「華麗なる一族」山崎豊子作ドラマ最大の魅力、時代は”金融再編”の波が押し寄せる1960年代後半。そんな激動の時代に必死に生きる一人の男を木村拓哉が熱演。日曜日の21時は時間帯としてドラマを見ない現代の40歳代のサラリーマンの視聴者も多く、1960年、昭和40年世代に絶大な人気と話題を振りまくに究極の人間ドラマがを堪能しましょう。
ドラマの主役は、万俵家の長男鉄平(木村拓哉)とその父大介(北大路欣也)。この親子の野望と葛藤が、究極の人間ドラマとして完成しました。30年以上も前に書かれた作品ですが全く古さを感じさせません。主要登場人物が財閥一族であったり、銀行が預金量で順位を争ったりしている部分はさすがに昭和40年代の姿ですが、本書で描かれている様々な人間関係、人々の間の対立は極めて現代的。 華麗なる一族〈上・下〉 山崎 豊子 業界ランク第10位の阪神銀行頭取、万俵大介は、都市銀行再編の動きを前にして、上位銀行への吸収合併を阻止するため必死である。長女一子の夫である大蔵省主計局次長を通じ、上位銀行の経営内容を極秘裏に入手、小が大を喰う企みを画策するが、その裏で、阪神特殊鋼の専務である長男鉄平からの融資依頼をなぜか冷たく拒否する。不気味で巨大な権力機構「銀行」を徹底的に取材した力作。
華麗なる一族「第1回」(1月14日放送分) 時は1960年代後半、大阪万博の成功を呼びかけるポスターなどが数多く貼られている神戸。そんな時代に、万俵鉄平(木村拓哉)は、大いなる希望に満ちていた。 鉄平が専務を務める、阪神特殊製鋼は、その名の通り、特殊な性能を持つ鉄を作る会社。しかも、ここの所次々と新しい技術を開発し、さまざまなメーカーからの注文が相次ぐようになっていた。その鉄平の父・万俵大介(北大路欣也)は、関西有数の都市銀行のオーナー頭取。万俵家では、毎年正月を、美しい英虞湾を見渡す高台に立つ豪華な、志摩観光ホテルで過ごすことになっていた。 父・大介を中心に、大介の銀行の本店で貸付課長をしている二男の銀平(山本耕史)、すでに嫁いだ長女の一子(吹石一恵)、その長女の夫で、大蔵省主計局次長・美馬中(仲村トオル)、大学を出たばかりの二女で、現在花嫁修業中の二子(相武紗季)、彼らの母親の寧子(原田美枝子)、鉄平の妻・早苗(長谷川京子)、そしてもうひとり妖艶で聡明そうな女性がひとり。彼女の名は、高須相子(鈴木京香)。相子は、万俵家の子どもたちの家庭教師としてやってきたが、今は、万俵家の発展のためにはなくてはならない存在の女性として、この年末年始の一家の催しにも必ず参加しているのだ。 その一族は、鉄平の到着を待っていた。大介が、もう待ちきれないとばかりに痺れを切らしたところに、鉄平がやってきた。一族は、毎年恒例の記念写真を撮影した。 鉄平が遅れてきたというその重い雰囲気の通り、今年のこの会は、一族穏やかな気持ちでは望んでいなかった。それは金融再編のニュースのため。そんなニュースが押し寄せている時に、長男の鉄平は今後の阪神特殊製鋼の発展、ついては日本経済の発展のために、独自に高炉を作りたい、そのためにメインバンクである、阪神銀行からぜひ追加融資をお願いしたいと父・大介に願い出る。しかし、父・大介は、非情な決断を下す。その一件から、鉄平の人生の歯車が大きく狂い始める。
華麗なる一族「第2回」(1月21日放送分) ついに鉄平(木村拓哉)は高炉建設という夢に向かって歩き始めた。彼は建設が成就するまで、帝国製鉄による故意の供給遅延を何とか凌ごうと従業員たちを鼓舞していた。鉄平は従業員たちにも高炉建設の決定を告げたのだ。拍手と歓声で迎えてくれた従業員たちとは相反して、経理担当常務の錢高(西村雅彦)は溜息をついていた。それもそのはず、実は、メインバンクである阪神銀行からの融資の回答はいまだに届いていなかったのだ。 高炉建設の決定を聞いて何より喜んだのは、鉄平を慕っている四々彦(成宮寛貴)だ。彼は、その決定を聞いたその日に、鉄平に妹の二子(相武紗季)と付き合っていることを伝える。鉄平はその報告にとても喜んだ。万俵家という歪んだ家庭環境で育った妹が、地位や名誉に関係なく純粋に人を好きになっているということに……。 