北京オリンピックを目前にして、100m記録が更新され若干21歳の世界最速の男が誕生しました。陸上のリーボック・グランプリで、男子100メートルでウサイン・ボルト(21)=ジャマイカ=が9秒72の世界新記録を樹立して優勝。従来の世界記録は同じジャマイカのアサファ・パウエルが昨年9月に出した9秒74。ボルトは5月3日に世界歴代2位の9秒76をマークしていた。
このレースには昨年の世界選手権大阪大会で100メートルと200メートルを制したタイソン・ゲイ(米国)も出場し、9秒85で2位。ボルトは追い風1.7メートルの好条件下、ゲイに0秒13差をつける驚異的な記録で快勝し、北京五輪の金メダル候補に躍り出た。 昨夏の世界選手権百、二百メートルを制した世界王者のゲイを相手に、21歳のボルトが自らの力を鼓舞した。9秒72。5月にマークした自己ベストを0秒04も塗り替え、母国ジャマイカの先輩、パウエルが持つ世界記録をも0秒02更新し、世界最速の称号を手にした。 ゲイの隣のコースで走り、中盤で加速。両手を広げてゴールした。 昨年までの自己記録は10秒03。それだけに、急成長ぶりは圧巻だ。15歳332日の男子史上最年少で世界ジュニア二百メートルを制し、17歳で19秒93のジュニア世界記録も樹立した。05年世界選手権では故障に泣き、二百メートルで8位に終わったが、昨夏の世界選手権では銀メダルに輝き、再び頭角を現していた。
◇男子百メートル・世界記録の変遷◇ 9秒95 ハインズ (米 国)68年 9秒93 スミス (米 国)83年 9秒92 ルイス (米 国)88年 9秒90 バレル (米 国)91年 9秒86 ルイス (米 国)91年 9秒85 バレル (米 国)94年 9秒84 ベーリー (カナダ)96年 9秒79 グリーン (米 国)99年 9秒78 モンゴメリ (米 国)02年 9秒77 パウエル(ジャマイカ)05年 9秒74 パウエル(ジャマイカ)07年 9秒72 ボルト (ジャマイカ)08年 ※電気計時のみ、タイ記録は除く
追い風1.7メートルは好条件だったが、一方、雨で予定より1時間半近く遅れてのスタートと精神的には酷なレース。しかもフライングでスタートがやり直しになったが、ボルトは「集中することだけを心掛けた」という。「僕よりストライドがかなり大きい」と昨年の世界選手権百メートルの覇者、ゲイが評した196センチの長身を生かしたダイナミックな走りで、50メートル付近から抜け出す。ゲイも続いたが、その差を最後まで詰められなかった。ボルトは「彼は調子がよくなかったみたいだね」と完全に王者をのんでいた。