イチロー“神が降りた”決勝打、原監督「生涯忘れない」
ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の決勝、日本―韓国が23日、当地のドジャースタジアムで行われ、日本は延長10回の末に5―3で下し、連覇を達成した。
日本は3回、1死1、3塁から小笠原(巨人)の右前打で1点を先制。5回に韓国・秋信守のソロ本塁打で同点に追い付かれたが、7回、無死1、3塁から中島(西武)の左前適時打で勝ち越し、8回に岩村(レイズ)の左犠飛で加点した。
しかし、8回、好投の先発岩隈(楽天)が韓国の代打李大浩の犠飛で1点差とされると、9回にはダルビッシュ(日本ハム)が2死1、2塁から李机浩に同点適時打を許し延長戦に突入。
10回、日本は2死2、3塁の好機にイチロー(マリナーズ)がこの日4安打目となる中前適時打を放ち、2者が生還。9回に続いてマウンドに上がったダルビッシュが締めて接戦を制した。
延長十回二死二、三塁、決勝の2点適時打を放ったイチローは「苦しいところから始まって辛さがあり、辛さを超えたら心の痛みがあった。最終的に日本のファンに笑顔が届けられてよかった」と重圧から解放され、声を詰まらせた。
「僕は持ってますね。神が降りてきたという感じ。日本中のみんなが注目しているだろうと思って、自分の中で実況して、普段は結果が出ないんだけど、それで結果が出て、壁を越えたと思います」。
準決勝までの8試合では打率が2割1分1厘にとどまる不振にあえぎ、日本のファンやマスコミから「戦犯」と呼ばれたイチローではもはやなかった。イチローは決勝戦での大活躍で、6打数4安打2打点。イチローは絶好調だった。終わってみればチームメートの青木、キューバのセペダと並び、大会最多安打(12 本)を記録し、「安打製造機」の名声を再びとどろかせた。
決勝打の場面は「日本のファンの視線がものすごいことになっていると思った」と、心の中で実況中継をしながら打席に入っていたという。日の丸を持ってグラウンドを1周し「すごい気持ちよかった」と満面の笑みだった。
「球児さんに感謝」ダルビッシュ、最後にガッツ
体を折り曲げて叫び、マウンドで両手を挙げて仁王立ちした。WBC決勝でダルビッシュが最後の打者を空振り三振に。「空振りした瞬間は本当に、わけが分からなかった」。日本が連覇を決めた瞬間だった。
準決勝に続き、抑えを託された。だが9回、力んで制球を乱し、2死から同点適時打を浴びる。「やばいな、と思ったんですけど、イチローさんが打ってくれて鳥肌が立って」。まだ日本の10回の攻撃中に、ベンチ内でキャッチボール。今度は締めた。
先発3本柱の一角だが、決勝Rはストッパーに回った。「本来、僕がいる場所じゃない。球児さん(藤川)はいい気持ちじゃないと思うんですけど、それでもこういうときはこうしたらいいよと教えてくれた。球児さんに感謝します」
松坂がMVP!2大会連続
2大会連続のMVPに輝いた松坂は「僕だとは思わなかった」。今大会は3試合に登板し、3勝0敗、防御率2・45。本調子ではない試合もあったが、米大リーグで培った経験を生かした投球で試合を作った。「勝つことが重要な大会なので仕事を果たせてよかった」と話した。
松坂は今大会、3試合に登板し3勝0敗、防御率2・45で、日本の優勝に貢献した。23日の準決勝・米国戦では4回2/3を投げて勝利投手となった。2大会連続MVPに輝いた松坂は「ぼくだとは思わなかった。岩隈君にちょっと悪い気がします」と決勝戦でも好投した同僚を思いやった。だが、連覇は松坂抜きに語れない。不調でも試合をつくり、エースの重責を果たした。
「日本が元気になってくれたらと思ってやってきた。期待される重圧、盛り上がりはすごかったけど、そこから勇気とパワーをいただいた」
「すごい侍がそろった」原監督、ロスの夜空に歓喜の空中遊泳