一方そのころ、父・大介(北大路欣也)にも激動の波が押し寄せつつあった。永田(津川雅彦)が大臣を担う大蔵省が金融再編の動きを急速に加速していたのだ。メガバンクが存在しない日本では海外からの代金融資本に太刀打ちできないため、12行ある都市銀行を4行か5行に纏め上げようとしていたのだ。 今まさに、大介のところに、阪神銀行の大亀専務(武田鉄矢)と芥川東京支店長(小林隆)がその、吸収合併される銀行が関西の銀行らしいという報告に来ていたのだ。危機を感じた大介は、急遽大蔵省主計局に勤務する娘婿の美馬(仲村トオル)を呼び出し、大同銀行など都市銀行預金順位5位から9位の、大蔵省門外不出の極秘文書をそろえてほしいと頼んでいた。時期を同じくして、預金量都市銀行第5位の大同銀行の三雲頭取(柳葉敏郎)は、鉄平の阪神特殊製鋼への多額融資を決定していた。
華麗なる一族「第3回」(1月28日放送分) 阪神銀行から高炉建設の融資に関する連絡が来た。何とその結果は、50%の融資のうち10%を減額するというのだ。驚いた鉄平(木村拓哉)は、思わず飛び出しそのまま車のハンドルを握った。 向かった先は、阪神銀行頭取室。応対したのは専務の大亀(武田鉄矢)。大亀が静止するのも聞かず頭取室のドアを開けた鉄平であったが、そこに、父・大介(北大路欣也)の姿はなかった。その足で鉄平は大介の家へと向かう。はたして、そこには弟・銀平(山本耕史)の見合いの準備を進める大介と相子(鈴木京香)がいた。 阪神銀行の役員はみな融資に賛成していたにもかかわらず、減額となったことを今一度考え直してほしいと願い出る鉄平であったが、その話に割って入ったのは相子であった。親子の話に水を差された鉄平は、相子を怒鳴り散らす。険悪なムードがまんえんする万俵家のリビングルームの雰囲気を何とか取り繕ったのは、家に帰ってきた銀平であった。父と争っても無駄だと説き伏せる銀平。諦めた鉄平はひとまずその場を去った。 翌日、瀟洒(しょうしゃ)なホテルで、銀平の見合いが行われた。見合い相手は大阪重工の社長令嬢、安田万樹子。見つけてきたのは勿論相子だ。家柄、資産、どれをとっても万俵家に嫁ぐにふさわしい女性であった。 満額融資が受けられず高炉建設の資金が足りなくなった鉄平は、阪神特殊製鋼の経理担当常務錢高(西村雅彦)と共に、東京へと向かった。彼は自分の熱意を伝えれば、高炉建設のための融資に賛同してくれる銀行があるはずだと、自らの足で銀行回りを始めたのだ。ところがその融資も思うように行かなかった。そんな折、次期総裁候補との声も高い義父・大川一郎(西田敏行)が鉄平に助け舟を向ける。
華麗なる一族「第4回」(2月4日放送分) 万俵鉄平(木村拓哉)の会社、阪神特殊製鋼が開発した新素材を、アメリカンベアリング社が、高く評価し、全米自動車業界へ大々的に展開させたいと申し出てきた。それは世界最大の鉄鋼国アメリカへ進出するという、日本鉄鋼業界の悲願を実現するということであった。 同じころ、金融再編を急ぐ大蔵省では、連日のように都市銀行同士の合併案が討議されていた。銀行の生き残りをかけて、小が大を食う合併をもくろんでいた阪神銀行の頭取・万俵大介(北大路欣也)は、三栄銀行の吸収合併を画策していたが、有力取引先への根回しは済んでいるものの、決め手となる弱点を掴め切れずにいた。 このままでは、阪神銀行より大きな三栄銀行に飲み込まれてしまうだけだと案じている大介は、その弱点探しを徹底させる。そんな大切な時期に、もうひとつ大切な行事が万俵家一同を待ち受けていた。銀平(山本耕史)と安田万樹子(山田優)の結婚式だ。その披露宴会場は、さながら政財界のパーティーのようであった。大蔵大臣の永田格(津川雅彦)、元大蔵大臣の大川一郎(西田敏行)、そして、その二人の出席を微笑んでみているのは、新婦の父・大阪重工社長の安田大左衛門(石田太郎)であった。 彼は大介に、時期総理候補二人とパイプを築いている万俵家と親せきになることで鼻が高いと喜んだ後、大介が合併先として目をつけている三栄銀行のうわさ話を話し始めたのだ。それは、三栄銀行から政界への闇献金の話であった。しかも、その闇献金を受け取っているのは、鉄平の義父で次期総裁候補の大川一郎だということが発覚する。ところが、順調に見えた鉄平の会社にも、急を告げるニュースが飛び込んでくる。
