ディープウォーターホライズンは技術の粋を集めた最新の石油リグとされ、つい数ヶ月前には、史上最も深い油井を採掘したとして話題を集めていた。
現在、この石油リグはルイジアナ州ベニスの南東80キロのメキシコ湾の海底に沈んでいる。現在は無人潜水艇によって、石油の流出が拡大していないか、および採掘施設の残骸が近隣の石油パイプラインを損傷する可能性がないか、監視が続けられている。
生存者がいる見込みが薄れる中、沿岸警備隊は23日も行方不明となっているディープウォーターホライズンの作業員11人の捜索を続行した。海洋油田掘削会社トランスオーシャンが運用し、イギリスの大手石油会社BPが採掘権を賃貸しているこの石油リグは、20日夜(日本時間21日昼)に原因不明の爆発を起こして炎上し、現地時間22 日昼に水没した。トランスオーシャンは、原因の究明には数週間かかるだろうとしている。
現在も原油の流出が3カ所で確認されているため、写真の1基を含む“海中原油回収システム”が3基建造されている。1日あたりの原油の流出量は約21万ガロン(79万5000リットル)と推定されている。ディープウォーター・ホライズンの沈没につながった爆発の原因はわかっていない。
ディープウォーター・ホライズン原油回収ドーム
5月5日には3基のうちの最初の1基が現場へ向けて出発した。BPの広報担当者エリザベス・アシュフォード氏によると、来週前半には現場に到着し設置が完了する予定だという。この容器で流出する原油を吸い込み、海上に待機する船に吸い上げて加工処理し、陸地に運ぶ。同氏は、「当社では、流出量の最も大きい場所から流出する原油の約85%を回収できると見込んでいる」と話している。
メキシコ湾沖合で2010年4月22日に沈没した石油掘削基地ディープウォーター・ホライズンから流出を続ける原油を回収する“原油回収ドーム”の基礎部分が、油田事故対策を請け負うワイルド・ウェル・コントロールの建造作業用区画へクレーンで移動される。2010年4月26日、ルイジアナ州のポートフォーションで撮影。アメリカ沿岸警備隊によると、この容器は完成するとこの種の設備としては過去最大級という。
しかしドームによる回収が予定通りに進んでも原油の流出を完全に止めることはできない。そのためBPは、海床の下約4000メートルの地点でディープウォーター・ホライズンの主坑道からもう1本の坑道(リリーフウェル)を水平方向に掘り、原油を逃がす方法を用いることにした。
BPによるとリリーフウェル掘削の作業は5月2日に開始され、完成までに約1ヶ月を見込んでいるという。完成すれば、ディープウォーター・ホライズンからの原油流出は完全に止まる見通しだ。
写真の原油回収ドームは「恒久的な解決策が完了するまで」一時的に原油の流出を抑える暫定措置であると、BPの広報担当者エリザベス・アシュフォード氏は話す。リリーフウェルの完成後も原油回収ドームの使用を継続するか、そして継続する場合どの程度の期間継続するかについては未定だという。
原油漏出防止で巨大なドーム型容器を沈める作業開始
米南部ルイジアナ州沖のメキシコ湾で先月20日、石油掘削基地が爆発し沈没、原油が流出した事故で、米沿岸警備隊は7日、同基地の油井に上からかぶせ原油漏出を防ぐための巨大なドーム状構造物を海中に沈める作業が始まったと発表した。
4階建て相当のこの構造物を水深約1500メートルの沈没個所まで下ろす作業は、遠隔操作式の機器を用い7日早朝から開始。同日午後の時点で、構造物は海底まで約60メートルの距離に近づき、沈没した基地へ近寄っている。
ただ、同基地を操業する国際石油資本(メジャー)の英BP社はこれほどの水深での作業は初めてとして成否は不透明と指摘。同社のトニー・ヘイワード最高経営責任者(CEO)は、過去には水深約120メートルまでの作業で成功した例があるが、1500メートルになると水圧や水温が異なり、事情が違うと説明している。
構造物を最終的にかぶせるまでには長時間掛かる見通し。沿岸警備隊当局者は数日間を要する可能性があると述べた。
BPによると、構造物で原油流出個所を覆った後、原油を海上の船に吸い上げるための作業に入る。来週初めまでにはこの作業を始めたいとしている。
同社や米政府によると、事故後、同基地からは日量約5000バレルの原油がメキシコ湾に流出。同基地では3個所で原油噴出が確認されているが、BPは1個所でパイプの封鎖に成功している。だが、小規模なパイプで、主要なパイプではないとしている。
