映画『さくらん』は吉原の遊郭に売られてきた少女、きよ葉がやがて花魁(おいらん)へと成長していきながらも、自分の生きる道を見つけ出していく、安野モヨコの原作コミックを映像化したエンタータエインメント大作。何よりも女性の心をとらえて離さないのはその独特の映像美。
世界的フォトグラファーの蜷川実花が監督を務めるだけあり、一コマ一コマが完成度の高い絵として色彩あでやかに観る者の感性に訴えかけてくる。伝統的な日本美とモダンが見ごとに融合したそのビジュアルに、遊女、きよ葉のキャラクター、土屋アンナがまさにハマっている。 日本美プラスモダンの美しいビジュアルの中で展開される世界だが、描いているのはどろどろの遊女たちの世界。そのドロくささを演出するのは、全編に使われている椎名林檎の楽曲だ。遊女たちの切ない心の痛みや刹那(せつな)的な悲しみなどがせつせつとつづられている。