華麗なる一族「第5回」(2月11日放送分) 大川一郎(西田敏行)の闇献金記事に憤怒する鉄平(木村拓哉)のことを案じて、大同銀行頭取・三雲(柳葉敏郎)が訪れてきていた。三雲は、ただ我武者羅に働き、アメリカ進出と高炉建設を成功させることが、大川の舅への一番の励ましだと信じている鉄平にあるうわさを伝える。 闇献金の話は政治の世界にはいろいろな意味があるのかもしれないが、銀行家の間では別の意味があると言う。三栄銀行は、銀行初の合併を水面下で進めていて、どの銀行も金融再編で生き残るために、一番最初の合併を狙っている。その一番手とうわさされる三栄銀行の合併を阻止しようと、どこかの銀行が黒いうわさを流したのではないかというのだ。勿論真実は闇に包まれたままだが、鉄平には、考えを巡らすことがあった。 ところが、病床の大川は、諦めていなかった。自分を陥れた人物を徹底的に探し出そうとしていたのだ。そんな父を案じる早苗(長谷川京子)は治療に専念してと頼むのだが、大川は、反して鉄平のことを案じるのであった。そんな折、大蔵省は三栄銀行と平和銀行の合併に代わる新たな合併を画策していた。 その中には何と阪神銀行も含まれているという事実を、伝えるべく、美馬中(仲村トオル)は自宅に大介(北大路欣也)を招いていた。その際、大川のうわさをリークしたのが阪神銀行だということが漏れていないか、と確認する話をしているのを、長女の一子(吹石一恵)が聞いてしまう。ところが、志半ばにして、大川は息を引き取る。
華麗なる一族「第6回」(2月18日放送分) 鉄平(木村拓哉)が業務提携を取り付けて来ていたアメリカンベアリング社が吸収合併されたというニュースが飛び込んできた。阪神特殊製鋼の錢高(西村雅彦)の報告を受けた大亀(武田鉄矢)は、鉄平が追加融資の依頼にやってくるということを大介(北大路欣也)に連絡するが、大介は、小が大を食う合併を急いでいるこの時期にそんなことに手を貸す余裕などないと断る。 そんな鉄平の所に大同銀行の三雲頭取(柳葉敏郎)が訪れる。彼は、追加融資を前向きに検討すると約束するが、メインバンクの阪神銀行の追加融資がいまだに取り付けられていないことに驚く。その三雲をさらに驚かせたのが、鉄平の口から出た、大川一郎代議士(西田敏行)の闇献金の記事をリークしたのは阪神銀行であるという事実であった。三雲はその足で、大介の元へ向かった。阪神銀行が今後阪神特殊製鋼へ追加融資をするのかどうかを確認するためである。 ところが、大介は、鉄平には強い意志と才能があると力説する三雲に、小さい蜘蛛が大きな虫に襲い掛かる光景を重ねていた。そう、三雲との会談を終えた大介は、大亀に大同銀行の内情を洗うよう命じたのだ。いよいよ、大介の標的は大同銀行となるのか?三雲の尽力もあり、阪神銀行から20億円の追加融資が決定した鉄平であったが、大川の死でもっとも恐れていた事態が勃発する。帝国製鉄所長の和島(矢島健一)が、今後の銑鉄供給契約を更新しないと告げてきたのだ。
華麗なる一族「第7回」(2月25日放送分) 珍しく銀平(山本耕史)が鉄平(木村拓哉)の会社にやってきた。建設中の高炉を見上げて、兄の夢に感動している様子だ。そんな銀平を鉄平が昼食に誘う。そこで、鉄平は鉄に対する夢を熱く語っていた。そこへ、今回の高炉建設では甚大な協力を約束してくれた人足頭(六平直政)がやってきた。鉄平は彼に銀平を弟だと紹介すると、「それなら、弟に格好良いところを見せないと」と人足たちに声をかけられ、「今日も若の奢りだぞ!」と大声を張り上げる。対する鉄平は、今日はダメとじゃんけん勝負をすることに……。結果は鉄平の勝ち! がっかりする人足たちであったが、結局はすでに鉄平が払っていて、格好良いところを見せることとなった。 さまざまな仲間をどんどん増やす鉄平に銀平が感心しているころ、阪神銀行では親密な会談が行われていた。その会談のメンバーは、阪神銀行頭取で鉄平の父・大介(北大路欣也)、阪神銀行専務の大亀(武田鉄矢)、帝国製鉄所長の和島(矢島健一)。彼らは、鉄平の高炉がどんな突貫工事を行おうとも完成しないよう、帝国製鉄の新規工事に作業員を引き抜くという相談をしていたのだ。 大介は、自らの銀行生き残りのために、息子の会社を潰すことを画策していたのだ。その上、大同銀行の綿貫専務(笑福亭鶴瓶)に、阪神銀行との合併話を持ち込んでいたのだ。そんな事態と時期を同じくして、相子(鈴木京香)の思惑に乗せられた、万俵家二女の二子(相武紗季)は、鉄平のためを思って、時の総理大臣・佐橋の甥、佐橋和也(猪野学)との見合いに臨んでいた。