漏出した原油はルイジアナ州沿岸の島に漂着し始め、沿岸警備隊は化学処理剤をまき油膜を除去するなどの作業に追われている。海洋の生態系や漁業への甚大な悪影響も懸念されている。
事故はルイジアナ州南東部から約80キロ離れた海域で発生。作業員11人が行方不明となったが、生存は絶望視されている。
メキシコ湾のドーム作戦、結晶沈着で中止 対応策探る
ミシシッピ州ビロクシ(CNN) 米南部ルイジアナ州の石油掘削施設爆発事故で、原油流出を巨大なドーム状構造物で止める作戦を試みている国際石油資本(メジャー)の英BP社は8日、ドームの内側に大量の結晶が沈着したため、作戦をいったん中止したことを明らかにした。
同社のサトルズ最高執行責任者(COO)によると、ガスと水が結合してできる氷状の結晶が、ドーム内に大量に蓄積している。ガスは水よりも軽いため、ドームを浮上させてしまう。また、流出した原油を船に吸い上げるためのドーム上部の穴が結晶でふさがれるという問題も発生している。「ガスが問題になる可能性は予想していたが、これほど大きな問題になるとは考えていなかった」と、サトルズ氏は話している。
作業チームは、ドームをいったん流出箇所から外し、対応策を探っているという。ドーム本体を加熱する方法や、メタノールで結晶をとかす方法、穴の詰まりをドーム内側からの流れで突破する方法などが検討されている。
メキシコ湾には日量約5000バレルの原油が流出しているとみられ、数千人の作業員やボランティアが油膜の除去作業に追われている。
原油流出を止めるBPの仰天アイデア
メキシコ湾の爆発事故から3週間。失敗を重ねた挙げ句、ゴミやロボット、干し草を使うアイデアが浮上。バカバカしすぎて逆にうまくいくかも?
4月20日に米ルイジアナ州沖のメキシコ湾で起きた、英石油メジャーBPの原油掘削施設の爆発事故。現場からの原油流出を食い止めるため、5月8日には巨大なドーム状構造物をかぶせる作業が行われたが失敗に終わった。沿岸の住民は落胆し、BPの技術担当者たちは対策に躍起になっている。
幸い、BPには複数の代替案がある。どの案も一見すると、熱病にうなされた人か徹夜続きの人が考えたように思えるが、10日の記者会見を見る限り、BPは大真面目だ。主な代替案をチェックしてみよう。
■ミニドーム案
8日に失敗したのと同じようなドーム状構造物を、原油が流出している3カ所のうち1カ所にかぶせる案だが、構造物のサイズはかなり小さめ。かぶせた構造物にたまった原油を上部についたパイプを通じて海上へくみ上げ、回収する仕組みだ。うまくいけば1週間もかからずに回収作業を始められるはずだ。
長所 8日に失敗した原因は、構造物の内部にガスと水が結合してでき氷状の結晶が形成され、原油をくみ上げる穴をふさいでしまったため。この結晶は低温下で水とガスに大きな圧力がかかると形成される。
ミニドーム案は構造物が小さいので、同様の問題が生じるリスクは低くなると技術者たちは期待している。また8日のプランでは構造物を沈めた後に原油をくみ上げるパイプを設置することになっていたが、今回はパイプを最初から設置。そこから凍結防止用のメタノールを注入して結晶の形成を防ぐ。
短所 原油の流出を一部しか食い止められない。先ごろ失敗した案で用いた構造物は、全流出量の約85%を回収できるはずだった。ミニドーム案の場合はサイズが小さいので、成功しても回収量は大幅に少ないだろう。
評価 ミニドーム案が期待通りの効果を発揮するかどうかは微妙だが、これ以上事態を悪化させる可能性は低い。たとえ原油の流出自体を食い止められず、限られた量の原油しか回収できなかったとしても、海に流出する量を少しでも減らせるなら、行う価値はある。
■ゴミ詰めこみ案
破れかぶれの対策のように、この案こそ最善の策になるかもしれない。大量のゴミを防噴装置(BOP)に注入して原油の流出を食い止め、さらに泥やコンクリートを注入して油井を完全に封印する方法だ。BPのダグ・サトルズ最高執行責任者(COO)いわく、注入するゴミはゴルフボールやタイヤ、結び目を作ったロープなど、「厳選されたもの」になるという。
長所 2週間以内に原油の流出を完全に止められるかもしれない。
短所 BPはBOPのテストをいろいろと行った結果、リスクはほとんどないと自信を見せている。だがこの案を採用したことで事態が悪化し、原油流出量がこれまで以上に増える可能性もわずかにある。11日の米上院公聴会でBPが行った説明によると、原油流出量は最大で1日6万バレル(約950万リットル)になる可能性がある(現時点では1日約80万リットルとされる)。
