世界に衝撃を与えたインド・タタ自動車の世界最安車「ナノ」がいよいよ動き出す。思い切った機能の絞り込みで店頭価格は1台11万ルピー(約22万円)。4月9日からの予約販売を前に人気は沸騰し、世界的な販売不振が続く自動車業界に一石を投じる可能性を秘める一方、低コストと安全性の両立など課題も抱えたまま。世界の新興国市場に超低価格車の販売競争を巻き起こす試金石となりうるか。
ナノは排気量624cc、最高時速105キロ、燃費は1リットル23・6キロ。日本の軽自動車より一回り小さく、エアコンやパワーウインドーなどの有無で3タイプ、店頭価格は約11万〜18万ルピーだ。 運転席に座ってみると、車内空間は意外にゆったり。だが、運転席手前のパネルは速度計だけの簡素な作り。座席はツルツルで硬い。1本のワイパー、運転席側だけのドアミラー、薄いボディーなど日本車に乗り慣れた感覚からすれば、やはり安っぽい。
もっとも、ナノがタタの経営にどれだけ貢献できるかは別問題だ。徹底したコスト削減のため、1台あたりの利幅は薄い。タタは「将来的には十分利益が出る」と説明しているものの、販売量を確保しない限り、収益にはつながらない。
初年度の予約受け付けは10万台。7月から納車が始まるが、工場建設の遅れなどで当初1年間の生産能力は月産3000台にとどまり、購入者は抽選で決める。当選者全員に行き渡るまで1年以上かかる見通しだ。
タタ自動車の08年10〜12月期決算は赤字に転落。2月には資金繰りが悪化して一部の部品業者への支払い遅延のトラブルも表面化した。格付け会社がタタの格付けを引き下げるなど、経営環境は「悪路」続きだ。 「いったんやると決めたら、不可能なことなど何ひとつない」。 今月23日夜、ムンバイ市内で開かれた記念イベントで、ラタン会長は数千人の聴衆を前に感慨深げに語った。昨年1月のモーターショーでお披露目した後も鉄鋼価格の高騰など幾度も壁に突き当たった。世界市場に向けたナノの挑戦はこれからが正念場だ。 Tata Motors(英文) http://www.tatamotors.com/ ニュースリリース(英文、仕様) http://tatamotors.com/our_world/press_releases.php?ID=431&action=Pull タタ自動車=1945年設立。インド大手財閥タタグループの中核企業。 インド自動車業界では民族系最大手。商用車部門はトップで国内販売シェア(市場占有率)は3分の2。90年代後半から乗用車生産に進出、98年に初の国産乗用車「インディカ」発売。04年に韓国・大宇自動車の商用車部門を買収、05年に伊フィアットと生産・販売提携を結んだ。08年には英高級車ブランド「ジャガー」「ランド・ローバー」を23億ドルで買収するなど外資提携も活発だ。