世界中の時計が示す1秒を決める「標準器」について、東京大学で開発中の光格子時計が次世代候補に浮上した。10日からフランスで開かれる国際度量衡委員会で正式候補として承認される。
光格子時計のデータは原理的には、100億年に1秒以下の誤差しか出ない。標準時の基になる次の標準器が最終的に決まるのは10年以上先だが、五つの候補の中では最高性能になる可能性があり、採用の期待が高まっている。
光格子時計は東大大学院工学系研究科の香取秀俊・助教授が2001年に発表した。何本ものレーザーを格子状に交差させて、その間にストロンチウム原子1万個を固定する。この原子が吸収・放射する光の周波数を基に1秒を決める。 周波数を測定する時の誤差がごくわずかあるため、原子の数を増やして精密にするほど時間が正確になる。候補に挙がる水銀やイッテルビウムを使った欧米発の次世代時計では、原子が1個だが、光格子時計は最終的に原子100万個の活用を目指す。 正確さに注目した米、仏の研究所が光格子時計の手法で良好なデータを出したため、発表から5年で候補に浮上した。産業技術総合研究所計測標準研究部門の大嶋新一・主幹研究員は「将来性のある技術で、海外での研究も加速しており、有力な次世代候補になりうる」と話している。