世界最大のサンゴ礁グレートバリアリーフ(オーストラリア)のサンゴが満月とともにいっせいに産卵する仕組みを、豪州や米国などのチームが突き止めた。体内にある光センサーの一種が、満月の光を「合図」として感知しているという。19日の米科学誌サイエンスに発表した。
サンゴ礁の狂乱:満月の夜にサンゴが一斉に産卵する謎が解明 Reef Madness: Key Found to Moonlight Spawning 原始的な光受容体が、毎年春の終わりの満月の後に、月光の下で一斉に起こるサンゴの産卵を引き起こしているということが報告された。グレートバリアリーフのサンゴ、Acropora milleporaが、年に1度、真夜中に同調産卵を行う原因については、これまで謎であった。しかしOren Levyと国際研究チームが行った今回の研究から、クリプトクロムという古くから存在する青色光を感知する光受容体が関与している可能性が明らかになった。クリプトクロムは、高等動植物の概日時計の同調を調整する役割を担っている。著者らは、A. milleporaサンゴにクリプトクロム遺伝子を発見した。このサンゴのcry1遺伝子とcry2遺伝子を調べたところ、この遺伝子は光と暗闇が繰り返される露出サイクルのもとでは概日リズムを示すが、常に暗闇のときには示さないということがわかった。また、cry2遺伝子の発現は満月と共に変化した。クリプトクロムがグレートバリアリーフの同調産卵を誘発している可能性を発見したのに加え、これがサンゴで発見されたということは、光に反応する基本的な概日振動が多細胞動物の発達が開始した時点に、すでに存在していたことを証明していると著者らは書いている。
豪クインズランド大などは、サンゴにさまざまな色や強さの光を照射する実験をしたり、満月の夜のサンゴの反応を調べたりした。
その結果、新月から満月まで光が強くなるにしたがってサンゴの体内にあるセンサー役の遺伝子がじょじょに活性化し、満月に合わせて産卵の引き金を引くとわかった。
この遺伝子は5億年以上前、有害な紫外線から身を守るため原始生物の体内でできたのが起源と考えられている。いまでは昆虫から人間まで幅広い生物の体内時計の制御にかかわっている。
研究チームは「サンゴはこのセンサーで、(紫外線に近い)満月の青い光を感知し、繁殖のタイミングを合わせている」という。 ■サンゴ礁の狂乱:満月の夜にサンゴが一斉に産卵する謎が解明 ■http://www.sciencemag.jp/