華麗なる一族「第8回」(3月4日放送分) 鉄平(木村拓哉)の心に、亡くなったつる乃屋女将・鶴田志乃(多岐川裕美)の手紙が深く残っていた。あなたの父親は万俵敬介だというひとことが……。それは、祖父の生前の様子から、女将が憶測したことに過ぎないのだが、一応病院で敬介の血液型などを確認してみる鉄平。結果、敬介の子でも、大介の子でもある可能性があることだけがわかる。結局心が晴れない鉄平。そんな中、阪神特殊製鋼に融資していた銀行による事故処理委員会が招集される。 会議の席上、財務調査の結果事故発生以前に、20億円もの資金が少なかったことが判明する。それは阪神銀行が“みせかけ融資”で、20億円を実際に融資しなかったからのことなのだが、結果、サブバンクである大同銀行がメインバンクの阪神銀行の融資を10億円をも上回るという事態に陥っていた。さらに、阪神銀行から融資を得られなかった分を、取り返すため高利の金に手を出し、相当額の負債を抱えていることも発覚する。その原因追求の矛先は、阪神特殊製鋼の経理担当常務・錢高(西村雅彦)に向けられる。 結局、すべての銀行から会社更生法の申請を検討するように告げられてその会は終わった。そして、鉄平はついに核心に触れる質問を母・寧子(原田美枝子)と大介に向ける。
華麗なる一族「第9回」(3月11日放送分) ついに、万俵鉄平(木村拓哉)と万俵大介(北大路欣也)の父子での裁判が始まった。原告席と被告席で対峙する二人にマスコミも注目した。 高炉建設に当たって80億円もの融資を行った阪神銀行が、阪神特殊製鋼を帝国製鉄に売却するために倒産に追い込むなどありえない、と主張する大介側と、20億円の融資を急遽撤回するという行為が、倒産に追い込んだまさにその証拠であると主張する鉄平。鉄平側の弁護士・倉石(萩原聖人)の質問に対し、大介はとても冷静沈着に答える。 ところが、そこへ倉石は、決定的な証拠を突きつける。阪神特殊製鋼の錢高常務(西村雅彦)が融資銀行団に提出した借入表には、追加融資20億円の返金は2月15日と記されている、ということだが、鉄平らが社内を探し回って発見したもう一つの借入表には、融資の返金が1月31日となっているというのだ。 実は、その1月31日という日付は、まだ高炉の突貫工事が決定していない日付。もしその借入表が真実の借入表だとしたら“20億円の追加融資を撤回したために、阪神特殊製鋼の高炉建設は突貫工事に突入せざるを得なくなり、その結果事故を招かせ阪神特殊製鋼を倒産に追い込む”というシナリオが完成する。
華麗なる一族「第10回」(最終回)(3月18日放送分) 阪神銀行の大介(北大路欣也)と阪神特殊製鋼の鉄平(木村拓哉)父子の裁判はいよいよ大詰め。鉄平側の唯一の切り札、銭高常務が証言台に立つために裁判所に現れた。 彼は、借入表を大介に改ざんするよう命じられたことを明らかにする。形勢が不利になってきた大介に大同銀行の綿貫専務(笑福亭鶴瓶)も合併話は夢物語なので勝負から降りると宣言するが、大介はまだ打つ手はある、と強いまなざしで綿貫を引き止める。 その打つ手とは意外なものであった。その手の内が鉄平の元へ届くまでそう日にちはかからなかった。高炉計画の再開プランを一之瀬工場長(平泉成)と考える鉄平の所へ四々彦(成宮寛貴)が血相を変えて飛んできた。何と阪神特殊製鋼の会社更生法が適用され、その破産管財人に帝国製鉄の和島所長(矢島健一)が任ぜられることになったというのだ。 和島は提訴を取り下げる形で裁判を収束させてしまう。役員を解任された鉄平に裁判を起こす権利はない。提訴を取り下げたため阪神特殊製鋼が非を認めたことになり、大蔵大臣の永田(津川雅彦)も阪神銀行を擁護する。夢半ばでついえた鉄平は、ある決意を胸に阪神特殊製鋼を後にする。