中米・グアテマラ市で4日午後(日本時間5日午前)にあった国際オリンピック委員会(IOC)の総会で、2014年冬季五輪の開催地が黒海沿岸のリゾート都市、ソチ(ロシア)に決まった。初の開催地立候補で招致争いを制したソチと、10年大会招致に続く再度の立候補で苦杯を喫した平昌(ピョンチャン)(韓国)とザルツブルク(オーストリア)。開催地が発表され、3都市の関係者の表情は明暗が分かれた。
一方、総会会場には16年夏季大会招致に立候補している東京都の招致委幹部も姿を見せ、09年10月のIOC総会での「次回夏季招致レース」への影響を見据え、選定結果を見守った。 ◇3万人の市民歓喜の渦に 祝福の花火も…ソチ
ソチ中心部の劇場前広場では4日夕から約3万人の市民が集まって終夜コンサートが開かれ、IOC総会の模様を中継する大型スクリーンを見ながら決定の瞬間を待った。現地時間5日午前3時20分過ぎ、ソチでの開催決定が発表された瞬間、大きな歓声がわき起こり、上空には祝福の花火が上がった。大きなロシア国旗を振ったり「ソチ、ソチ」と連呼する人々で、広場は歓喜の渦に包まれた。 コーカサス山脈を背に黒海に面したソチは人口約40万の温暖なリゾート地。温泉もあり、ソ連時代に療養施設やスポーツ施設が整備された。夏の休暇時は多くの保養客でにぎわう。冬季五輪誘致を機に道路や施設の整備を進め、冬のスポーツ・リゾートとしても国際的に売り出す計画だ。 ロシアのテレビは「我々は勝つ」と宣言するCMを連日放映し、国民の意識を高めてきた。当選決定の模様もほぼ全テレビ局が生中継。プーチン大統領も2月に現地でスキーを披露し、今回のIOC総会には自ら乗り込み、珍しく英語でプレゼンテーションする力の入れよう。会場を含む都市整備予算120億ドルの6割を政府が出資するなど国を挙げて誘致を支援してきただけに、プーチン政権にとっても力強い朗報だ。 ◇勝利確信から一転…平昌 平昌郡庁舎前広場に集まり、大型スクリーンでIOC総会の模様を見つめていた市民約3000人からは開催地決定の瞬間、ため息とすすり泣きがもれた。平昌は人気ドラマ「冬のソナタ」の舞台。勝利を確信し「イエス! ピョンチャン!」を連呼していただけにショックは大きかった。 住民らは早朝から庁舎付近を太鼓やかねのリズムに合わせ練り歩き、勝利を祈願。太鼓をたたいた主婦、崔銀姫(チェウンヒ)さん(42)は「五輪ではボランティアで活躍したい」と抱負を語っていたが、落選後、「先のことは考えられない」と涙ぐんだ。 平昌は選手村から30分以内にすべての競技場を集中させ「世界一コンパクトな会場」をアピール。4年前にも決選投票で敗れたが、「平昌は2度泣かない」を合言葉に招致活動を続けてきた。4年前の招致失敗後も、雪の降らない東南アジアやアフリカなど36カ国約500人の学生を招き、スキーなど雪上競技の訓練を実施してきた。 ◇「16年招致と別の問題だ」東京招致委幹部 都庁第1本庁舎41階の東京オリンピック招致委員会では5日午前、職員が早くから出勤し、IOCホームページのライブ中継を見守った。決選投票でソチ市に決定したことについて、ある職員は「きん差だったので、改めて厳しいものだなと感じた」と語る。
鈴木研二・チーフディレクターは「過去の大会を見てもローテーションなどは関係なく、(16年東京五輪招致とは)別問題と考えている。これで東京招致が有利になったという認識はない。平昌市の取り組みには学ぶべきものも多く、今後の招致活動にいかしていきたい」と話した。 ◇露大統領が後押し…
プーチン大統領が国の全面的なバックアップを訴えたことで、ソチの計画がすべて可能になると判断されたのだろう。(同じアジアの)平昌に決まらなかったことで東京の16年五輪招致が有利になるとは思えない。今回の各都市の活動を見て、国の支援が非常に重要なことや、選手のための大会を意識する必要を感じた。 ◇ソチ決定に祝福… 石原都知事
NPO法人・東京オリンピック招致委員会の石原慎太郎会長(東京都知事)は5日、「(ソチ市に対し)心からお祝い申し上げます。また、招致活動に全力を挙げてこられた平昌(ピョンチャン)市並びにザルツブルク市に対し、改めて敬意を表します。2016年のオリンピックについては、東京招致の実現に向け万全を尽くしてまいります。皆様のご理解と絶大なるご支援をお願いします」とのコメントを発表した。