中国の通信産業を主管する工業・信息化部は1月7日、中国移動(チャイナモバイル)は中国独自開発の「TD―SCDMA」方式、中国電信集団(チャイナテレコム)はKDDIなどが採用している「CDMA2000」方式、中国聯合網絡通信集団(チャイナユニコム)はNTTドコモなどが使う「W―CDMA」方式の免許をそれぞれ取得した。
今はチャイナモバイル一人勝ちだが・・・
去年の再編を終えて3大キャリアに集約された中国通信業界だが、今のところはチャイナモバイルの一人勝ちだ。ユーザー数も財務体質も収益レベルも他の2社を圧倒している。
しかし、GSM時代にわが世の春を謳歌してきたチャイナモバイルも3Gでは全く未知数のTD-SCDMAを担うことになり、不確定要素がにわかに高まる。去年の試運用を経て北京などの大都市を中心に10都市にTD-SCDMAネットワークを構築したが、去年12月時点で1万7672という基地局数ではまだ足りないのは明らかだ。 絶好のタイミングで免許交付 「中国3G免許はいったいいつ交付されるのか」――。この極めて複雑な命題を読み解こうと、世界中の通信関係者が何度もチャレンジし、その度に予想を裏切られてきた。ただし、長らく免許交付のアキレス腱となっていたTD-SCDMAの実用化と通信キャリアの再編などの課題は2008年中にクリアされ、発表は時間の問題だったといえる。 中国の第3世代免許は数年来の懸案だった。 遅れた背景には独自技術である「TD―SCDMA」が実用化水準に達するのを待つという事情があったとされる。中国移動は北京五輪を控えた昨年4月に一部地域でTD―SCDMA方式の試験サービスを開始。今回の免許取得で実用サービスに切り替える。 今回の免許交付は満を持してのデビューともいえるが、正直なところ2009年旧正月前に正式発表されるかどうかには確信を持てなかった。しかし、急速に進行する世界同時不況が、発表のタイミングを見計ってきた中国政府の決断を後押ししたに違いない。
なぜなら、4兆元の景気対策を打ち出した中国政府にとって、3G投資は持って来いのカードだからだ。ネットワーク投資だけでも今後2年間2800億元(約4兆2000億円)が必要とされ、関連産業の投資を含めると2兆元(約30兆円)に上るともいわれている。中国経済も減速が余儀なくされているなか、3Gスタートは久々の明るいニュースといえよう。
TD-SCDMA実用化に向けた検証作業、キャリア再編の完了、そして景気対策の起爆剤としての期待されている。 3G免許は結果として、絶好なタイミングで交付されたのである。 もちろん、失敗が絶対許されないプロジェクトだけに、チャイナモバイルもネットワークの構築に血眼になっている。今年だけでもインフラに588億元(約8820億円)を投じ、6万カ所の基地局を設置するという。エリアも今の10都市から238都市へ拡大し、全国の中規模都市の70%をカバーする。それでもTD-SCDMA陣営の一番の弱みは端末で、質・量とも改善されてきたとはいわれながらも、他2規格と比べるとその貧弱さを否めない。
一方、チャイナテレコムとチャイナユニコムは、サービス開始時期ではチャイナモバイルに先行を許しているものの、すでに成熟している規格だけに追いつくのは早いと見られる。両社ともネットワークの構築とバージョンアップを急ぎ、CDMA2000とWCDMAのブランド力を最大限に生かしてチャイナモバイルからユーザーを奪い取ることを狙っている。得意の固定通信分野で培ってきた企業顧客資源を活用し、固定・携帯を統合したサービスでドル箱の法人分野も開拓する腹積もりだ。
鍵を握っているのは魅力あるソリューションの提供や投資体力、そしてブランド力の確立だ。ガリバーのチャイナモバイルに対しチャイナテレコムとチャイナユニコムが挑むという構図は今後何年間かは続くだろう。それでも3社に与えられた時間はさほど多いとはいえない。 ■10年後に世界の主導権を握れるか
世界の通信市場が頭打ちになるなかで、中国の3Gはスタートした。しかし、それはあくまでも通過点である。では、中国の通信業界はどこへ向かうのか。そこで注目すべきなのは、独自規格TD-SCDMAを背負うチャイナモバイルの動向である。なぜならチャイナモバイルはその目線をすでに4Gに向けている