人工ダイヤなどの原料になるありふれた物質に熱を加えると効率のよい発電ができることを、名古屋大などのグループが見つけた。工場や自動車の廃熱で発電すればエネルギー損失を大幅に減らせ、地球温暖化対策にもなるという。21日付英科学誌ネイチャー・マテリアルズ電子版に発表した。
細長い物質の一方の端を温めると、もう片端との間に温度差ができる。ビスマスや鉛など重金属では、この温度差から電力が生じる。「熱電変換」という仕組みだ。人工衛星や一部の腕時計の電源に使われるが、重金属は資源量が少なく、1000度以下の熱で溶けるため、用途が限られる。 名古屋大の太田裕道・助教授らは、重金属に代えて、人工ダイヤの原料となるチタン酸ストロンチウムという酸化物を使った。これ自体は電気を通さないが、この酸化物と金属のニオブで、厚さが原子1個分と薄く、電気を通す層を作って間に挟むと、重金属の倍の効率で熱電変換が起きるのを見つけた。効率がいいのは、電気が極薄の層から外に漏れないためらしい。極薄の層の数を増やすと、さらに効率が上がるのもわかった。 2000度でも溶けず、自動車のエンジンや工場から出る700度以上の廃熱を利用して発電できる。発電効率がよいため、体温で充電する携帯電話などへの応用もできそうだ。熱電変換と逆に、電気を通すと冷える性質もあり、携帯型の冷蔵庫などへの応用も期待できる。重金属のような毒性はなく、ストロンチウムの資源量はビスマスの約1000倍とされる。 極薄の層を挟む微細な加工はコンピューターの半導体素子を作る技術を活用でき、大型化のめどもつきそう。製造法の特許を出願中だ。