本人最長を更新した。
野口さんら日米ロの3人の飛行士はこの日、帰還に先立ってISSで残る飛行士たちと握手を交わして別れを惜しんだあと、ソユーズ宇宙船に乗り込んだ。ソユーズは日本時間午前9時4分にISSから分離。11時半ごろエンジンを逆噴射して地球を回る軌道から離れ、大気圏に再突入した。
ソユーズ宇宙船の帰還は、米スペースシャトルとはまったく違う「落下傘方式」。シャトルはグライダーのように滑空し、車輪で滑走路に着陸するが、ソユーズは3人乗りの小型カプセルでカザフスタンの草原地帯に舞い降りる。 着陸の約3時間前にISSを離脱。帰還に不要な部分を切り離して廃棄した後、カプセルで大気圏に再突入する。高度約10キロでパラシュートを開き、地表まで80センチに迫った着陸2秒前に逆噴射し、衝撃を緩和して軟着陸する。 カプセルは通常、空気抵抗を大きくして徐々に減速するように姿勢制御され、緩やかな角度で降下していく。だが装置の不具合が起きると「弾道モード」という無制御状態に陥り、垂直に近い角度で急降下する。 その場合、降下中の加速度は通常の約2倍となり、飛行士は地表の重力加速度の最大13倍という過酷な状況に耐えなくてはならない。逆噴射に失敗したり、強風などの影響で機体が傾いて着地した場合、衝撃が増し負傷する恐れもある。 ソユーズで起きた過去2回の死亡事故は、いずれも帰還時に起きた。1人が搭乗した1967年の1号機は、パラシュートが開かず地上に激突。71年にはカプセル内の空気が漏れて3人が窒息死した。 ただ、再発防止策や機体の改良で死亡事故はその後の約40年間、起きていない。2003年以降、3回起きた弾道モードもすでに原因が判明し対策済みで、宇宙関係者の間では「シャトルより安心感がある」との声も聞かれる。 野口さんは23日の記者会見で「ソユーズは長い歴史があり、安全性は高い。少し異常があっても、多重のバックアップシステムが備わっている。帰還への不安はない」と語った。 着陸は日本時間6月2日午後0時半ごろの予定。カザフスタンでは、帰還した飛行士に本人の似顔絵を描いた人形や民族衣装を贈呈してねぎらう習慣があり、米国とはひと味違う伝統的な歓迎行事が野口さんを待っている。