イギリス・グラスゴー市が2000年、景観改善のために街路灯に導入、犯罪発生件数が減少したことで注目を集めた。日本では05年に奈良県警が導入を進めたところ、1年後に周辺の夜間の犯罪認知件数が約9%減少。その後も、北海道から沖縄県まで各地で防犯灯として取り入れられるようになった。
青色・白色複合 LED 照明が心理・生理指標に及ぼす影響 「人目を引く青色照明が、人目を避けたいと考える犯罪者の心理的観点に作用」 防犯効果があるとして街路灯に用いられるようになった「青色照明」を、鉄道会社が踏切や駅ホームに、飛び込み自殺防止の目的で導入する動きが広まっている。
実際に自殺防止に役立つかどうかは専門家の間でも意見が分かれているが、すでに青色照明を設置している鉄道会社は「それまで毎年起きていた自殺がゼロになった」などと効果に手応えを感じている。
JR西日本大阪支社踏切に青色照明を導入 飛び込み自殺防止に一役 鉄道自殺の防止に青い光が一役−。多発する飛び込み自殺などの踏切事故を防ぐため、JR西日本大阪支社(大阪市)が阪和線と関西線の32踏切に青色発光ダイオード(LED)の照明灯を試験的に設置したところ、1年経過しても死亡事故がゼロとなっていたことが9日、分かった。専門家は「青色の光は人の精神を落ち着かせる効能があるとされ、自殺防止の観点からみても非常にユニーク」と全国の鉄道でも初の試みを評価している。
同社によると、同駅では青色照明設置後、飛び込みは起きていない。
鉄道会社の中で青色照明をいち早く導入したのはJR西日本だ。車が強引に踏切を渡るケースが後を絶たず、頭を悩ませていた同社は、2006年12月以降、大阪府と和歌山県を結ぶ阪和線などの踏切計38か所に青色照明を設置。その結果、夜間の車の踏切事故がゼロになり、飛び込み自殺もなくなったという。
国土交通省の調査では、07年度に全国の鉄道で起きた飛び込み自殺(未遂含む)は640件で、前年度より約2割(106件)増えている。鉄道各社によると、飛び込み自殺が多いのは夜間だといい、JR西は青色照明による自殺防止について「一定の効果があることは間違いない」(広報担当)と自信を見せる。
防犯や自殺防止だけではない。東名高速東京インター付近では01年から、事故防止を目的に上下線1・8キロにわたって青色照明計152基を設置。「『落ち着く』『冷静』というイメージをドライバーの感性に訴えることで、安全運転を促すのが狙いの一つ」(中日本高速道路)としている。
同社が名神高速・養老サービスエリアのゴミ箱近くの照明を青色に変えたところ、家庭ゴミの不法投棄が2割以上減少したともいう。
青色照明の効果について、慶応大の鈴木恒男教授(色彩心理学)は「青色を見ると落ち着くという実験データはあるが、珍しい色だから人目につくため、犯罪や自殺を避けようという意識が働くことも考えられる。ただし、明かり一つですべて食い止められるという過大な期待は禁物」と話す。