重い脳炎を起こして死亡することもある西ナイル熱の原因となるウエストナイルウイルスが、日本在来の蚊の体内でも増殖し、哺乳(ほにゅう)類に感染させる力のあることが、農林水産省系の動物衛生研究所(茨城県つくば市)の実験でわかった。日本にウイルスが侵入した場合、日本の蚊が、人間などへの感染、媒介を担う可能性が示された。9月2日から北海道で開催される日本獣医学会で発表する。
西ナイル熱は、ウエストナイルウイルスに感染した野鳥の血を吸った蚊が、人間や馬などの哺乳類を刺すことで広がる。 ウイルスはアフリカ、中東が原産だが、航空機で蚊が運ばれるなどして北米などにも広がった。厚生労働省は成田空港で、ウイルスを持った蚊の上陸を厳重警戒している。その蚊が空港周辺の鳥を刺して国内で西ナイル熱が流行する心配があるからだ。 そこで同研究所の人獣感染症研究チームは、アカイエカ、ヒトスジシマカなど日本在来の蚊を使い、ウイルスの感染実験をした。 直接、ウイルスを腹に注射した蚊と、ウイルスに感染したジュウシマツを刺させた蚊を、1〜2週間室温で飼ったところ、どちらの蚊も体内でウイルスが増殖していた。 さらに、蚊にマウスの血を吸わせたら、大半のマウスは8日以内に体の一部がマヒし、12日以内に死んだ。マウスの体内からはウイルスも見つかった。 同チームは「日本にウイルスが入れば、野外で日本の蚊が鳥類から哺乳類へ媒介させてしまう可能性が示された」と分析している。 米国では昨年、4000人以上が西ナイル熱を発症、177人が死亡。99年にニューヨークで流行したときはパニックも起きた。日本国内での感染例はないが、05年、米ロサンゼルスで蚊に刺されて感染したとみられる川崎市の男性が発症している。