メキシコや米国で豚インフルエンザ感染者が続出している問題で、インフルエンザ大流行(パンデミック)の危険性が増したことを受け、世界保健機関(WHO)のマーガレット・チャン事務局長は25日、専門家による緊急委員会の後声明を出し、「国際的な公衆衛生上の緊急事態である」と認定した。
世界保健機関(WHO)のマーガレット・チャン(陳馮富珍)事務局長は25日、豚インフルエンザの感染拡大に関し、「事態は急速に進んでおり、深刻な状況だ」との認識を示した。一方で米国とメキシコ以外での感染拡大は見られないとも指摘。今回の感染が大流行(パンデミック)をもたらすかどうかについては「可能性はあるが、実際に大流行となるかどうかは分からない」と述べた。 ウイルスの実態はまだ不明な点も多いとして、各国に対し異常な感染がみられないか検査体制を強化するよう訴えた。ただ、全体状況の分析には「あと数日かかる」と見通しを示した。一方、WHOと米疾病対策センター(CDC)は24日、米メキシコ両国の感染者から採取したウイルスの遺伝子構造が一致したと発表した。これを受けWHOは25日、専門家を集め緊急委員会を開催した。国境を越えた地域での感染が確認されたことで、関係者の間では世界的流行への懸念が深まっている。 緊急委は、今回感染が広がっているH1N1型ウイルスについて、 (1)新型かどうか (2)深刻な症状を引き起こすかどうか (3)容易に感染するかどうか 中心に検討。その上で感染拡大防止策などについて協議する。WHOは、新型インフルエンザの大流行(パンデミック)に備え、警戒レベルを6段階に分類。現在は「3」(人から人への感染が全くないか極めて限定的な段階)としているが、緊急委は、「4」(人から人への感染が増加する兆候のある段階)への引き上げが必要かどうかも話し合う。
メキシコ政府、豚インフルエンザが疑われる同国の感染者は1324人、死者は81人に増えた。 チャン事務局長は、緊急事態認定に当たり、「インフルエンザ様の症状の異常な流行や重篤な肺炎」の監視措置を徹底するよう各国に勧告した。一方、WHO緊急委は、6段階(フェーズ)からなる新型インフルエンザの警戒レベルに関しては、「臨床的、疫学的な情報が不十分」として、現行の「3」から「4」への引き上げを見送った。 世界金融危機のさなか、拙速な判断が世界経済に与える影響も考慮したと見られる。緊急委は28日再度開かれ、改めて警戒レベルの見直しを協議する。発生国のメキシコでは、カルデロン大統領が25日、当局による感染者の強制的な隔離や交通制限を可能とする「非常事態宣言」を発令した。
米NYで生徒8人、感染の可能性=メキシコに旅行−豚インフル 米ニューヨーク市クイーンズ区の私立学校の生徒の間にインフルエンザのような症状が表れ、検査の結果、8人がA型ウイルスに感染していることが確認された。豚インフルエンザの可能性があるという。市保健当局が25日、記者会見で明らかにした。 生徒らの症状は軽く、多くは快方に向かっているという。豚インフルエンザかどうか検査するため、市は疾病対策センター(CDC)にサンプルを送っており、26日にも結果が判明する。ニューヨーク・タイムズ紙は、この学校の生徒の一部が最近、メキシコに旅行したと報じていた。
「フェーズ5」へ引き上げ、最悪は「6」 新型インフルエンザの拡大を受け、世界保健機関(WHO)は29日、世界的大流行(パンデミック)が「差し迫っている」と表明、警戒水準(フェーズ)を現行の「4」から初の「5」に引き上げた。6段階のうち最悪のパンデミック「6」の1歩手前。各国政府が国際的な人の移動制限などを強化し、経済、社会の各分野に深刻な影響が広がる公算が大きいが、WHOは国際社会に強い警告を発する必要があると判断した。WHOは警戒水準を27日に「3」から「4」に引き上げたばかり。 「5」は人から人への感染が2カ国以上で起きている状態。会見に同席したフクダ事務局長補代理は「6」への早期再引き上げの可能性について「十分あり得る」と述べた。 舛添要一厚生労働相は30日、国内での発生に備え、全国の医療機関に「発熱外来」を設置する考えを表明した。 警戒水準引き上げは、WHOのマーガレット・チャン事務局長が29日深夜(日本時間30日早朝)緊急記者会見を開き発表した。 チャン事務局長は現状を大流行の「初期段階」と位置付け、パンデミックに発展すれば「人類全体が危機にさらされる」と強調した。再引き上げは、感染の中心となったメキシコに加えて米国でも「地域レベルで持続的な人から人への感染」が確認されたためだと説明、ワクチン増産の必要性を訴えた。 さらに「過去の経験から、インフルエンザは豊かな国では軽い病にとどまっても、発展途上国では高い致死率を持つ過酷な病になり得ることが分かっている」と述べ、途上国支援を求めた。渡航制限や国境閉鎖は勧告しなかった。 感染確認は29日までに北米や中米、欧州、中東、オセアニアにまたがる計10カ国に拡大。ウイルスが海や国境を越える勢いは衰えをまったくみせていない。29日には米テキサス州に滞在中のメキシコ人幼児の死亡が判明、メキシコ以外で初の死者となった。 インフルエンザの世界的流行は20世紀に3回あった。1918年発生の「スペイン風邪」では世界で約4000万人が死亡した。
「5」は人から人への感染が2カ国以上で起きている状態。会見に同席したフクダ事務局長補代理は「6」への早期再引き上げの可能性について「十分あり得る」と述べた。
舛添要一厚生労働相は30日、国内での発生に備え、全国の医療機関に「発熱外来」を設置する考えを表明した。
警戒水準引き上げは、WHOのマーガレット・チャン事務局長が29日深夜(日本時間30日早朝)緊急記者会見を開き発表した。
チャン事務局長は現状を大流行の「初期段階」と位置付け、パンデミックに発展すれば「人類全体が危機にさらされる」と強調した。再引き上げは、感染の中心となったメキシコに加えて米国でも「地域レベルで持続的な人から人への感染」が確認されたためだと説明、ワクチン増産の必要性を訴えた。
さらに「過去の経験から、インフルエンザは豊かな国では軽い病にとどまっても、発展途上国では高い致死率を持つ過酷な病になり得ることが分かっている」と述べ、途上国支援を求めた。渡航制限や国境閉鎖は勧告しなかった。
感染確認は29日までに北米や中米、欧州、中東、オセアニアにまたがる計10カ国に拡大。ウイルスが海や国境を越える勢いは衰えをまったくみせていない。29日には米テキサス州に滞在中のメキシコ人幼児の死亡が判明、メキシコ以外で初の死者となった。
インフルエンザの世界的流行は20世紀に3回あった。1918年発生の「スペイン風邪」では世界で約4000万人が死亡した。