がん細胞が、正常な細胞の防御システムに“便乗”して転移することを、東京女子医大の丸義朗教授(薬理学)らの研究チームが突き止めた。がんの転移を予防する薬の開発につながる研究成果として、注目される。27日付の英医学誌電子版に発表する。 丸教授らは、肺に転移しやすいマウスのがん細胞を皮下に移植し、肺の正常細胞で何が起きているか詳細に調べた。すると、肺の血管内皮細胞が、外敵を退治する免疫細胞を呼び寄せる、2種類のたんぱく質を作り始めた。
血管内に漂うがん細胞を増やすため、新たにがん細胞を注射すると、肺には免疫細胞だけでなく、がん細胞までもが血流に乗って引き寄せられ、わずか5時間で肺細胞に定着。転移したことを確認した。 一方で、このたんぱく質の働きを抑える物質をマウスに注射すると、転移するがんの大きさが10分の1に小さくなった。 がん細胞は、栄養を運ぶ新たな血管を成長させる物質などを出す。このたんぱく質が血流に乗って、離れた肺の血管細胞を刺激し、免疫細胞とがん細胞を呼び寄せたと見られる。 丸教授は「転移はがん細胞と転移する先の正常細胞が協調して起こるようだ。この協調する回路を止めてしまえば、転移を抑える治療が可能になるかもしれない」と話している。