クジラやイルカはかつて陸上生活をしていたとされ、第4のひれは「後ろ脚」が退化した痕跡ではないかという。和歌山県太地町立くじらの博物館は4日、胸びれ、背びれ、尾びれとは別に生殖器の脇に第4のひれを持つイルカを捕獲した。と発表した。 イルカのひれは通常3種類しかなく、日本鯨類研究所の大隅清治顧問は「第4のひれを持つ鯨類が見つかったのは世界初」としている。見つかったのはこの1頭だけで、「突然変異で『先祖返り』したのではないか」と話している。
このイルカは体長2.72メートルのバンドウイルカ(推定オス、同5歳)。太地いさな組合が10月28日、同町沖約12キロの熊野灘で発見し、捕獲したバンドウイルカ118頭の中から見つかった。 「第4のひれ」は、生殖器の両脇に人間の手のひらぐらいの大きさ(長さ約15センチ)で左右に一対ある。大隅氏が観察したところ、水中でも水平のままであまり動かなかった。 大隅氏によると、クジラやイルカは、受精後間もない時期に前後4本の脚を持つが、成長とともに前脚は胸びれになり、後ろ脚はなくなる。これまでも後ろ脚が退化した「後肢突起」と呼ばれる部位を持つクジラやイルカは数例見つかっているが、完全なひれを持つものは今回が初めてという。 5000万〜3000万年前のクジラの祖先で、まだ脚が残っていたムカシクジラの後ろ脚部分に似ているという。大隅氏は「水生の哺乳(ほにゅう)類の進化過程を明らかに出来る可能性もある」と話す。 同館名誉館長も務める大隅氏は「外部の研究者とも協力し、国際的な研究チームを結成したい。X線による骨格撮影やDNA分析などの研究を進める一方で、最終的には繁殖を目指したい」と話している。 太地町は、同館で餌付けし、将来は一般公開を目指すという。