スノーボードというスポーツの歴史は、まだ誕生から25年しか経っていない。四半世紀をようやく過ぎたこの競技は、いまや冬のオリンピックの花形にまで到達した。スノーボードの歴史は、ようやく四半世紀を過ぎたばかり。映画「ファースト・ディセント」では、文化にも影響を与え続けるスノーボードの歴史についても語られている。
華やかなトリック、個性的なボードやウェアー、若者を魅了して止まないこのスポーツにも先駆者がいる。彼らを中心にこの映画のために、オリンピックやX-TRAILという競技で世界を制した素晴らしい選手たちをいざない、アラスカの大地に広がる誰も滑ったことがない斜面に挑むプロジェクトが進められた。 誰もがいつかは挑戦してみたいスノーボーダーの聖地ともいえるアラスカ。その手つかずの山々に、新旧を代表する5人のスノーボーダーたちが集結。ヘリで山頂まで飛び、前人未踏の“ファースト・ディセント”(=人が初めて滑る斜面)を征服することが目的だ。後戻りはできない。選ばれた人間のみが踏み入ることのできる領域、恐怖に打ち勝ったものだけが味わう恍惚感、一瞬たりとも気の抜けない大自然との対話…。 これは目で観るのではなく体感する映画だ。 映画の中で、2006年トリノオリンピック・男子ハーフパイプで圧倒的な力を見せ付けて優勝したショーン・ホワイトをしてもビギナーにしてしまう大自然を前に「アラスカじゃまぐれは通用しない」と強く感じた冒険の一端を伺った。 若干19歳でエクストリームスポーツの最高峰Xゲームの全種目を制覇し、世界の頂点に上り詰めたショーン・ホワイト。次なる最大の目標となったトリノ五輪(金メダル獲得)を目前に、本作で初めてのビッグマウンテンに挑んだ彼は、競技とは違う脅威的な自然の力に圧倒される。頂点を究めてきたプライドをズタズタにされながらも果敢に挑戦する彼の姿は、観る者を感動へと導く。 劇中でもインタビューに答えているジェイク・バートンはトム・シムズ、チャック・バーフットとともにスノーボードのスタイルを作り出したパイオニアの1人だ。まだ「スノーボード」という概念がないなかで、60年代の子供の遊び道具「スナーファー」に未知の可能性を見出し、1977年にBurton Snowboardsを設立。 そこからスノーボードを代表するブランドとなったBurtonの歴史が始まった。常に新たなスタイルを提案し続けるBurtonは、USオープンの開催、オリンピックへの協力と業界を常にリードし続けている。 映画の中では日本での特殊なスノーボード人気についても触れられていたが、ニック氏はこれに肯定的だった。「僕らのときには、見習うべき先駆者がいませんでした。それに、アメリカではスノーボードをやらない人は、今でも本当にスノーボードについて知りません。でも、日本ではやらない人でもみんな応援してくれる。テレビでX-TRAILを見て、電光掲示板に選手の名前が表示されて、4万人の観衆に囲まれているのを見る。それが目標になって、スノーボードの選手に憧れてくれる。いまや選手もショーンやハンナみたいにいい子が揃っている。僕らの時には『ああなりたい』なんて誰も憧れてくれませんでした(笑)。陽が当たらないところに当たることでまた新たな文化が生まれることは素晴らしいと思います。」 ■『ファースト・ディセント』公式サイト