イタリア・ルネサンス期の巨匠レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452〜1519)の傑作「受胎告知」が来春、日本で初公開されることが決まった。「イタリアの春2007」のメーンイベントとして3月20日から東京国立博物館で開かれる特別展「レオナルド・ダ・ヴィンチ――天才の実像」で展示される。マリオ・ボーバ駐日イタリア大使が発表した。
「受胎告知」は世界に十数点しか現存しないダ・ヴィンチの絵画のうち、最も早く制作された記念碑的作品。幅217センチあり、完成品としては「最後の晩餐(ばんさん)」に次ぐ大作だ。約140年前、フィレンツェのウフィツィ美術館に収められて以来、一度も館外に貸し出されたことはなかった。 この作品の主題『受胎告知』は中世〜ゴシック期より最も多く描かれてきた主題のひとつで、大天使ガブリエルがキリストの受胎をマリアに聖告する場面が描かれる。 祝福のポーズと共にマリアへキリストの受胎を告げる、神の使者大天使ガブリエル。卓越した表情の描写や画面の構成力、背景の遠近法など、ヴェロッキオの工房時代に描かれた作品とはいえ、画面からは画家の豊かな才能が随所に垣間見れる。 ダ・ヴィンチ単独の制作による最も初期の作品『受胎告知』。フィレンツェ郊外のサン・パルトロメオ・ディ・モンテオリヴェート聖堂が旧蔵していた本作は、画家の師であった彫刻家ヴェロッキオの工房時代に描かれたとされ、記録等は残っていないが、異論なく真筆であると認められている。 「受胎告知」を守るのは「無反射ガラス」映り込みも防ぐ 日本で公開が始まったダヴィンチの至宝「受胎告知」を守るのは、舶来カメラ好きなら知っているドイツメーカー製の「無反射ガラス」。快適に鑑賞できて美術品にも優しいのは“見えない”テクノロジーだ。 東京・上野の東京国立博物館本館の特別5室。昭和40年にツタンカーメン、49年にレオナルド・ダ・ヴィンチ「モナリザ」、平成11年にドラクロワ「民衆を導く自由の女神」と、世界の至宝が飾られるたび、一目見ようと長い長い列ができた。
そして今、ここに展示されているのが、ダ・ヴィンチの名作「受胎告知」だ。大天使ガブリエルが聖母マリアにイエス・キリストを宿したと伝える、奇跡の場面。フィレンツェ・ウフィツィ美術館が誇るこの名画を日本へ貸し出すにあたり、イタリア国内で反対署名運動もあったと報道されている。ものものしい金属探知機と荷物チェックを経て、ようやくご対面。 貴重な美術品を守るためにショーケースは必要なものだが、鑑賞者にとっては邪魔な存在だ。光が反射して作品がよく見えない、ガラスに自分の顔が映り込んで興ざめ、なんてことも以前はよくあった。
東京国立博物館によると、最近は既存のショーケースに特殊なフィルムを貼って光の反射を抑えるなど、鑑賞を妨げない工夫をしているという。しかし、今回の「受胎告知」は、ガラスが存在することさえ、ほとんど感じさせない。このショーケースは、ドイツ・ショット社の「無反射ガラス」を使って、ドイツのグラスバウ・ハーン社が作った。
「無反射ガラス」とは何か。「通常のガラスの反射率は8〜9%なのですが、特別なコーティングを施すことで1%台に低減させ、高い透過率を保ちます」とショット日本(東京都新宿区)の酒井茂さん。つまりガラスの表面をコートした製品で、紫外線も防ぐという。普通のガラスより数倍高価だが、今では「見通しの良さが高級感を演出する」というわけで、高級外車のショールームや高級宝飾店などに導入されているそうだ。
【低反射ガラス】 一般の板ガラスに薄膜コーティングすることで、反射率を低減したもの。独ショット社の「無反射ガラス」の場合、シリコンオキサイドなどにガラスを浸すことで両面を3重構造にコーティング。20年ほど前から販売しているが、特にコーティング部分が劣化する心配はないという。最近はビルの壁面やショールーム、大型ディスプレーウインドー、シネマコンプレックスの映写室などで使用されているという。