AT&Tウィリアムズが、2007年のF1世界選手権に参戦する新車、ウィリアムズ・トヨタ『FW29』をオックスフォード近郊のチーム本部で発表した。ウィリアムズは、この日、スポンサーに中国のコンピューター企業「レノボ」が加わったことも明らかにした。さらに、チームの30年に及ぶ歴史に基づく“W”ブランドの図案を復活させた新しい企業アイデンティティーもお披露目された。
チーム代表のフランク・ウィリアムズ氏は、プレスリリースを通じ「2006年は我々にとってあまりいい年でなかったことは明らかだが、ウィリアムズの全員が冬の間に立て直し、さらなる努力をしてきたことを嬉しく思う。厳しい状況の中で、いかにして働いてきたかということだ。我々は新パートナーのAT&T、レノボを初めとするスポンサー、豊かな技術的才能、そしてもちろん、これらすべての努力と情熱を注ぎ込んだ『FW29』による全く新しいブランド・アイデンティティーを携えて、新しい年をスタートするんだ」と展望を語っている。 トヨタエンジン搭載の新車を開発したテクニカル・ディレクターのサム・マイケル氏は「『FW29』は、(2006年型の)『FW28』の設計思想を受け継ぎ、ゼロキール(ロアーフロントサスペンションをノーズに直接取り付け、ノーズ下面の気流を整える形状)を採用した。 注目すべきデザイン上の要素は、 (ルーバー状の上部排熱孔を持つ)サイドポッド先端の切り込みに新たに設けたステップ 2006年に生じた信頼性の問題に焦点を絞って改良されたエンジンと排気のパッケージ 空力効果を改善するためにより低く狭くなったマシン上部 その他の重要な『FW28』からの変更点は、特にシーズン序盤の3レース(オーストラリア、マレーシア、バーレーン)のため設けた排熱用大型チムニーとより細くなったエンジンカバーの尾根部分である。 マシン後部では、2本構造の支柱がリアウイングの空気抵抗軽減を助ける働きを担っている。FIAが義務づけているゆがみ防止機構、後部の衝撃吸収構造も備えている」と説明。『FW29』はすでにFIAが義務づけた静的、動的すべてのテストをパスしている。 ドライバーはニコ・ロズベルク(21歳:ドイツ)とアレキサンダー・ブルツ(32歳:オーストリア)のラインナップ。 F1参戦2年目のシーズンを迎えるN.ロズベルクは「去年の経験は、今シーズンの僕にとって力になることは確かだろう。F1の世界は独特で、僕は今、その様々な事柄をどう対処していくか学んでいるところだ。過去数週間、チームのみんなはとても前向きで多大なる努力をニューマシンに注ぎ込んでくれた。だから、我々の前にはより素晴らしいシーズンが待っていると楽観していいと思うよ」と明るい見通しを語った。 経験豊富なA.ブルツは、7年ぶりのF1レギュラーシート獲得に「過去数年間、F1のテストで何千キロとなく走ってきたけど、“レースをする”という本質的な部分で満足できていなかった。だから、今は開幕が待ちきれないんだ。来るべきシーズンに向けてチーム全体がやる気に満ちあふれているし、僕もAT&Tウィリアムズの一員となれたことを誇りに思う」と興奮を隠せない様子だった。 テストドライバーは、ナレイン・カーティケアンと中嶋一貴の2人。中嶋は2007年シーズンのいくつかのグランプリで、金曜日のフリー走行に出走する見込み。日本人初のフルタイムF1ドライバー中嶋悟氏の息子で、ウィリアムズのテストドライバーを務める中嶋一貴が、グランプリ期間中の金曜フリー走行に出走することをウィリアムズ首脳が示唆。 ウィリアムズはトヨタエンジン搭載のニューマシン『FW29』を発表。その席上でテクニカル・ディレクターのサム・マイケル氏は、 「我々はいくつかのレースでカズキ(中嶋一貴)を(金曜フリー走行で)走らせることになるだろう。彼はこれまで素晴らしい仕事をしてくれている。彼ほど働くレーシングドライバーを見つけるなんて、なかなかできないだろう。彼の首は石のように頑丈だし、これまで不平不満を言ってきたことがないんだ。まだまだ若くて、険しい坂道を登るように学んでいる途中だが、彼はこれまでまったく車を壊したことがないし、速くて、安定している。大きな感銘を受けているし、あの若さで本当に素晴らしいことだと思う」と中嶋への賛辞を連ねた。 現在22歳の中嶋はGP2シリーズへの参戦も決まっているが、F1とGP2が併催されるヨーロッパラウンドのレース以外では金曜フリー走行に出走可能な見通しである。 ウィリアムズは、2月6日にスペインのヘレス・サーキットへ2台の『FW29』を持ち込み、テストを開始する予定。