NTTは人体通信「RedTacton(レッドタクトン)」。は12日、人の皮膚の表面などに交流電気信号を流してデータ通信を行う「人体表面電界通信システム」(人体通信)を4月にも商用化する方針を明らかにした。同システムの実用化は世界でも初めてという。個人認識用のICカードをポケットなどに入れたままドアノブを触るだけでセキュリティー認証でき、オフィス業務や日常生活の利便性向上が期待できる。
人の体を通信の一部に利用しようという発想は、1990年半ばに、マサチューセッツ工科大学(MIT)のメディアラボやIBMから提唱されました。 どういう用途を想定したものだったかというと、腕時計のように体に身につけて使う「ウェアラブルコンピュータ 」と、身の回りにある情報機器をつなぐ通信手段として利用していこうということでした。 例えば、机のパソコンに手を触れるだけで、体を通じてウェアラブルコンピュータにパソコンのデータを転送したり、冒頭のように握手するだけで、お互いのウェアラブルコンピュータのデータがやり取りできたりと、ケーブルや無線を使わないで、人間の体を利用して自由自在に様々な情報をやり取りしてしまおうというものだったのです。体を伝送路として使えば、人々が意識することなく、より簡単に、情報のスムーズなやり取りを実現出来ますよね。 そうです。まさに今注目を集めているユビキタス社会の実現に向けて、人体通信は非常に大きな役割を期待されている技術なのです。いかがですか?何となくイメージはできましたでしょうか? それでもまだイメージが良く分からない、という方もいらっしゃると思います。 そこで・・。皆さんは、20年前に公開されたSF映画「E.T」を覚えていらっしゃいますか? クライマックスで主人公のエリオット少年と、ETがお互いの指と指を着けることで情報をやり取りして気持ちを確かめ合う。人体通信の究極の姿は、E.Tのあの名場面に描かれているといっても良いかもしれません。 導入が見込まれる入退室管理システムでは、従来、カードをカードリーダーにかざす必要があったが、新システムでは、カードをポケットやかばんに入れておけば記録データが人体などの表面を伝わって受信機に送られ開錠される仕組み。
「静電気みたいに、ビリっとしない?」 人体への影響は心配いりません。電極と体の間は「絶縁体」という、電気を通さない物質によって仕切られているため、電流は流れません。この場合の電界の強さは、皆さんがTVやPCのそばにいるときや送電線の下を歩いているときよりも小さなものです。冒頭でお話した「体が触れた瞬間に体の中に電流が走ってしびれるのでは?」という心配は全くないことがお分かりいただけると思います。 「ビリっとこないのは分かったけれど、電気の服なら、満員電車の中で隣合った人に情報が漏れてしまうのでは?」 当然疑問に思われたことでしょう。でも大丈夫なんです。体の一部を使って本人認証を行う「生体認証(バイオメトリックス)」や暗号技術を組み合わせることによって、個人情報やデータが漏れたり、まして全く知らない第三者と通信をしてしまうことを防ぐことができるのです。 「でも、人の体なんかで通信といってもブロードバンドは程遠いんでしょう?」 そんな疑問もお持ちの皆さんも多いかと思いますが、何とこのレッドタクトンは、最大10Mbpsの双方向通信が可能で、文字情報はもちろんのこと、動画のやりとりなどにも十分利用できるのです。