いよいよ10月16日から一部ネット通販での予約が始まった、ソニー・コンピュータエンタテインメント(以下、SCEI)の「PLAYSTATION 3」(以下、PS3)。その性能の高さで他機種を圧倒し、さらに東京ゲームショウ2006でのエントリモデル値下げと全モデルのHDMI端子付属発表で一気に注目を集めた。
一方ネット界隈では、SCEIの二転三転する発表、小出しにされる情報やローンチタイトルの不足などが不評を呼んでおり、いい意味でも悪い意味でも「問題児」である。「フルハイビジョン対応」「高性能なCellプロセッサ搭載」など、多くの話題のPS3だが。。。 HDD標準搭載で事実上ネットワーク接続は必須? 今回発売されるのは廉価なエントリモデルと、それより1万円ほど高いハイスペックモデルの2タイプ。そのいずれにもハードディスクが搭載される(20Gバイトと60Gバイト)。このハードディスクは、主にネットワーク経由でコンテンツやプログラム改善パッチをダウンロードし、保存する用途に使われる。 元々SCEIは、PlayStation 2(以下、PS2)の時代に「e-Distribution」という構想を提唱していた。PS2にハードディスクとイーサネット端子をつけ、ネットワークを介してゲームや動画をはじめとしたさまざまなコンテンツを提供するという試みだ。ただ、これはPS2の姉妹機であるハードディスク搭載DVDレコーダー「PSX」で対応できなかったこと、外付けハードディスクが発売当初ネット専売だったことなどが災いし、成功には至らなかった。今回、PS3でHDDを標準搭載してきたのは、今度こそこの構想を実現させるためだと言える。PS3を楽しむにはネットワーク接続は必須と考えてよいだろう。 見落としがちな点もあげておこう。すでに多くの家庭にブロードバンド環境があると思うが、単に「線が来ている」だけでは十分ではない。たとえばリビングにPS3を設置するのであれば、リビングまでネット接続環境を持ってこないといけないからだ。ADSLモデムやルータが置いてある部屋と、ハイビジョンテレビが設置されているリビングが離れているというケースは多いのではないだろうか。こうした状況で威力を発揮するのは無線LANだ。PS3の上位モデルには無線LANが搭載されているので、状況に応じて検討するといいだろう。 次世代ディスクはBDかHD DVDか? PS3で大きく取り上げられる特徴の1つに、Blu-rayディスクドライブの搭載がある。PS3では、ゲームソフトがBDで提供されるだけでなく、BDに収録された映画などのハイビジョンビデオコンテンツ(BD-Video)も再生可能だ。一方、Xbox 360陣営は11月22日に外付けのHD DVDドライブを発売し、HD DVD-Videoを鑑賞可能になる。ハイビジョン映像とサラウンド音声によるホームシアター体験が可能な2つの次世代ディスクだが、2つの規格に分裂して提供されることになってしまった。 といっても、今回はビデオデッキのVHS対ベータの時のようなことにはなりそうもない。多くの映像ソフトはBDとHD DVDの双方に提供される見通しである。また、既報のとおり、BD+HD DVD+DVDの3層を1枚で提供する技術や、1つのピックアップでBDとHD DVDの双方を読み出せる技術も実現しつつある。一時的には混乱する可能性はあるが、徐々にソフト、ハードともに「どちらでも再生できる」という環境に収束すると予想されるわけだ。現状では、この次世代ディスク戦争は横目に眺めておき、PS3はあくまでゲーム機としての用途を中心に考えるほうが見通しが良くなるのではないだろうか。 ゲームの供給メディアとしてBDを見た場合、気になるのはDVDの5倍強の容量を何に活かすか、という点だ。現在のゲームにおいて、最も容量を必要とするのは「プレレンダームービー」だが、PS3では、本体のグラフィック性能が飛躍的に向上したこともあり、あらかじめ他のコンピュータで計算し映像化したプレレンダームービーを使う必要もなくなっている。実際、同程度のグラフィック性能を持つとされるXbox 360では、ゲームソフトはDVDのみで提供され、別売のHD DVDドライブを使ったタイトルは登場しない見込みである。PS3のソフト開発では、この大容量を何に振り向けるかが1つの課題となるだろう。