Appleの最高経営責任者(CEO)であるSteve Jobs氏とMicrosoftの会長であるBill Gates氏が米国時間5月30日、カリフォルニアで開催中の技術関連会議「D: All Things Digital(D5)」で75分間のジョイントセッションに臨んだ。
両社ともこの日、カリフォルニア州カールズバッド発--D5の会場において、それぞれの新製品やサービスを発表している。Microsoftはテーブル型PC「Microsoft Surface」を披露し、Appleは「Apple TV」がYouTubeのビデオに対応したことを発表している。
ジョイントセッションが行われる会場には、入りきらないほど多くの観客が押しかけた。また、イベントを映し出すスクリーンの用意された、数百ヤード先の別の会場へと、多くの人が足を運んでいる。
セッションの冒頭、Jobs氏による「Macintosh Software Dating Game」の様子を映した1983年のビデオが流れた。そこには、ソフトウェア界の有名な3人の重鎮の姿があった。Gates氏、Lotusの共同創立者でもあるMitch Kapor氏、Fred Gibbons氏だ。 このビデオの中で、青いポロシャツを着た若かりし頃のGates氏はJobs氏に向かい、MicrosoftにとってMacがいかに重要かを説いていた。Gates氏は「Microsoftは1984年に、売り上げの半分をMacintosh関連ソフトウェアから得るつもりだ」と発言している。 その後、1997年にボストンで開催されたMacworldのビデオが流れた。このMacworldでAppleはMicrosoftとの提携を発表している。Gates氏がMacworldの会場に衛星中継で参加し、会場からはブーイングが起きる様子が、今回のビデオでも映し出されている。 ビデオが終わると、Gates氏、Jobs氏、そして、カンファレスのホスト役を務めるWalt Mossberg氏とKara Swisher氏が壇上に現れた。Jobs氏は、いつもどおりの黒いタートルネックにジーンズ、テニズシューズといういでたち。一方のGates氏はボタンダウンのシャツに茶色いパンツとシューズという姿だった。 Swisher氏から両者に向けられた最初の質問は、互いの会社の最も大きな貢献は何か、というものだった。 Jobs氏は「Billは業界で最初のソフトウェア企業を作った。(Microsoftの)ビジネスモデルは、業界でとてもうまく機能することが分かった。こうした将来を誰も思い描かないうちから、Billはソフトウェアに専念してきた」と述べた。 Gates氏はまず、最近米国で話題になっている、自称Steve Jobsによる偽者のブログに触れ、その筆者は自分でないと述べた。 「僕は偽者のSteve Jobsではない」(Gates氏) Gates氏はJobs氏について、コンピュータを大衆化するという考えを追求したとして称賛し、Lisaの失敗にめげずに、Macにこだわり続けたことをたたえた。 その後、MicrosoftとAppleが密接に協力し合っていた日々のMacに話は及び、Gates氏は「Steveの最初の話では、もっと安いコンピュータが出来るはずだった。まあ、かまわないが」と述べた。 Mac対PCの広告も話題に上がり、「PC Guyは、すごいやつだ」とJobs氏が言うと、Gates氏は「母親に愛されているから」と切り返した。 「PC Guyは、何でもできる。いろいろと考察する価値がある」とJobs氏がGates氏の方を向きながら話を振った。 また、Microsoftが初期のXboxの開発において、Macをハードウェアのレファレンスとして使用していたことも明らかにされた。これは、当時のMacと同様、XboxでPowerPCファミリのチップが使われていたためだという。「それについて、宣伝したことはない」とJobs氏が笑えば、Gates氏は「Steveは遠慮深いことで有名だから」と返した。 Gates氏もJob氏も、多くの作業がブラウザ経由で処理されるようになったため、コンピュータの役割は徐々に減ってゆくという考えに反対の意を示した。Jobs氏は「コンピュータの価値はこれまでも何度も見直されてきた」と述べ、その後、これはWindowsに限らず、PC全般に関することだと付け加えている。 また両者はポータブル端末の普及や、その潜在力についても語られた。 Mossberg氏はインターネットに話題を移し、Appleが何年か前に.Macを導入したときは、個人向けのインターネットサービスが喧伝されていたが、これらは実現していないと指摘した。Jobs氏は「その考えには同意できない。近い将来、(失われた時間を)取り戻すときがくるだろう」と回答している。