太陽光に含まれる紫外光を当てると縮み、可視光を当てると元に戻る特殊な液晶高分子フィルム(アゾベンゼンという物質を主成分とするプラスチック)を利用し、光だけで回転する小さなモーターを、東京工業大と中国・復旦大、カナダ・マギル大の研究チームが19日までに世界で初めて開発した。
従来、光エネルギーを動力に変換するには、太陽電池で発電し、電磁モーターを動かす必要があったが、これは直接変換できるため、効率が高く、小型軽量化できるのが特徴。石化資源や原子力など、地球圏の資源に頼るよりも太陽という自然が作り出した超科学反応炉の力を利用できる太陽光発電が、実現されれば理想的な資源の活用につながる。 この論文はドイツ化学会誌に掲載された。 東工大の池田富樹教授によると、人間が行うさまざまな動作において,筋肉は必要不可欠なものであり,その動作は化学エネルギーを力学的仕事に変換することによって行われます。 人間の骨格筋は,ミオシンとアクチンと呼ばれるタンパク質からなるいくつもの繊維で構成されており,ATPをエネルギー源とした分子レベルでの小さな伸縮運動を,幾重にもわたる高分子の階層構造により大きな力へと結びつけています。生体筋肉を模倣して造られる人工筋肉には,柔軟で強靱な性質と構造を持つ高分子が最適であり,これまでに人工筋肉を目指した外部刺激に応答する高分子アクチュエーターが開発されています。 アクチュエーターの駆動源として熱や電気などの外部刺激が用いられていますが,現在のエネルギー枯渇問題の観点から,無尽蔵に存在する太陽光エネルギーを利用することが望まれています。光エネルギーを用いれば,アクチュエーターの遠隔操作が可能となり,光を照射するだけで動く光運動材料が達成できます。 単位断面積当たりのパワーは最大で人間の腕の筋肉の約10倍。小型軽量を生かして電子機器や体内埋め込み型医療機器に応用できるほか、「大型化して、晴れていれば走れる自動車を造りたい」という。 池田教授らは2003年、アゾベンゼンという物質を主成分とするプラスチックが紫外線を当てると縮み、可視光を当てると元に戻ることを発見。当初は高温でないと変形しなかったが、成分を変え、室温でも変形させることに成功した。 ■東京工業大資源化学研究所 光運動材料の設計と開発 光プラスチックモーター