2009年のF1シーンでは、数多くの注目される出来事がありましたが、テクノロジーの試験場の意味からは、KERSと呼ばれる運動エネルギー回収システムが注目されてきました。残念ながらF1開幕から数戦の間は、お荷物扱いされるシーンが多く、昨年優勝を争ったマクラーレンやフェラーリの今季の成績が振るわない理由とまで言われてきましたが、ハンガリーGPでマクラーレンが見事に優勝したことから、改めてその効果が見直されています。
開幕戦オーストラリアGPでマクラーレン、フェラーリ、ルノーの各2台とBMWザウバーのニック・ハイドフェルドの1台の計7台がKERSを搭載したが、第3戦中国GPではフェラーリとルノーの計4台がKERS搭載を取りやめ、第4戦バーレーンGPでは再び当初の7台がKERSを使用したが、ヨーロッパラウンド開幕戦となる第5戦スペインGPではBMWザウバーとルノーがKERS非搭載となりマクラーレンとフェラーリの2チーム計4台のみの使用となった。
運動エネルギー回収システム 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 近年の原油価格の高騰や、地球温暖化問題に絡んで省エネルギー・エコロジーに関する世間の関心の高まりから、通常の自動車等と比べてもより多くの化石燃料を消費する[1]モータースポーツに対する風当たりが強まることを恐れた国際自動車連盟(FIA)が、環境保護アピールの一策として導入を発表した。また、2007年シーズンから開発コストの低減を目的に使用するエンジンにホモロゲーションが適用され、シーズン中のアップデートはおろかエンジン開発そのものがほぼ困難となったことに対し、F1に参戦している自動車メーカーの不満が高まったため、新たな技術開発の可能性を提示することで、それらメーカーの不満を抑える目的もあるとされる。 基本構造としては、いわゆる回生ブレーキを導入して電気的にエネルギーを溜める方式と、フライホイールに余剰な運動エネルギーを蓄える方式の2方式が有力とされている。 2009年のF1レギュレーションにおいては、KERSの最大出力は60kW、一周あたり発揮できるエネルギーは最大で400kJと定められており、これを馬力・時間換算すると81.6馬力のパワーアシストを一周につき6.67秒間使える計算になる[2]。また『スタートラインを通過して、再度スタートラインに到達するまでを一周とする』という解釈のため、KERSが800kJのエネルギーを貯蔵できれば 13.34秒ほぼ連続でKERSを使用することが可能である。(スタートラインの手前6.67秒の時点でKERSを発動、スタートラインを通過する直前に KERSを停止、スタートラインを通過した直後に再度KERSを発動とすることで13.34秒ほぼ連続でKERSの効果を得られる。)特に富士スピードウェイのようなホームストレートが長いサーキットでは最高速に大きく影響を及ぼすと考えられる[3]。F1関係者の間ではその安全性からKERSの2009年導入開始に対しては賛否両論があったが、予定通りKERSが使われる事になった。ただし、KERSは、義務ではないので使用するかどうかは各チームやドライバーの意思により決定できる。
このアイデアは、F1に環境技術の開発を強いるだけでなく、オーバーテイクも増加させる。追い上げているドライバーは、先行マシンに追いついたときにKERSを利用して、加速のブーストを得ることができる。もちろん追われているドライバーも防衛のために同時にKERS装置を使うことができる。したがって追い上げているドライバーの馬力面でのアドバンテージは相殺される。