F1スーパーアグリがレースへの参戦資金も不足して、9日開幕のトルコGPへはチーム施設の搬入が認められていない。現段階では今後のレース出走も絶望的で、ドライバーの佐藤琢磨は「(主催者から)僕たちがレースできないと聞いた。何の決定もされていないのに、なぜだか分からない」と困惑している。06年にチーム代表、エンジン、ドライバーが日本関連という「夢の国産チーム」が、最大の窮地に立たされた。
2006年のチーム創設当初からチームの資金繰りに苦しみ、2007年はメインスポンサー中国系の石油関連会社のSS Unitedによる詐欺行為により、資金の支払いが行われないまま、契約が解消されるなどし、SAF1運営資金やエンジン、メンテナンス資金など親チーム的存在のホンダなどへの債務が累積していた。 スーパーアグリに技術支援や資金提供を行っているホンダF1チームのフライ最高経営責任者(CEO)が主催者に対し、スーパーアグリがトルコGPに出場しないと通知したための措置としている。
スーパーアグリが資金難でF1撤退 F1チーム、スーパーアグリの鈴木亜久里代表は6日、都内で会見し、F1シリーズから撤退することを明らかにした。9日に開幕する今季第5戦・トルコGPの出場も見送る 「昨年のシーズン初頭から、パートナーとして一緒に戦っていくはずだったSS United Group Company Limitedの契約不履行によりチームは経済的なバックボーンを失い、経営は非常に厳しい状況に追い込まれた」と苦しい台所事情を明かした。カスタマーカーに関する方向性の変化などチームをとりまく環境の変化もあり、新たなパートナー探しが難航したという。 昨季中盤から資金難に苦しむチームは今季開幕直前、英国の自動車コンサルタント企業、マグマ・グループによる買収で基本的に合意。しかし4月中旬、マグマの後ろ盾だった中東の投資グループが手を引いたことで白紙に戻り、再び資金難に苦しんでいた。 最近になって新たにドイツの自動車部品メーカー、バイグル社との提携で基本合意していたが、正式契約に至るまでには「(1週間という)時間はあまりに短く、こういう決断になった」(鈴木代表)という。 鈴木代表は「ここまでチームを支えてくれたホンダ、ブリヂストン、そしてスポンサーの皆様、いろいろな状況の中でアドバイスを頂いたF1関係者の皆様、チームが苦しい状況の中でも、モチベーションを絶やさず働いてくれたチームスタッフ、厳しい状況の中でも頑張ってくれたアンソニー、チーム立ち上げから一緒に戦いチームを引っ張ってくれた琢磨、そして、これまでSAF1を応援してくれてきた世界中のファンの皆様に最大の感謝を表したい」 とコメントした。 チームはトルコGP出場へ向け、資材を積んだトラックやモーターホームを送り出していたが、現地でサーキット入りを拒否されているという情報もある。
佐藤琢磨からのメッセージ 2008.5.8 スーパーアグリF1チームがF1から撤退したことが悲しく、残念だという以外に、いまの自分の気持ちを表す言葉は見つかりません。 チームが非常に難しい状態にあることは分かっていましたが、この件に関係しているすべての人たちが何とかして解決策を見出してくれることを心から期待していました。どんな理由があったとしても、そうならなかったことが残念で仕方ありません。 チームが抱えていたすべての問題に対しても常に希望を持ち続け、僕ができる範囲でどうしたらチームをサポートできるかということを考えてきました。 スーパーアグリは小さなチームでしたが、その志は高く、崇高なスピリットを抱いていました。2年半前にチームが動き始めたとき、リフィールドのスタッフは誰もが驚くような働き振りを見せてくれ、たったの4ヵ月でマシーンをグリッドに並べただけでなく、最初のシーズンにしてトップ10でレースにフィニッシュし、昨年は4ポイントを獲得しました。彼らは、不可能を可能にするという意味で、本物のプロフェッショナルだったと思います。 