評価 ここは専門家の経験と知識を信じるしかない。万が一、原油がもっと流出する事態を招けば大惨事だが、この案は原油流出を完全に止める可能性を秘めている。
■ホットタップ案
この案はまだ検討中で優先順位が低いため、BPの説明も明確ではなかった。基本的には遠隔操作できるロボットを使って、原油を海上へくみ上げるパイプを海中で取りつける方法だ。
長所 原油もガスも海水に接触しないので、結晶の形成を防げる。
短所 破損した掘削パイプに新たな穴を開けることになるので、潜在的なリスクがある。
評価 この案を採用しないですむように祈ろう。ただし、遠隔操作できるロボットでも繊細で難しい作業は行えることは証明されている。5日には掘削パイプの1本を切断して弁を取り付け、原油が流出する3カ所のうち1カ所をふさぐことに成功した。
■干し草吸い取り案
最近YouTubeでは、水に混ざった状態のエンジンオイルを、わらや干し草に吸収させて取り除く方法を紹介するビデオが人気。「出演者」の男性たちは、この方法でメキシコ湾に流れ出した原油も除去できると主張する。BPは、今のところまったく関心を示していない。
長所 確かに干し草は油を吸収し、有毒な残留物を残すこともなさそう。
短所 エンジンオイルでうまくいったとしても、原油でも効果がある保証はない。原油はエンジンオイルより粘性があるから効果が期待できると、ビデオの男性たちは言う。確かに粘性はあるが、原油の成分は複雑で干し草には吸収できないかもしれない。それに干し草が自然に存在するものだからといって、環境に影響を与えないとは限らない。油を吸った大量の干し草の回収と処分はどうするのか。
評価 考え出した努力は評価する。しかしビデオで紹介している例は規模が小さすぎて参考にならない。少なくとも今のところは。
メキシコ湾原油流出、BPが噴出口に強力なフタ
ルイジアナ州沖のメキシコ湾での原油流出事故で、英石油大手BPは12日夕(日本時間13日午前)、流出を起こしている海底の噴出口に、より密閉性の高い強力なフタを取り付けた。
13日から、原油の漏れがないかどうかを調べる。成功すると、4月20日の爆発事故以来、約3か月ぶりに、流出を食い止めることになる。
新たなフタは、高さ5・5メートルで、複数のバルブなどが取り付けられている。完全に覆うことができると、このフタに取り付けられたパイプを通じ、原油回収が可能となる見込み。
BPは以前も別のフタを取り付けたが、覆いが不完全で脇から原油の流出が続いていた。
原油流出量490万バレル、3日にも油田封鎖に着手
ニューオーリンズ(CNN) 米メキシコ湾のBP油田事故で流出した原油量を調べている科学者チームは2日、これまでの流出量を約490万バレルと発表した。従来の推計では、7月15日に油田にキャップをかぶせる前までに流出した総量は300万〜520万バレルと見積もっていた。
科学者チームでは、キャップをかぶせる時点では日量5万3000バレル、流出が始まった当初は同6万2000バレルの原油が流出していたとみている。
一方BPは、油田を封鎖する「スタティック・キル」の作業が実施できるかどうか判断するため2日に予定していた試験を延期すると発表した。3日に試験とスタティック・キルの両方の作業を実施する見通しとなっている。
スタティック・キルは泥やセメントを流し込んで油井を封じるもので、この作業の前段階となる試験を2日に行う予定だった。しかし試験準備の最終段階で問題が見つかったため、延期することにしたという。
試験では油田にポンプで油を注入し、貯留層まで届くかどうかを調べる。この経過を見て、スタティック・キル実施の方法と可能性について判断する。
スタティック・キルには最大で61時間かかる見通し。その5〜7日後には最終段階となる「ボトム・キル」を実施する予定だが、もし試験がうまくいかなかった場合、スタティック・キルを飛ばしてボトム・キルに踏み切るとBPは説明している。
メキシコ湾原油流出止まる、事故後初めて
ルイジアナ州ニューオリンズ(CNN) 米メキシコ湾の原油流出事故で、国際石油資本(メジャー)の英BPは15日、原油流出を食い止めるために新たに設置したキャップの圧力テストを開始してバルブを閉めたところ、海中への流出が止まったと発表した。原油流出が止まったのは4月の事故発生以降初めてとなる。
このキャップは原油が流出した油井内の圧力を測定する作業の一環で試験的に設置されたもの。キャップのバルブをひとつずつ閉めながら流出防止システムの中の圧力を測定していく。十分な高圧が維持できれば、原油のもれが生じていないことになり、原油流出を食い止めることが可能であることを意味する。
