日本時間11日未明に、シベリア(ロシア)の上空約800キロ・メートルで、米露の人工衛星が衝突し多数の破片が宇宙ごみとして散らばった。NORADや米航空宇宙局(NASA)では、衛星同士の衝突事故は、50年以上にわたる宇宙開拓史上初めての事故となった。NASAは、高度約400キロ・メートルを周回する国際宇宙ステーション(ISS)や、様々な衛星などへの影響を分析している。
米ロの人工衛星が衝突=シベリア上空、宇宙ごみ発生 宇宙に漂う直径10センチ以上のごみを監視している米戦略軍(NORAD)では、今回の衝突により破片約600個の発生を探知したとしている。 衝突したのは、米イリジウム社が1997年に打ち上げて運用中だった衛星電話用の通信衛星と、ロシアが93年に打ち上げて運用を停止していた通信衛星。イリジウム社は、人工衛星66基を運用して、世界デジタル衛星携帯電話サービスを展開している。AP通信によると、イ社衛星は560キロ・グラム、露衛星は1トン近い重さだった。
NASAジョンソン宇宙センター(テキサス州)で軌道上の破片監視を担当するニコラス・ジョンソン氏は、「過去の経験からして、大きな破片だけでも数百個、小さな破片はもっとあるだろう」と推測する。
宇宙ごみとなった破片の大半は、衝突した2衛星の軌道で雲のように集まって動いているが、一部はより高い軌道や低い軌道へも飛散しているとみられる。
ただ、若田光一飛行士が間もなく長期滞在に入るISSへの影響について、ジョンソン氏は「真っ先に分析したが、極端な危険はない。(若田飛行士をISSへ運ぶ)次のシャトルにも影響はないだろう」と話している。
宇宙空間はゴミだらけ、人工衛星の破片など1万個 過去には、宇宙ごみが米スペースシャトルの貨物室に当たって穴が開いたし、小石のような小さなごみでも、船外活動中の飛行士に当たれば、宇宙服が破損して大事故になりかねない。国際宇宙ステーション(ISS)に飛行士が常駐するようになったいま、宇宙ごみは人命にもかかわる切実な問題だ。 米航空宇宙局(NASA)によると、人工衛星の破片など、大きさが10センチ・メートル以上の宇宙ごみは約1万個に及ぶ。現役の衛星は約800基なので、宇宙に漂う人工物の大半はごみということになる。花田俊也・九州大准教授によると、10センチ・メートル以上のごみが絡む衝突は、5年に1回程度は起きる計算だという。 寿命が尽きた衛星がそのまま長く宇宙空間に漂うことが原因だが、大気圏に落ちてくれば燃え尽きて消滅するが、高度1000キロ・メートルの衛星なら2000年もかかる。国連は2007年2月、寿命を迎えた衛星は、燃料があるうちに大気圏に向けて軌道を変更し、ごみとして宇宙に残さないよう求めた。 10センチ・メートル以上の宇宙ごみは、地上観測で軌道を予測できる。それをもとに、米スペースシャトルは1〜2年に1回の割合で実際に回避しているし、若田光一さんが近く長期滞在するISSも、「史上最も強固な宇宙船」(NASA)とはいえ、エンジンを噴射して避難する。だが、それ以下の大きさのごみは把握できず、いわば運任せ。ISSでは、もし穴が開いたら隣の部屋に避難することになっている。 イリジウム衛星電話への米露の衛星衝突の影響を解説 海外利用を目的とした衛星携帯電話の販売・レンタルを手がける日本デジコムは、2月10日にシベリア上空790kmで発生したイリジウム衛星電話用通信衛星の衝突事故により、一部で通信しづらくなる事態が想定されると発表した。 今回の事故は、ロシアの通信衛星「Cosmos2251」と米国のイリジウム衛星が2月10日16時55分(世界標準時)に衝突。これにより両衛星が壊れ、数百もの破片が軌道上に散乱した。米航空宇宙局(NASA)によれば、現時点では国際宇宙ステーション(ISS)に対する障害の恐れはほとんどないとしている。 イリジウムは全66機の衛星で構築されているが、1機分の機能が喪失したことにより、一部地域ないしは時間帯において通信が行いにくい事態が想定される。ただ、イリジウム衛星は低軌道を高速で周回していることから、特定の地域だけで障害が続くことはないという。また、今後30日以内にスペアの衛星を打ち上げて衛星の再配置を行なうため、ユーザーに対する影響は軽微にとどまるとしている。 なお、イリジウム衛星は移動衛星システムであり、稼動中の衛星全66機が地球の周囲を高速で周回している。そのため、局部地域が半永久的に通信が不能となるわけではないとしている。