ベンチでは原監督ら首脳陣が笑顔でハイタッチ。選手は勝利を確信したかのように沸き立っていたが、二塁ベース上でイチローの表情は険しいままだった。「普段と変わらぬ自分でいることが、僕の支えでしたから。個人的に(自分の状態が)タフな中で、これを崩すと支えきれなくなると思っていました」。
決勝では4安打を放ったが、それまでの通算打率は・211。前回大会の英雄が、負ければ敗戦の責任を背負わされる立場に追いつめられていた。「想像以上の苦しみ、つらさ、痛覚では感じない痛みを経験しました」と本人も認める。
代表招集前、会食した原監督からチームリーダーに指名されていた。練習では常に先頭に立ち続け、試合後はスポークスマンの役割も果たした。その上で「7、8割の力で期待されるプレーをしたい」と考えていたが、その理想からかけ離れた試合が続いた。
必死でもがいた姿はしかし、イチローも生身の人間だということをチームメートに感じさせ、それぞれの自立を促した。そして全員の力で勝利。ウイニングランのとき、最年長の稲葉から「チームを引っ張ってくれてありがとう」と声をかけられたイチローは、シャンパンファイトの後に仲間の手で胴上げされた。
優勝セレモニーの後、ロッカールーム内で行われたシャンパンファイトで、自然に「イチローコール」がわき上がり、胴上げされた。チーム最年長の稲葉篤紀(日本ハム)は「イチロー君が引っ張ってくれた」と話し、原監督は「あのセンター前は生涯忘れない」と最高の賛辞を送った。祝勝会でもイチローの背中に氷を詰め込むなど大活躍した。
ダル、WBC優勝が息子の誕生日プレゼントに!
2009年のWBCは侍ジャパンこと日本代表チームが韓国との手に汗握る接戦を制して優勝した。ダルビッシュ有は準決勝、決勝と抑え投手としても重責を果たして優勝に貢献した。この日3月24日はダルビッシュの息子さんの誕生日でもあった。彼が我が子と最愛の妻にメッセージをブログを通して贈っている。
2009年WBC(ワールドベースボールクラシック)は前回優勝した日本が連覇を狙い準決勝ではメージャーリーグの国アメリカと対戦して9対4と圧勝した。
この時に守護神藤川が不調のため抑えを務めたのがダルビッシュ有である。
そして決勝では宿敵韓国と今大会なんと5度目の対戦となる。1点を奪い合い一瞬たりとも目が離せない接戦で3−2と1点差で迎えた9回裏。昨日に続き抑えとして登場したダルビッシュは力投したが1点を返されて同点のまま延長戦へ突入した。
10回表にイチローの2塁打で二人が帰り5−3とした日本はダルビッシュが最終バッターを三振に討ち取り見事に優勝を飾ったのだった。
「松坂大輔がメジャーのエースなら、ダルビッシュ有は日本のエースだ」と原監督に言わせた若きエースダルビッシュは最後にドラマを見せてくれた。
その彼が自身のブログで家族、そしてファンに向けてメッセージを贈っている。
優勝したこの日3月24日は昨年、愛息子が誕生した日でもあった。
奥さんのサエコさん(女優)は息子さんを「ちびダルちゃん」とブログで紹介する事が多い。
「ちびダルちゃん」にダルビッシュパパが贈った言葉は
「かっこいいパパは見せられなかったけど、一年間最高の笑顔を見せてくれてありがとう」
だった。
決勝日が息子の誕生日とわかった時「優勝する」と直感したという。
そして妻、サエコさんへは、昨年オフに練習ばかりしていて家族サービスしなかったことを詫びて、「『オフぐらいどっか連れていってよ』とか言っていたね。でも我慢して支えてくれたから今日がある」「はっきり言って君のおかげです。本当にありがとう」と感謝の気持ちを伝えた。
ファンへの感謝も忘れない。
「皆さんの応援は海を越えて僕達に力をくれました」
「この世界一は世界中の日本人と日本を応援してくれた皆でつかんだ物だと思います」
とメッセージしている。
彼の家族やファンへ対するこの思いは、あのプレッシャーの中で投げきった精神力と無関係ではない。