しかし、このキャップでは長期的に原油流出を阻止することは不可能とされており、最終的に原油流出が完全に食い止められるのは、別の坑道を掘って流出を止める「救助井」 掘削作業が完了する予定の8月と見込まれている。
テスト終了後はキャップのバルブを開き、パイプで直接くみ上げた原油を海上の流出原油回収船に送り込む作業を再び開始する。
BPのサトルズ最高執行責任者(COO)はCNNに対し、原油の流出を止められたようだが、「喜ぶにはまだ早すぎるだろう」と述べている。
メキシコ湾原油流出「終わりに近い」オバマ大統領
メキシコ湾の原油流出事故に関してオバマ米大統領は4日ワシントンで演説を行い、油井の封じ込め作業が終わりに近付いていると語った。
大統領は演説で、「われわれは昨夜、『スタティック・キル』と呼ばれる封じ込め作戦がうまくいっているようだとの報告を受けた。また科学者らの今日の報告では、流出した原油の大半が分解されたか除去されたことが示された」「原油流出を食い止めるための長きにわたる戦いがようやく終わりに近付き、われわれは非常に満足している」などと述べた。
スタティック・キルは、油井に上から重い泥を流し込んで封鎖するという作業で、3日午後に開始されていた。
政府の対策を指揮するアレン元沿岸警備隊司令官は、これ以上の流出はないと自信を示す一方で、最終的な油井の封じ込めは救助井による作業が完了するまで終わらないとの認識を示した。
BPの報道担当者によると、同社は現在、1つ目の救助井の最終掘削作業を準備中で、防噴装置の試験を4日中に予定しているという。
一方、これまでの原油流出量については、科学者チームが2日、約490万バレルに達したと報告している。4日は原油流出から107日めにあたる。
内務省や米海洋大気局(NOAA)などが4日に発表した報告によると、490万バレルのうち74%は回収、分散されたか、蒸発しているが、26%は油膜やタールボールの形で海中に残っているという。報告では、残った原油の多くは海岸に漂着して回収されるか、砂などに埋まり分解されるとしている。
メキシコ湾油田、BP早くも再生産の可能性
英石油大手BPのダグ・サトルズ最高執行責任者(COO)は6日の記者会見で、大規模原油流出事故を起こしたメキシコ湾の海底油田で将来、再び原油生産に乗り出す可能性を示した。
油井封鎖のためのセメント注入がようやく成功した直後の発言で、米政府からは反発も出そうだ。
サトルズCOOは会見で、「ここにはたくさんの原油がある。いずれかの時点で、これをどうするか考えなくてはならないだろう」と語った。
BPは6日から、油井を完全封鎖するための作業井戸を掘り始め、15日ごろ根元に到達させて下部からもセメントを注入する。問題の油井はセメントで固められるため、この油田を採掘する場合は新たに別の油井が必要になる。
高濃度の原油水塊、油井近くで発見 メキシコ湾流出
米ウッズホール海洋生物学研究所などの研究チームが、メキシコ湾の原油流出が起きた油井付近で、原油成分の濃度が高い巨大な水塊(すいかい)を見つけた。微生物による分解があまり進まないまま、数カ月間残っている形跡があるという。「原油は蒸発・分解が進んでいる」などとする米政府の発表に疑問を投げかけた格好だ。
19日付米科学誌サイエンス電子版に掲載された論文によると、水塊は水深約1キロのところで長さ35キロ以上、厚さ200メートル、幅2キロに及んだ。海底からの自然の原油染み出しでは説明がつかず、海水中の酸素濃度の測定から、原油を分解する微生物の活動が、水塊内ではそれほど活発でないこともわかった。
海洋大気局(NOAA)は4日、流出原油の74%は回収されたか、自然に蒸発・分解されたと発表したが、今回見つかったような水塊が広範囲にあるとすると、原油の消失に時間がかかることになる。
チームはさらにデータの分析を進めており、チームのクリストファー・リディー氏は19日の会見で「(今後)この水塊がもっと大きい水塊のほんの一部なのかどうかがわかるかもしれない」と述べた。
一方、流出事故対策本部のアレン本部長は同日の会見で、油井にコンクリートを注入して完全封鎖する救助井の完成が予定より数週間遅れ、9月上旬以降になるとの見通しを明らかにした。油井の上部に設置されていたが、故障して原油やガスの噴出を防げなかった安全弁を取り外して交換し、事故原因の究明に役立てる作業などを行うため。