ドイツなど欧州15カ国とポーランドやチェコなど東欧諸国との間で21日午前零時、陸路と海路での出入国審査が撤廃された。旧東西陣営の往来がパスポートなしでできるようになり、かつて両陣営を隔てた「鉄のカーテン」が名実ともに取り払われた形だ。旧東西欧州、旅券なしで往来可能に=シェンゲン協定が拡大した。
これは共通の出入国管理政策を行うシェンゲン協定が、2004年に欧州連合(EU)に加盟したポーランドやチェコのほかハンガリー、スロバキア、スロベニア、エストニア、ラトビア、リトアニア、マルタの計9カ国にも拡大されたことによるもの。来年3月30日には空港での出入国審査も撤廃される。 これまでの協定参加15か国に新たに加わったのは、ポーランドやチェコ、ハンガリー、スロバキア、スロベニア、エストニア、ラトビア、リトアニア、マルタの計9か国。 ドイツ、ポーランド、チェコ3国の国境地帯にあるドイツの町ツィタウの国境検問所で、3か国の首相らが参加して記念式典が行われる。東欧諸国との間の出入国審査がなくなることで、ドイツ内では、国境を越えた犯罪者の流入など治安面での懸念が強く、独政府は国境警備隊のパトロール強化などの対策を取る方針。 オーストリア・スロバキア国境の会場には「国境なしにメリークリスマス」と大書された幕が掲げられ、両国政府首脳ら約300人が「自由往来時代」の実現を歓迎した。オーストリアのグーゼンバウアー首相は「拡大は犯罪と不安定さでなく、平和と安定を意味する」と力説、スロバキアのフィツォ首相は「歴史的な日だ。スロバキアはEU全体の境界の警戒に責任を果たしたい」と語った。 今後、各国はEUの犯罪データなどを利用し、国境を越えた犯罪摘発にあたる。だが、オーストリアでは、民間調査会社の世論調査に国民の75%が「シェンゲン協定の拡大で犯罪が増える」と答えるなど、反発も強い。
シェンゲン協定 国境や空港での旅券審査をなくし、加盟国間を自由に移動できるようにする協定。当初の5カ国に、スペインとポルトガルが加わった95年に発効。順次、加盟国が増え、現加盟国数は15カ国。EUに加盟する27カ国のうち英国、アイルランド、ルーマニア、ブルガリア、キプロスは協定に参加していない。スイスとリヒテンシュタインは来年11月に協定に加盟する見通し。 ▽現加盟国 ポルトガル、スペイン、フランス、イタリア、ベルギー、ルクセンブルク、オランダ、ドイツ、オーストリア、スウェーデン、フィンランド、デンマーク、ギリシャ(以上EU)、ノルウェー、アイスランド(非EU) ▽新規加盟国 チェコ、エストニア、ハンガリー、リトアニア、ラトビア、マルタ、ポーランド、スロバキア、スロベニア(すべてEU)