モーニング・グローリー(Morning Glory Cloud)とは朝方を中心に現れる、巨大なロール状の雲の帯のことである。 オーストラリア北部のカーペンタリア湾付近で最もよく観測され、他にはアメリカ中部、イギリス海峡、ドイツのベルリン周辺、ロシア東部、オーストラリアの海岸部などで観測される。またメキシコのコルテス海、大西洋のセーブル島、キンバリー地方(西オーストラリア州の北東内陸部)、アラビア海などでも類似の現象が稀に観測される。最もよく観測される場所はクイーンズランド州のバークタウン(Burketown)とされる。この雲を発生させる気流に乗ることができるため、グライダー乗りにとっては人気スポットとなっている。
モーニング・グローリーの雲は高度1〜2kmにでき長さは最大1,000kmに達し、最大で60m/sに達する速いスピードで移動する。スコールと呼ばれる強い風が吹き低い高度に激しいウインドシアができるため、この雲の通過時には地上でも短時間で大きく気圧が変動する。雲の帯の進行方向前面では強い上昇気流、後面では下降気流があって鉛直方向に激しく回転している。この気流を波と考えると、山が1つしかない孤立波と言える。
1. ヨーク岬半島を通過する海風前線によるもの。海風前線は陸風前線とも呼ばれ、海風と陸風が衝突してできる前線でこの前線によりメソスケールの循環が発生して雲ができるとされる。 2. オーストラリア北部の高気圧とオーストラリア中央部を南北に横切る前線帯という、大規模な現象。
地元では発生の際に湿度が高くなり、前日には強い海風が吹いていたことが多いとされている。
こういったことから、以下のようなメカニズムが考えられる。
ヨーク岬半島は広大な広さを持ち東岸と西岸の両方で海風前線と上昇気流、それに伴う雲の帯が発達する。昼に発生した2つの海風前線は前進してヨーク岬半島中央部で1つになる。そして、夜になるとこの気流は冷えて下降してくる。すると、空気の成層が逆転する逆転層(接地逆転層)が発生する。
逆転層では上の空気よりも下の空気のほうが密度が高いため下降気流から水平に広がった冷たい気流は逆転層の下を進み、ヨーク岬半島からカーペンタリア湾に向かって西向きに列を成して進む。この気流はやがて周りの空気と衝突して上昇し、上昇した空気は上空で東向きに戻ってやがて下降し渦ができる。
この渦では上昇気流の部分で断熱冷却により雲が発生し、下降気流の部分では雲が蒸発して消えていく。雲は常に渦の先端にある。
この渦は夜遅くに発生し、気温が最も低くなる早朝は湿度が高くなって雲を発生させやすくなる。そして昼になって地上の気温が上がり、逆転層が解消されると消える。
以上のメカニズムが、最も一般的な成因と考えられている。 モーニング・グローリー (気象現象) 提供: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』