開幕戦オーストラリアGPでマクラーレンの新人ルイス・ハミルトンは、F1では11年ぶりとなるデビュー戦表彰台のセンセーションを巻き起こした。応援に駆けつけていた父親のアンソニー・ハミルトン氏も、愛息の活躍に喜びを隠せない様子だった。「F1界のタイガー・ウッズ」とも呼ばれている。
イギリス出身のルイス・ハミルトンは、チームメイトで2年連続ワールドチャンピオンのフェルナンド・アロンソをスタート直後の1コーナーで交わすと、レース中盤には4周に渡って先頭に立ち、最後は3位表彰台を獲得。新人のデビュー戦としては、F1史上で最も印象的なものの中に入るだろうと言われている。 同郷の元F1ドライバーで‘無冠のチャンピオン’と称されるスターリング・モス氏は「1950年代に私がF1の世界に来て以来、彼は最高のものだよ」と、謙虚で控えめな22歳のルーキーに賛辞を送った。 レース最初の10秒間だけに焦点を当てても、ルイス・ハミルトンは1コーナーの集団に向かって横向きになりながらも、アウト側からF.アロンソを交わすなど本能的な反応を見せていた。この動きは、大胆かつ大きな自信に満ち、天性の才能にあふれるものだった。 ルイス・ハミルトンは、レース前にマクラーレンでの自分の立場はわかっていると言っていたが、今後は勝利のために戦う立場へと変わっていくだろう。しかし周囲の騒ぎをよそに、L.ハミルトン自身は、おごり高ぶることも虚勢を張ることもない様子だ。 ルイス・ハミルトンの自慢の父、アンソニー氏は元鉄道会社の従業員で、ルイス・ハミルトンの祖父はスペイン南部のグラナダから1950年代にロンドンの地下鉄で働くために移住してきた経緯を持つ。たくさんの報道陣に囲まれたアンソニー氏は、レース直後に彼の息子が何を言っていたかと尋ねられ、「彼はただ笑っていたよ。『やれるってわかった』という笑顔だったね」と誇らしげに答えていた。 アンソニー氏はさらに「彼はまだ地に足が着いている子供だし、私が一緒にいる限りはそうである続けるだろう。私はルイスに、仕事に集中するということを忘れて欲しくない。その仕事とはモーターレーシングで、ここに来るまでの13年間、彼がずっと考え続けてきたことだ。そのおかげで彼は素晴らしく成長したし、私はそれを守るためならなんでもするよ」と愛情を込めて語っている。 F1史上初の黒人ドライバー誕生を導いたマクラーレンのチーム代表、ロン・デニス氏への感謝も、アンソニー氏は忘れなかった。ルイス・ハミルトンはカートレースを始めたばかりのころ、R.デニス氏にもとに歩み寄り、その目をまっすぐに見つめ、「といつかあなたのマシンの1台をドライブしたい」話しかけたという。 アンソニー氏は「ロンは、本当に本当に幸せな男だよ。彼の人生において、おそらく最も幸せで最も誇らしい日々だろうと思う。そんな昔から13歳の子供に目にかけ、『君の中に何かが見える』と言うなんて、とんでもないことだよ。私は父親だから見えていたけど、どうやってロンは見たんだ? あの男は凄い目を持ってるんじゃないか?」と興奮気味に語っていた。