ロシア政府は25日、カーナビゲーションなどに活用される位置測定システム「グローナス」の衛星3基をカザフスタンのバイコヌール宇宙基地から打ち上げた。これによりソ連崩壊後の95年に軍民両用システムとして一度は完成し、国内混乱で後継機を打ち上げられず衛星の寿命は3年間と短いのに、システムを維持できなかったが再構築し完成させた。しかし今後このシステムを維持できるのか??
今回の位置測定システム「グローナス」の衛星3基追加によりロシアの測位衛星は20基となり、地球上のほぼ全域をカバーする態勢が整った。グローナスは、米国の全地球測位システム(GPS)独占状態に風穴を開けることを狙ったもので、「一極支配」に対抗するロシアの国家戦略とも密接に結びついている。
システムの開発担当者によると、今回の打ち上げにより測位に必要な信号を受信できる範囲はロシア全域を含め、地球全体の約98%に広がる。2010年には予備を含め24基の衛星を軌道に乗せシステムを完成させる。
ロシアは米国同様、国際社会にグローナスを無料開放するが、利用者をいかに増やすかが課題だ。ロシアでもカーナビはGPSが一般的で、グローナス端末は軍用で1万5000台、民生用で2万台しか普及していない。価格とサイズでGPSに対抗できる端末の開発も遅れているからだ。
こうした中、ロシア政府はシステム普及の前面に立つ。今年8月には、航空機や船舶、列車に10年以降、グローナスか、グローナスとGPSを併用できる端末の装備を義務づける政令を出した。将来は、乗用車にも推奨する可能性がある。
また、今夏にはベネズエラやキューバを訪れたロシア政府の代表団がグローナスを売り込んだ。インド政府も関心を示している。
グローナスは冷戦期の1980年代、旧ソ連がミサイル誘導などの軍事目的で開発に着手し、ソ連崩壊後の95年に軍民両用システムとして一度は完成した。ただ、衛星の寿命は3年間と短いのに、国内混乱で後継機を打ち上げられずシステムを維持できなかった。2001年にプーチン大統領(当時)の命令で、システムの再構築が始まった。文字通り国策プロジェクトだ。
ロシアは、非常時に米国がGPSの信号を停止する可能性や、一つのシステムに依存する危険性を指摘し、グローナスをPRする構え。ナビ市場でも米国との勢力争いを仕掛ける形だが、GPSの世界支配を崩すのは容易ではなさそうだ。