私的録画補償金管理協会(SARVH)は21日に開いた理事会において、東芝を相手取り、アナログチューナー非搭載DVDレコーダーについても私的録画補償金を徴収・納付するよう求めて、訴訟を起こすことを決議した。しかし、この保証金は私的録画により損失するだろうと想定した録画複製による損失を補い、権利者に支払うものであり、私的録画により損失がないコピーガードされた機器からも徴収する価値が本当にあるのだろうか?
デジタル放送については著作権保護技術(ダビング10)により複製が制限されている。 アナログ放送のように録画・複製が無制限に行えるわけではないため、メーカー側は、アナログチューナーを搭載しないデジタル専用録画機は補償金の課金対象でにはならないとの主張だ。 SARVHでは4月以降、デジタル専用録画機への補償金の課金をめぐって、東芝と数回にわたって話し合いを行ってきたが、平行線をたどってきたという。さらに9月に入って、文化庁著作権課が「デジタル専用録画機も補償金の対象になる」との見解を示した後になっても、東芝側は、課金対象とすることについて「疑義がある」との回答を繰り返したため、補償金徴収にあたってのメーカーの協力義務を怠っていると判断。法的手段をとることにした。 東芝は、2月に発売したデジタル専用録画機2機種において補償金を上乗せずに販売。2008年10月から2009年3月までの半年間に徴収した補償金の納付期限は9月末だったが、東芝は2月から3月までに販売したデジタル専用録画機の補償金を納付しなかった。「コピー制御を行えるデジタル専用のDVDレコーダーを対象機器とするかどうかについては結論が出ていない。この問題が明確になるまでは、消費者から徴収できない」(東芝)。
デジタル専用録画機では、パナソニックが5月に発売した製品について、補償金を上乗せせずに販売していることが明らかになっている。2009年4月から9月までの半年間に徴収した補償金の納付期限は、2010年3月末となる。SARVHではパナソニックとの話し合いを続けていく考えだが、もし協力を得られないとなれば、東芝と同様に訴訟に踏み切ることになる。
補償金の課金対象であることが明確な従来のアナログチューナー搭載機については、東芝でも補償金を徴収・納付しているという。
SARVHによると、録画機における補償金は、2008年度で合計14億4000万円。販売台数で割った単純平均で、1台あたり約400円を、録画機の補償金として消費者が支払っていることになる。 私的録音録画補償金は、家庭内など私的利用でテレビ放送をデジタル録画・複製することにより、権利者が被る経済的不利益を補償するための制度。録画機器や DVDなどの媒体について一定の割合で補償金を課し、著作権者に還元する。補償金は、課金対象となる機器・媒体のメーカーが商品の価格に上乗せして販売し、消費者から徴収。メーカー側の業界団体を通じてSARVHに納付し、SARVHが権利者に分配する仕組みだ。メーカーは、補償金を徴収・納付する協力義務があるとされている ■私的録画補償金管理協会 http://www.sarvh.or.jp/