1キログラムの重さ(質量)を定義する分銅「国際キログラム原器」が、パリ郊外の国際度量衡局内に厳重に保管されているにもかかわらず、なぜか0.05ミリグラム軽くなっていることが判明した。「原器」である以上、たとえ重さが変わっても、それを「1キログラム」とするのが国際単位系のルール。このままではいけないと、11月にパリに研究者が集まり、より厳密な単位の決め方を話し合う予定だ。AP通信などが伝えた。
AP通信によれば、減ったのは「指紋1個分ほど」の重さ。 原器は、化学変化を起こしにくい白金イリジウム合金で19世紀に作られ、各国に公式複製が配られている。原器や複製の重さを検証するには、原器とこれらの複製とを相互に比較する。質量の単位「キログラム(kg)」は、「一辺が10 cmの立方体の体積の、最大密度における蒸留水の質量」と定義されていましたが、1889年に直径、高さとも約39 mmの円柱形状で、白金90%、イリジウム10%の合金でできている「国際キログラム原器の質量」に置き換えられました。 これまでも、洗浄などによりごくわずか重さが変わったケースは知られていた。 国際度量衡局の物理学者リチャード・デイビス氏は、「同じ時期に同じ材料から作られ、同じ条件で保管している複製には変化がなく、納得のいく説明がつかない」と話す。 国際度量衡局に保管されている原器は、3重に鍵がかかった金庫の中にあり、ほとんど外に出されることはない。定期的に、世界各地で保管されている公式複製と比較する場合のみ、金庫の外へ出される。 「国際キログラム原器」の質量が変化したことについて、ドイツ計量標準当局のミヒャエル・ボリス研究員も、「原器が軽くなったのか、公式複製が重くなったのか、はっきりしていない」と原因をつかめない様子だ。 現在、人が作った「もの」に基づいて定義される国際単位はキログラムだけだ。長さ(1メートル)や時間(1秒)は、光速など不変の物理現象に基づいて定義されている。近年の科学技術の進歩を受け、特定の数のシリコン原子の重さなど、より厳密に重さを定義づけようとする研究が続いている。 「キログラム」の定義については現在、不純物を含まない単結晶を作りやすいケイ素(Si)を用いた、原子質量標準などが、有力な候補に挙がっている。 ■キログラム - Wikipedia