三菱電機 および 北海道大学 は2007年1月15日、C.H. Bennett 氏と C. Brassard 氏が1984年に提案した量子暗号プロトコル、 BB84 を使用した量子暗号システムを共同開発し、世界最長 80km の量子暗号原理検証実験に成功した。5年後に解読不可能なシステムとして実用化を目指すと発表した。
現在の暗号技術(暗号アルゴリズム)は、解読に膨大な計算量(時間)を要することを安全性の根拠にしているが、超高速処理が可能な量子コンピュータなどが出現した際には、この安全性は脅かされる。 システムは単一光子源を組み込んだ高精度な量子暗号通信装置。三菱電機は情報通信研究機構(NICT)の委託研究「量子暗号の実用化のための研究開発」の一部として、北大は科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業(CREST)「量子情報処理システムの実現を目指した新技術の創出」領域の一環として実施したもの。 一方量子暗号には盗聴を検知できる特長があり、絶対に解読されない究極の暗号として実用化が期待されている。 しかし、これまでの量子暗号通信システムのほとんどが、光源としてパルスレーザーを弱めた擬似的な単一光子源を用いているため、同一情報を運ぶ光子が同時に2個以上発生する確率を無視できず、そのうちの1個の情報が盗聴されて解読される可能性がある。 北大では、同時に2個以上の光子が発生する確率を1万分の1以下に抑えた「単一光子源」を開発、三菱電機がこの単一光子源を組み込んだ高精度な「量子暗号通信装置」を開発、「単一光子源を実装した量子暗号システム」として共同で実証実験を行い、世界最長 80km に成功した。 今後は装置の小型化と高速化に取り組み、5年後を目標に、単一光子源を用いた量子暗号装置の実用化を目指す。