第1次南極観測隊の出発から50年になる日本の観測史で、三大発見の一つと言われるのがオゾンホールだ。それが今年、過去最大となった。南極上空でオゾンが壊れる仕組みはまだ謎が多く、北半球でも近年破壊が進んでいる。28日出発の48次隊は、世界初の手法で解明に挑む。
太陽からの有害な紫外線を吸収してくれるオゾンは上空20〜30キロのオゾン層に多くある。日本の観測隊は82年、南極上空でオゾンが春に急激に減っていることを世界で初めてとらえた。 穴が開いたようにオゾン層が薄くなるのが「オゾンホール」。今年南極上空に現れたものは、南極大陸の倍以上の面積で過去最大となった。 南極では、冬に上空が零下80度近くまで冷えて、「極成層圏雲(PSC)」ができる。そこにたまったフロンは春、太陽光線にあたって分解され、塩素が発生。これがオゾンを壊す。 南極ほど寒くならない北極ではPSCができにくく、オゾンホールも現れないと思われていた。だが、96年以降、オゾンホールに近い「ミニホール」が現れている。北半球でもオゾン破壊は深刻になってきた。 フロンの排出を規制しても、オゾン破壊は止まる気配がまだ見えない。そこで、48次隊は最新の赤外分光器でPSCを狙い、大気成分を測ってオゾン破壊のメカニズムを探る。世界初の観測だ。 オゾン破壊が進む8〜10月には、ドイツなど約10カ国と協力し、日本は南極上空で50個の気球を上げる。上空は時計回りに風が流れるため、各基地は同じ大気が流れて来るころを見計らって気球を順番に打ち上げ、リレー方式に観測をつなぐ。