また、亜久里さんがこれまで僕たちのためにしてくれたすべてのことに、深い敬意を抱いています。物事を進めるために懸命の努力を続けてきてくれました。チームのスタッフ全員が全身全霊を傾けてきてくれたことも決して忘れることはできないし、SAF1の短い歩みのなかで彼らが達成してくれたことにも心から感謝しています。チームの初ポイントを獲得したのがたった1年前だったことがいまでは信じられませんし、それからたった1年で、そのときの喜びや興奮が落胆に転じるとは思いもよりませんでした。 これまではSAF1と共にレースすることに全力を投じてきたので、いまはまだ次に進む道がどうなるのかはわかりません。マネージャーとともに今後の可能性を探り、しかるべきときがきたら発表するつもりです。しかしながら、僕はF1から引退するつもりはまったくありません。僕は今まさに、自分自身これまでのなかで最高のドライビングができる状態にあると信じていますし、僕のこれまでのキャリアを通じて信じられないほど熱心にサポートしてきてくれた日本や世界中のファンのみなさんに、もっともっと力強いレースをお見せしたいのです。 2008年5月8日 佐藤琢磨
2008年5月8日 佐藤琢磨
アンソニー・デビッドソンがスーパーアグリF1撤退コメント スーパーアグリの撤退発表を受け、アンソニー・デビッドソンがコメント。引き続きF1でやっていきたいという決意を語った。 「シーズンのこんな早い段階でチームを失うとは誰にとっても予想外だったはず。F1は弱肉強食のスポーツだ。たくさんのチームが現れては消えていったが、小さいチームほど印象に残るもの。けれどもプライベートチームは生き残れない時代になったという象徴なのだろう」 「この時期に痛手を受けたのは苦しいが、僕はかならず戻ってみせる。ステアリングを握る自分の能力には充分自信があるんだ。未来は明るいはずだよ。だから頑張ってF1に残りたい。F1でやり残した仕事をやり遂げるために、全力を尽くしたい。僕はこここそ自分のいるべき場所だと信じている」とデビッドソンは心境を語っている。
「シーズンのこんな早い段階でチームを失うとは誰にとっても予想外だったはず。F1は弱肉強食のスポーツだ。たくさんのチームが現れては消えていったが、小さいチームほど印象に残るもの。けれどもプライベートチームは生き残れない時代になったという象徴なのだろう」
「この時期に痛手を受けたのは苦しいが、僕はかならず戻ってみせる。ステアリングを握る自分の能力には充分自信があるんだ。未来は明るいはずだよ。だから頑張ってF1に残りたい。F1でやり残した仕事をやり遂げるために、全力を尽くしたい。僕はこここそ自分のいるべき場所だと信じている」とデビッドソンは心境を語っている。
スーパーアグリF1撤退に、HONDAフライの介入認める…ヴァイゲル氏 直前までチーム救済の話し合いを続けていたとみられるヴァイグル・グループのフランツ・ヨーゼフ・ヴァイグル氏もフライによる妨害があったことを認めている。 「もう終わったことだ。政治には勝てなかったということ。残念で仕方がないよ。ニック・フライはあらゆる手を尽くしてきた。その結果、契約は成立に至らなかった」と語るヴァイグル氏。 同氏によると、今年1月ごろから一部買収に向けての話し合いが前向きにチームと行われていたのだという。 「だが残念なことに、ミスター・フライとミスター・リーチ(マグマグループ)がわれわれの間に介入してきたんだ」と語った。
「もう終わったことだ。政治には勝てなかったということ。残念で仕方がないよ。ニック・フライはあらゆる手を尽くしてきた。その結果、契約は成立に至らなかった」と語るヴァイグル氏。
同氏によると、今年1月ごろから一部買収に向けての話し合いが前向きにチームと行われていたのだという。
「だが残念なことに、ミスター・フライとミスター・リーチ(マグマグループ)がわれわれの間に介入してきたんだ」と語った。